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リリィとカール!☆1


 北広場、南広場、学校で開催した神楽は大成功だった。


 姉が見つかっていないので咲良にとって成功なのか分からないが、大勢の人たちに喜んでもらえたのだから成功なのだろう。


 広場では数々の屋台が出ていたのだが、咲良の串焼き屋台にばかり客の行列ができていた。

 咲良は地元の屋台の店主たちに申し訳なく感じていたが、その屋台の店主たちも咲良の屋台に並んでいたので、気にする必要は無さそうだった。


 屋台で働くリリィとカールは大忙しだった。

 始めは慣れなかったリリィだが、徐々に慣れていきいきとこなすようになっていた。

 流石リリィ。

 今後、管理棟内で串焼きのお店を出すとしてもリリィに任せれば安心だった。


 串焼き屋台の営業が進むにつれ明るくいきいきと働くリリィのファンが増えていき、リリィを通してしか注文しない客が増えてきた。

 カールはふてくされ、接客をやめて串焼きの焼き方を教わっていた。


 学校の公演では先生や生徒たちから、神楽を見ると頭と身体がスッキリした感じがして勉強に集中出来そうだと喜ばれた。


 あっという間に小花咲良の名は街中に広まり、モンテラーゴで小花咲良の名が一番有名になっていた。

 姉がモンテラーゴに居ればもう訪ねてきてる筈だと考えた咲良は、この街での姉探しを終わりにした。




  *  *  *  *  *



 ロンドがリリィとカールの先生になってからは、毎日勉強と剣術の鍛錬に励んでいた。


 咲良が牢獄に捕らえられていた間も鍛錬を頑張っていたカールは、態度が別人になっていた。


 釈放されてから孤児院を訪れた咲良は、カールの変わりように驚いた。


「ようさくら!散々だったな。つぎになんかあればオレが守ってやるから、こまったことがあれば言えよな」


「えっカール?…………うん、ありがとう」


 かなりビッグな態度になっていた。

 カールはロンドにもビッグな態度を取っていた。


「おっここにいたかカール、剣術の練習を始める時間じゃ、もうリリィは始めておったぞ」


「おう、じーさんか、すぐ行くから先に行って待ってな」


 先生のロンドをじーさん呼ばわりとは、カールも偉くなったものだ。


「あっジャックの兄貴!おつとめごくろうさまでした!」


 まるで刑務所を出て来た親分を迎えるようにカールに頭を下げられて戸惑うジャック。


「兄貴?ああ………」


 カールのビッグな態度もジャックにだけは違っていた。

 ジャックは自分に逆らう衛兵5人をボコボコにして牢獄に入れられたが、なんのお咎めもなく釈放されたのだ。

 カールの中でジャックはこの街最強になっていたのだ。



 ロンドに頼まれたジャックは、リリィとカールに稽古をつけることになった。


 カールが真っ直ぐ打ち込んでくるのを、ジャックは難なく捌いていた。


「カールの剣筋は素直だね、少しフェイントを入れるといいと思うよ」


「はい!分かりました兄貴!」


「うん………じゃあ次はリリィ、打ち込んできて」


「はい!」


 リリィは木の剣を両手でしっかり握って、躊躇いながらも打ち込んでいた。


「もしかしてリリィは剣が恐いのかな?」


「えっ?ええ、怪我しちゃったら痛いし……」


「そっか、リリィはまず剣に馴れるところからだね。剣は身を守る事もできるからお守りだと思ってがんばって。カールは度胸があるね、本物の片手剣はもっと重いからもう少し筋力をつけた方がいいと思う」


「はい!ジャックの兄貴!あざ~した!」


「ジャックさんありがとうございました」


 咲良は二人に毎朝の筋トレと本物の剣を使っての素振りを提案した。


「え~~っ!朝早くおきるのやだし、弱いさくらの言うことなんかだれが聞くかよ~」


 カールは9才で咲良は10才、同じような年頃だし、身長はカールの方が少し高い。カールは自分より弱く見える咲良の言うことなど聞かなかった。


「じゃあ、手合わせして咲良が勝ったら言うことを聞いてくれる?負けたら咲良も何か言うことを聞くわ」


「え~っ、ぜったいオレがかつにきまってるけど、まぁさくらからいいだしたことだしケガしても泣くなよな。よしけっとうだ!はやくやろう!」


 咲良が相手なら楽勝だと思ったカールはすぐにOKした。


 そして咲良とカールが手合せしたのだが、咲良がカールの剣を捌いて防御しているだけでカールはヘトヘトになってしまった。


「どうする、まだ続ける?」


 ロンドもリリィも咲良の腕前に驚いていた。

 息を切らして、地面に大の字に寝転がっているカール。


「はあ、はあ、おれはさくらのために休んでるだけだ。まけてねえからな。さくらがもうやめたいのならひきわけって事にしといてやるよ。はぁ、はぁ、」


 咲良は息一つ乱れておらず、寝転がるカールに微笑んでいた。


「ありがとう、引き分けだね。でも朝の筋トレと剣の素振りはやってくれる?」


「はぁ、はぁ、しょうがねえなあ。ありがたくおもえよ」


「うん、ありがとう」


 咲良は、カールを子供だなぁと微笑ましく眺めていた。




  *  *  *  *  *




 次の日の朝。


 咲良はリリィとカールと一緒に朝の筋トレをやっていた。


 腕立て伏せや腹筋・背筋、リリィは10回でも辛そうにしていた。

 カールはリリィよりは続いたが、すぐに弱音を吐いていた。

 咲良はミーナの店で購入した片手剣とショートソードを、朝練の途中で二人にプレゼントした。


 カールはかなり嬉しそうに受け取り、リリィは高価なプレゼントに戸惑っていた。


「こう見えて咲良はお金持ってるし二人の為だもの。遠慮しなくて大丈夫よリリィ」


 剣を貰って喜んでいたカールは全く気にしていなかった。


「遠慮?もう俺んだぞ!返さねえから……」


 ぱっか~~ん!


 リリィがカールの頭を叩いた音が響いた。


「いってぇ~なにすん……」


 カールの頭を掴んで一緒に頭を下げるリリィ。


「カールが失礼なこと言ってすいません。剣、ありがたく使わせて頂きます」


「うん、無理しないで頑張ってね」


 咲良は9才とは思えないしっかり者のリリィに感心しながらも、カールへの不安は増すばかりだった。


 カールは貰った剣が嬉しいのか、すぐに素振りを始めていた。


 朝練が終わってみんなで朝食に串焼きを食べている時に、咲良はロンドから相談を受けた。

 少しだけ魔物狩りの引率者としてつき合って欲しいとの事だった。

 現役時代ロンドはBランクだったが、戦闘は苦手だったし鍛冶の為にレベルを上げたに過ぎないのだ。

 Dランクくらいの魔物に負けることはないが、子供を守りながらだと不安なようだった。


「勿論いいわよじぃじ、元々咲良がお願いしたことでもあるしね」


「それはありがたい、レベルが1つでも上がるとだいぶ違うからの。現役のジャック君がいてくれると安心じゃな、さくらちゃんの剣の腕前もたいしたものじゃったしの」


「ははっ、咲良はFランクだもの大したことないわよ。さっそく明日からレベル上げ頑張りましょうね」



 


 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆



 読んで頂き有難う御座います。

             m(_ _)m


 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆




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