串焼き屋台スタッフ探し!
今年もよろしくお願いします
m(_ _)m
神楽の公演まであと4日。
咲良は前回と同じ様に串焼き屋を2店舗出す予定だったので、また商人ギルドのサブリナと鍛冶屋のミーナにお願いしに行った。
サブリナは勿論やらせて頂きますと引き受けてくれたが、ミーナは鍛冶の仕事が忙しくて厳しい様だった。
ミーナは独り立ちの修行としてモンテラーゴに来て地道に頑張っているのだ。
今までは昔から街にある鍛冶屋が忙しい時にしか仕事が廻ってこなかったが、最近は他の鍛冶屋が手一杯じゃ無くても仕事が来る様になってきた。
そして今回は領主軍の仕事で十数本の剣のメンテナンスを受け、1週間程度は忙しいそうだ。
鍛冶屋の店内で申し訳なさそうなミーナ。
「さくらの為だから手伝いたいのはやまやまなんだが………すまないな」
「良いことじゃない。気にしないでいいのよ、頑張ってね」
しんみりした雰囲気のところに、ミーナのおじいちゃんロンドが元気に帰ってきた。
「たっだっいま~~ミーちゃ~ん。おっ!さくらちゃんまでいるではないか!わしに会いに…………ん、なんだが二人とも元気がないの」
「じいちゃんお帰り」
「ロンドさんお帰りなさい」
ただの子供好きのじじいにしか見えないが、世界最高の鍛冶師なのだ。
「おっとさくらちゃん、ロンドさんなんてそんな他人行儀な呼び方などせんでもっとこう、フレンドリーな呼び方でいいんじゃぞ?」
見た目は10才の咲良だが、前世と合わせれば26才だ。世界一の鍛冶師をじーちゃん呼ばわりするほど子供ではなかった。
「いえいえロンドさん、そんな失礼な呼び方をする訳にはいきませんから」
「あぅ~しっかりしておるんじゃな。でもほらあれじゃ、子供はもっとこう、自由でいいんじゃぞ?」
ロンドは子供が好きなようで優しかった。
「ふふっ、お気遣いありがとうございます。でもロンドさんは立派な鍛冶師ですから」
まだ丁寧な話し方の咲良だが、ロンドは諦めなかった。
「これはわしのお願いなんじゃよさくらちゃん。フレンドリーに呼んでくれると嬉しいんじゃ。他人行儀にされると距離を感じてどんどん落ち込んでしまうんじゃ。弱ってる年寄りの頼みだと思ってお願いじゃ」
「えっと、弱ってる年寄りには見えないけど…………」
咲良が困っていると、見るに見かねてミーナが声をかけてくれた。
「まぁ確かにじーちゃんは鍛冶師から見たら凄い鍛冶師だけど、普段は暇してるただの年寄りだから、気にしなくていいんだぞさくら」
咲良は懇願するロンドを見て、この世界に来る原因となった神様を思い出していた。
(あの時もお願いされてお爺ちゃんと呼ぶ事になったわよね…………お年寄りはみんなこうなのかしら)
「じゃあ分かりました、お爺ちゃん以外の呼び方で何か希望がありますか?」
「おおっ、さくらちゃんが呼びやすければ何でもいいんじゃぞ。さくらちゃんに決めて欲しいな」
「そうねぇ…………おじいちゃん………じぃちゃん…………じぃじ………じぃじはどうかしら」
「じぃじか、うんいい!なんかいい響きじゃな、距離がぐっと縮まった感じがするの、じゃあこれからはじぃじじゃ!」
「ふふっ、お願いねじぃじ」
喜ぶロンドを見て微笑ましく思う咲良だった。
「うんうんいい感じじゃ。ところで二人とも何か悩み事でもあるのか?雰囲気が暗かった様じゃが」
ミーナが事情を説明した。
「って事でアタイが手伝えなくて悩んでいたのさ。あっ!じーちゃん暇じゃん、どうよ、やってくれない?」
「子供たちと遊ぶ時間が減ってしまうが、さくらちゃんに直接お願いされたら………ん~どうじゃろう」
ロンドが言って欲しそうなので咲良はお願いした。
「じぃじ、お願い手伝って!」
ロンドの表情がぱあっと明るくなる。
「うんうんもちろんじゃ!さくらちゃんの頼みじゃからじぃじ頑張るぞいっ!」
「ふふっ、ありがとうじぃじ。子供たちと遊ぶ時間って、ミーナの他にも子供がいるの?」
咲良は他にも孫が居るのかと疑問に思った。
するとミーナが教えてくれた。
「じーちゃんは暇だから裏の孤児院の子供たちと毎日遊んでるのさ」
「暇だからじゃないぞ?遊びたいからじゃな、楽しくてわしも元気になるしの」
「へぇ~孤児院があるんだ。なんならその子供たちに手伝ってもらってもいいよ?ちゃんとお給料は払うから」
「子供たちと一緒にか、いいかもしれんの。孤児院の院長に相談しに行ってみるか」
「ありがとうじぃじ」
「おうっ!じぃじ頑張る!」
ロンドはとっても嬉しそうだった。
* * * * *
ミーナの店や孤児院のある辺りは、モンテラーゴの中でも不便な所で環境も悪く地価も安かった。
だからミーナが余所から来て鍛冶屋を始めようとしても、ここしか空いてなかったのだ。
寄付で運営している孤児院がこの辺りなのは仕方がなかった。
すぐに咲良とロンドは孤児院に挨拶に行った。
出迎えてくれた孤児院の院長は、教会で働きながら孤児院をやっている優しい感じのおばさんで、名前をメリーさんと言った。
咲良が事情を説明すると、メリー院長は構わないそうだが、子供たちに出来るかを心配していた。
「私は構わないのですが、うちの子供たちで大丈夫でしょうか。大きい子たちは孤児院の事情を察してお手伝いをしてくれたりするんですが、お店をやるとなるとお手伝いとは違いますし……」
「大丈夫ですよメリー院長。ボスコの孤児院の子供たちもやってますから絶対出来ますよ」
「メリーさん、わしも一緒に手伝うから大丈夫じゃ」
「そう、ではお願いします。子供たちを紹介するわね」
そして孤児院で1番のお兄ちゃんとお姉ちゃんを紹介された。
二人とも9才だったが学校には行けてない様だった。
8才の教会の儀式で魔法属性の才能がある事が分かれば魔法科には無料で通える。
魔法属性の才能が無い者はみんな普通科になるのだが有料なのだ。
金額はそれ程高くはないのだが、寄付で運営している孤児院では厳しいのだ。
学校に行ってない子供たちは働き口を探すのがなかなか難しく、10才になって冒険者登録をして、街中の雑用依頼をする子供たちが多いそうだ。
院長に連れてこられた二人は、自分たちと同じくらいの咲良に戸惑いながらも、孤児院の為にと言うやる気のこもった真っ直ぐな目をしていた。
「リリィです」
「カール………ふん」
栗毛色の髪を肩で切り揃えている女の子のリリィはしっかりしてそうだった。
同じ栗毛色で短髪の男の子カールは、なんだかふてくされていた。
咲良は広場で串焼き屋台を手伝って欲しい事を伝えると、リリィから返事が返ってきた。
「簡単な計算なら院長先生に教えてもらているので私が出来ると思います。カールには串焼きを渡すのをやってもらおうと思います」
咲良がお手伝い料は一人4千ターナ払う事を伝えると、カールの雰囲気が変わった。
「4千だとっ?お前みたいな子供が払えるかよ!俺は騙されなからな!」
「………冒険者もやってるしお金なら大丈夫よ」
「俺とそう変わらないのに冒険者だと……………それで何をすればいいんだ?」
カールは人の話しを聞かないタイプのようだが、手伝ってくれそうだった。
リリィが小さくため息をつく。
「カールへの説明は私がしておきますので大丈夫です。さくら様本日はありがとうございました」
リリィがしっかりとした挨拶をしてから、カールの腕をむんずと掴んで奥へ連れて行った……。
「わっ!何だよリリィ、まだ話しはおわっ……」
リリィ頑張れ!
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