リリィとカール!☆2
朝のトレーニングを終えてから、咲良たちはリリィとカールの魔物狩りに出発した。
付き添いは咲良、ジャック、ロンドの3人。
狩場は、学校の生徒たちが課外授業でも行く、街の近くでFランクの魔物ばかりが住む浅い森だ。
先頭がジャック、次にカール、リリィ、そして咲良、最後尾がロンドの隊列で森の中を進んでいた。
リリィは怖がっていたが、カールはハイテンションだった。
「どっからでもかかってこいや~!どうした魔物ども~」
「うるさいわよカール、魔物が怒るでしょ、静かにしなさい」
騒ぐカールに魔物に遭遇したくないリリィが怒る。
咲良はレベル1の二人には、まずスライムと戦ってもらうつもりだった。
朝練の時にスライムの特徴や行動、それと戦い方を二人に教えていたのだが、リリィは真剣に聞いてくれるのだが、カールは人の話しを聞かなかった。
そのカールがジャックの話しだけは素直に聞いてくれる事が分かってからは、教えるのは全てジャックに任せている。
そして現在ジャックを先頭に、スライムがいる場所に向かっていた。
「そこを右に進みましょう」
咲良が進む方向を指示し、ジャックは手を軽く振ってそれに応える。
少し広くなった場所着くと、隅っこにスライムが1体いた。
「じゃあカール、リリィ、僕が戦い方を見せるからよく見ててね」
「はいっジャックの兄貴!」
「………はい」
カールはやる気満々だが、リリィはやはり魔物が怖いようだった。
ジャックはしっかりと構えて少しずつスライムに近づいた。
スライムはジャックを警戒した。
ジャックが更に一歩近づくと、スライムは酸を跳ばしてきた。
モグモグ、ペッ!
ジャックは1歩横に動いて躱した。
スライムが連続で酸を跳ばしてくるが、ジャックはカールとリリィに見せるように確実に躱していた。
モグモグ~ペッ!
ムニゥ~ポョ~ン!
すると今度は酸攻撃のすぐ後に体当たりをしてきた。
ジャックはこれも1歩横に動いて確実に躱しながら剣で斬りつけた。
ザシュッ!
斬りつけられて動きが鈍っているスライムに、1歩踏み込んで核をひと突き。
プスッ! パキッ!
スライムは小さな魔石を残して、水の様に地面に染みこんでいった。
「スライムはこんな感じかな、どうだい?教えたとおりスライムの攻撃は2種類、どちらも直線的だから横に躱せば避けられる」
「流石ジャックの兄貴、格好良かったです!」
「えっと、なんか簡単に避けて倒してたから、そんなに怖くなかったかな」
カールもリリィも、少し緊張がとれたようだ。
「うん、硬くならずに動ければ必ず出来るから大丈夫だよ」
咲良の指示どおりに少し場所を移動すると、また1体のスライムと遭遇する。
「よし、リリィ、カール、回避優先でリラックスだよ。スライムをよく見てね」
「「はいっ!」」
二人は剣を構えながら、スライムを挟み込むように近づいていく。
スライムはカールに酸攻撃をしてきた。
まだ腰が引けていたカールは、慌てて躱そうとするが動きがぎこちなくて左肘に当たってしまう。
スライムは続けて体当たりをしてきた。
カールは必死に横に転がって避けた。
カールの危機に、リリィは怖さを忘れてスライムに向かっていく。
背を向けているスライムにリリィは斬りつけた。
スライムは怒ってリリィの方を向くと、リリィは警戒して数歩下がった。
「カール立って!」
「ああ、わかってる」
カールは立ち上がった。
スライムはリリィに酸攻撃と体当たりをしてきた。
酸攻撃はなんとか避けたリリィだったが、体当たりを喰らい尻もちをついてしまう。
「きゃっ!」
「リリィっ!」
「カール!スライムに集中して!」
「おっ、おう!」
リリィはスライムから目を離さず、急いで立ち上がろうとする。
「痛っ!」
リリィは足首を痛めていた。
「リリィ大丈夫?」
「もうっ!スライムの背後なんだから攻撃してよっ!」
「あっ!」
スライムは立ち上がりかけたリリィにまた体当たりにいった。
「きゃ~えぃっ!」
スパッ!
リリィは横に倒れ込んで避けながらもショートソードで攻撃した。
斬られたスライムの動きが鈍った。
「カール!しっかりしてっ!」
リリィの事ばかり心配してなんの役にも立ってないカールは、自分のせいでリリィが怪我をした責任を感じていた。
カールはリリィの為に意を決してスライムに向かっていった。
「こんにゃろ~~っ!」
シュパッ!
カールの剣は少しだけスライムに傷をつけるが、構わずスライムはリリィに体当たりに行った。
「!!」
リリィは歯を食いしばってスライムに剣を向けた。
プスッ! パキッ!
リリィの剣が体当たりしてきたスライムの核を砕き、スライムは破裂して水となって地面に染みこんでいった。
二人を見守っていた咲良たちは、カールの不甲斐なさにハラハラしながらも手を出すのを我慢していた。
しょんぼりとした表情でリリィに歩み寄るカール。
「ごっ、ごめんリリィ………大丈夫?」
「これくらい大丈夫よっ………痛っ」
リリィは立ち上がろうとするが、痛みで座り込んでしまった。
ジャックが二人に歩み寄った。
「カール、もっと落ち着いて周りの状況を観て戦うように心がけた方がいいね。そうすれば自分の出来ること、やるべきことが見えてくると思うよ」
「…………はい」
咲良がリリィの側にしゃがみ込む。
「リリィ、痛めたのはここかしら?」
「はい………すいません」
咲良が傷めた箇所に、用意していたポーションを振りかけた。
「えっ、もしかしてポーションですか?そんな高価な物をもったいないです!ちょっと痛いだけですから放っておけば治ります」
「安静にしていれば数日で治るかもしれないけど、ここは森の中。回復薬で治るなら使った方がいいのよ。ケチったりしたら命に係わるわ」
「………ありがとうございます」
「いいのよ」
(中身はただの水だしね)
咲良はポーションのビンに水を入れて持ってきたのだ。
その水をかけながら無詠唱『ヒール』でリリィの怪我を治した。
「リリィの今の戦いはとっても良かったわ。怖いスライムに向かって行ってたものね。カールがもっとしっかりしていたら良かったんだけどね」
「…………カールは昔からいざという時に頼りにならなくて」
「そう?でも最後に頑張ってスライムに向かっていったじゃない」
「あれじゃあ、いなくても同じです……」
(カールもリリィもお互いの為に頑張るのか)
「そう、でもカールはこれからもっと頑張るんじゃないかな」
「そうだといいんですけど……」
その後、スライムをもう1体、ギリギリで倒すと二人ともかなり疲弊していた。
2体目のスライムにトドメを刺したのは勿論リリィで、カールのいざという時に頼りにならないっぷりはやっぱり変わらなかった。
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m(_ _)m
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