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牢獄生活!☆2


 牢獄生活3日目。


 ベルナルド団長が牢獄を訪ねて来た。


「二人とも調子はどうだ?」


 ジャックが鉄格子を掴んで食ってかかる。


「牢獄に入れられてるんだから悪いに決まってるでしょ!僕はいいからさくらを出して下さい。病気になってしまいますよ!それに領主代理との話し合いはどうなってるんですか!」


 ベルナルド団長は申し訳なさそうにしていた。


「すまない。領主代理様が頑なに話しを聞いてくれなくてな」


「僕の事はいいですから、さくらの環境をもっと良くして下さい」


「そっそうだよな。女の子だもんな。それも含めてまた話しに行ってみるよ」


「またですか!昨日も話してみるって言って、結局なにもしてくれてないじゃないですか!」


「そうだったな…………本当にすまない。それとなジャック、その若さで衛兵5人を相手に中々の腕前じゃないか」


「…………衛兵の事は申し訳なかったと思ってますよ。でも殺す気できたんですよ、抵抗して当然でしょう。怪我をさせないようにするの大変だったんですからね」


 ベルナルド団長は嬉しそうな表情をしていた。


「やはり手加減していたか!衛兵たちがたいした怪我もしてなかったから、そうなんじゃないかと思っていたんだ。いや~~そうかそうか、たいしたもんだ。うちの兵士がすまなかった。ありがとな」


「………まぁ……その………」


 ジャックは騎士団長に褒められてかなり照れていた。


「どうだ、ジャックが騎士団に入ってくれるんなら、俺の権限で君を牢獄から出すことが出来るが……」


「僕はさくらを守る為にここにいます。さくらの側を離れる可能性があるのなら騎士団には入りません」


「ほう、騎士団に入りたい奴はいっぱいいるんだが即答で断るか、益々側に置きたいな。ならここに投獄されてる間だけでも騎士団の鍛錬につき合ってはどうだ。盾の使い方も学べるぞ?」


 ベルナルド団長は、ジャックの将来が楽しみでただ鍛えたくなっていた。


「信用出来ない者から学ぶ事など…………」


「いいんじゃないタッくん」


 ジャックが言い終わる前に、咲良の言葉が聞こえた。


「さくら?」


「剣術や盾術を学ぶのはタッくんの為になると思うの。咲良からもお願いするわ、タッくんに剣や盾術を教えて下さい」


 咲良は、自分もそうだがジャックのレベルばかり上がって、経験や剣術が追いついていないのを気にしていた。

 シドやジャンに教わってはいたが、足りない部分はあるだろうと感じていた。

 騎士団で教えてもらえるチャンスなんて滅多にない。

 ジャックも教わりたかったが、それよりも咲良の事を優先していたのだ。


「さくら……」


「絶対ジャックの将来のためになるから、ジャックも教わりたかったでしょ?」


「……………まぁ、さくらがそう言うのなら」


「よし決まりだ!宜しくなジャック!」


「………宜しくお願いします」


 ジャックは咲良への感謝と共に嬉しさを噛みしめていた。


「じゃあ早速今から行くか、上じゃあ鍛錬が始まってるからな」


 ベルナルド団長はそう言って牢屋の鍵を開けだした。


「えっ今から?」


「ああ、いつやるの、今でしょ!って諺があるだろ?それに無いとは思うがお前たちが明日には釈放されちまうかもしれないだろ?」


「「えっ、明日には出られるの?」」


 二人の声が揃った。


「ああそっか、お前たちは知らないのか。館の前じゃさくらを開放しろって大勢の鉱山労働者が抗議の為に集まってるんだよ。鉱山地区管理長から鉱山の作業が何も進まないと知らせがあってガーリック様も頭を悩ませているんだ。この街にとって鉱山地区は1番大事だからな」


 咲良が呟く。


「鉱山のみんなが咲良を…………」


「だったら僕たちを出してくれたらいいのに」


「そこは領主代理の意地だろうな。自分に逆らった者を簡単に許す訳にはいかないだろうから。集まってる奴らを排除しろって命令が出るかもしれん、少しくらいなら逆らう奴を殺しても構わんってな」


「そんな……咲良の為にみんなが……」


「まあどうなるかは分からんがな」


 咲良は思い詰めた様子でベルナルド団長に話しかけた。


「咲良が…………咲良がみんなを説得するから、少しの間だけでもここから出して貰える様にお願い出来ますか?」


 悲しそうな表情だった。


「みんなを説得?…………領主代理様に話してみよう」




  *  *  *  *  *




 ベルナルド団長は、すぐに領主代理の所へ話しをしに行った。


 ベルナルドが咲良の説得の申し出を伝えると。


「ふんっ、もうすでに鉱山地区の民衆を惑わせていたとはな、説得とかこつけてそのまま民衆を暴れさせるつもりだろう。早いとこ死刑にしておけばよかったな…………そうか今から死刑にするか」


「お言葉ですがガーリック様、まださくらが生きている事はみんな知っているようです。今から死刑にしますと取り返しがつかなくなるかと」


「ちぃ、ガキのくせに侮れんな。良しいいだろう。但し手枷足枷を付けたうえで、いつでも剣を構えておけ。民衆が騒いだらいつでも殺せ」


「しかし、ガーリック様」


「もう話しは終わりだ、ベルナルド下がれ」


「…………はい」





  *  *  *  *  *




 その後、ベルナルド団長は牢獄に戻り咲良に事情を話し、手枷足枷を取り付けた咲良を鉱山労働者たちの前に連れて行った。


 手枷足枷を付けられて剣を突きつけられた咲良が姿を現すと、鉱山労働者たちは静まりかえった。

 しかしすぐに怒声が響き渡った。


「てめぇなにしてんだ!」

「恥ずかしくねえのか!」

「さくらちゃんを離せ!」

「ふざけんじゃねえぞ!」


 咲良がみんなに語りかけた。


「みんな!咲良の為にありがとう。きっとすぐに出られると思うから大丈夫。このままだとみんなが無事じゃ済まなくなるかもしれないの、それは咲良も悲しいから無茶はしないで欲しいの。神楽は必ずやるからみんなそれまで待ってて……………咲良の為と思って待ってて」


 静かになった鉱山労働者たちはおとなしく解散していった。


 手枷足枷を付けられて剣を向けらている咲良は呟いた。


「……………みんなありがとう」





  *  *  *  *  *




 牢獄に戻って手枷足枷を外した咲良にベルナルド団長が言った。


「ありがとうな、領主代理との話し合いはまだだが、もう少し我慢してくれ」


 咲良は鉱山労働者や多くの人たちに迷惑をかけてしまっていることでやりきれない思いをしていた。


「……うん」



 ベルナルドは咲良の沈んだ表情を見て、話しかけられずにその場を去ろうとした。

 ふと、ベルナルド団長は、咲良の居る牢獄がとても綺麗な事に気がついた。


(んっ?暗くて見えづらいがこんなに綺麗だったか?気の利く衛兵が掃除したのか?)


 ベルナルド団長はそんな些細な疑問を考えるのを辞めて、すぐにその場を去っていった。





  *  *  *  *  *





 夜空には星が輝いていた、しかし窓の無い牢獄内からは全く見えなかった。

 窓が無いから昼か夜かは分からないが、地上から漏れ聞こえてくる音がとても静かなので、何となく夜なのだと予想するのだ。


 地下4階ではヒソヒソと話す二人の声がしていた。


「ジャック一人にしてゴメンね。この串焼き食べてゆっくりしててね」


 牢獄の部屋どうしは石の壁なので、二人はお互いに鉄格子から手を出して、串焼きの受け渡しをした。


「ありがとうさくら。気をつけて」


 念の為咲良は毛布を丸めてふわっとさせて寝てるかのように誤魔化した。


 そして部屋の反対側に移動して集中し始めると、足もとに一人分の大きさの魔法陣が輝き出した。

 咲良が最後の魔法名を唱える。


「『テレポート』!」


 咲良の足もとの小さな魔法陣が眩く光り輝き、咲良の姿は光と共に消えていた。




  *  *  *  *  *




 ボスコの咲良が買い取った家のリビングで魔法陣が輝き、咲良の姿が現れた。


 今は夏なので、父のルカはラダック村に戻っていて部屋には誰もいなかった。


「さあ!お風呂には~いろっと!」


 そう、咲良はお風呂に入りたいが為に牢獄に転移魔法陣を設置して、ボスコの家に転移してきたのだ。

 咲良は家を買い取った時に、街の職人に頼んで檜のような良い香りの木で浴槽を作ってもらったのだ。


 お風呂上がりにひと息つくと、色々なサイズの巫女装束が掛けられたクローゼットの中から、サイズの合いそうな服を着た。

 ローラさんが、育ち盛りの咲良の為に色々なサイズを作ってここに掛けてくれているのだ。


 お風呂に入って新しい服に着替え気持ちがリフレッシュ出来た咲良は、『テレポート』でジャックの待つ牢獄へ戻ることにした。




  *  *  *  *  *




 牢獄に戻った咲良は、リフレッシュして落ち着いたからなのか、今までは半信半疑で自信が無かった地下の気配を感じ取ることが出来た。


(すごく微かな魔力だけど、やっぱり地下に何か居るわね…………この魔力の質は今まで感じた事が無いわ…………はっ!まさか幽霊?!)




 次の日食事を届けに来た衛兵に、咲良は地下に何があるのか聞いてみた。


「この下には最下層の牢獄があって、終身刑の奴が投獄されてるんだ。今は一人だけだがお前たちは知らない方がいいぞ、俺だって地下5階には行きたくないんだから」


 衛兵は固いパンと冷たいスープの乗ったお盆を置いて帰っていった。


「はあ……」


(幽霊じゃないのが分かって良かったわ。でも安心した分どんな人が居るのか気になるわね)


 咲良はアイテムボックスから出した焼きたての串焼きを食べながら、最下層へ想いを馳せていた。



 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆


 読んで頂き有難う御座います。

             m(_ _)m


 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆




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