それぞれの可愛い思惑!
ジャックと応接室に来た咲良は、ニコルのお陰で一緒に釈放された。
応接室のテーブルで紅茶とお菓子をいただきながら、咲良、ジャック、ニコル、ベアトリーチェの4人が話しをしていた。
領主代理のシスコンガーリックは、ニコルと一緒にお茶するとだだをこねたが、ニコルに追い出されていた。
咲良とジャックは改めてお礼を伝えた。
「ニコルさんベアトリーチェさん、助けてくれてどうもありがとう」
「ニコル様ベアトリーチェ様、ありがとうございました」
「うちのバカ兄が変な言いがかりつけて嫌な思いさせてゴメンね。当分お仕置きとして口聞いてやらないんだから!それとねジャック、私はベアトリーチェに頼まれてやっただけだからね、ベアトリーチェがいなかったら助からなかったんだからね」
ニコルはベアトリーチェの功績をより強調した。
最初、ベアトリーチェが助けたい理由がニコルには分からなかったが、助けてみるとその相手がイケメンの男の子で、はずかしがっていたのでピンときたのだ。
(がんばってベアトリーチェ)
牢獄に捕らえられてからどうすることも出来なかったジャックは、ベアトリーチェのお陰で咲良を助け出せたことをとても感謝していた。
ジャックはベアトリーチェの横にひざまずいて手を握った。
「ベアトリーチェ様、Cランク昇格試験に続き今回も本当にありがとうございました」
「………んっ……」
ベアトリーチェは顔を真っ赤にして俯くだけだった。
(チャンスじゃね?ほれっほれっ!)
ニコルはベアトリーチェを肘でツンツン突っつくが、ベアトリーチェは真っ赤になって俯いているだけだが、とても幸せそうだった。
咲良は神楽公演の事や、この街に来てからの出来事をニコルに話した。
「そう、色々と大変だったのね。私は見たことなかったけど神楽ってボスコでも話題になってたわよ。小花咲良ってアリーチェちゃんだったのね。神楽公演の事は兄に邪魔はさせないから好きにやっていいわよ。セノフォンテ国境都市でもやりたいなら父に言っておくわよ」
「今のところは大丈夫、ありがとうニコルさん」
「ギルドを通せば連絡がつくと思うから、いつでも連絡してね協力するから」
「うん、あとベアトリーチェさん、お礼といってはなんだけど、これ受け取って」
そう言って、きれいにたたまれた巫女装束を差し出した。
咲良は『テレポート』でボスコに行ったときにクローゼットの中から幾つかのサイズの巫女装束をアイテムボックスに移してあったのだ。
俯いていたベアトリーチェは差し出された巫女装束を見て、表情を輝かせた。
「わぁ~、いいの?」
「勿論よ。助かったのはベアトリーチェさんのお陰ですもの」
ベアトリーチェは、巫女装束を自分にあてたりしてとても嬉しそうだった。
横でニコルが何か言いたそうにモジモジしだした。
「とっ、ところでさくらちゃんさぁ、そのね………今ね………シド様は一緒じゃないの?」
「あっ!シドね」
咲良はニコルが大事な友だちと言ってくれている事が何故なのか納得した。
(そっか、ニコルさんはシドにご執心だったわね。えっとシドは故郷の国に帰ったって事にしてたんだっけか)
「そう、シド様よ、忙しくされているのなら別にいいのよ?ただ………ただね、さくらちゃんを牢獄から救い出したのが私だって、その、少しでも伝えてくれたらいいかなあ~なんて…………いっ忙しかったらいいのよ?」
「うん分かったわ。今は一緒じゃないけど、会ったら必ず伝えておくわ。ニコルが助けてくれなかったら無事じゃ済まなかったのよってね」
「そこまでの事はしてないけど………そぉかなあぁ、へへっ、えへへっ」
ニコルはシドがアリーチェのことを姫様と呼んでいたのを憶えていたのだ。
(シド様は姫様を救ってくれたと知ればきっと…………ムフッ、ムフフフッ)
ニコルは残念な表情をして自分の世界に浸っていた。
* * * * *
咲良は釈放されたその足で、商人ギルドのサブリナに報告に行った。
「うわぁ~~ん!さくらさ~ん!無事に釈放されて良かったです~。これで鉱山労働者の方たちに、つきまとわれたりガミガミ言われなくて済みます~、ぐすっ……」
サブリナはかなり大変だったようで、泣きながら喜んでくれた。
そして神楽公演を延期してくれていた事を知った咲良は、今度の土曜と日曜に広場、月曜に学校で行う予定で組んでもらった。
* * * * *
咲良は冒険者ギルドにも寄った。
投獄される前に、ギルド長が話し合いで交渉してくれたから穏便に済んだのだ。
結局、捕まったけど騎士団と揉めずに済んだのはギルド長のお陰だ。
* * * * *
鉱山地区管理棟にも顔を出した。
トマゾ管理長が、これまた泣きながら喜んでくれた。
鉱山労働者たちがみんな働く気にならず、休んでばかりだったらしいのだ。
咲良は迷惑かけたことを謝った。
(なんで謝らなきゃいけないんだろう……)
ついでに咲良は、孤児院の人たちで串焼きの店を管理棟内で出していいか聞いてみた。
トマゾ管理長は二つ返事でOKしてくれた。
「さくらちゃん監修の串焼き屋だろ?こっちからお願いしたかったくらいだ。場所代は無料でいいからな。よっしゃ~!みんなの働きが良くなるぜ」
トマゾ管理長はかなり喜んでいた。
* * * * *
ミーナや孤児院にも顔を見せて安心してもらった。
宿に帰って横になると、3週間と言う牢獄生活で相当疲れが溜まっていたのだろう、あっという間に寝てしまった。
* * * * *
咲良は深夜に目が覚めた。
「身体は疲れてるのに目が覚めちゃった…………あっそうか、いつもこの時間に起きてお風呂入ったり、グリーゼに会いに行ってたわ」
そこで魔法陣のことを思い出す。
(牢獄に転移魔法陣を残しておくのはマズイわよね………でも無いとグリーゼを元気にする為に会いに行けないし)
とりあえず咲良は、宿の部屋に小さな魔法陣を設置して、牢獄に『テレポート』した。
咲良の牢獄に設置してた転移魔法陣を消去して、グリーゼの部屋の隅に新たに設置した。
グリーゼは魔法の使えない牢獄内で咲良が魔法を使っている事に驚いていた。
「それはなんの魔法?」
咲良が小さめな魔法陣を設置してるのを見て不思議に思った。
「これはね、転移魔法陣よ。他の魔法陣から転移出来るのよ。よしっ!これでまた会いに来られるわね。あっこの事は秘密にしてね」
グリーゼは転移や魔法陣の事をよく知らなかったので、それよりも秘密にしてねとお願いされた事に興奮していた。
「えっ秘密?……………勿論!死んでも誰にも言わないから!………ムフフッ…………二人の秘密……二人の秘密……二人の」
グリーゼはだらしない表情になっていた。
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