ルカパパ!そして村の整備計画!
ルカが帰って来てから1週間。
アリーチェに魔法の才能がある事、精霊を呼べる事などの説明を、ルカにするまでは、精霊たちをむやみに呼ぶ訳にはいかない………ていうか誰も呼べない。
(説明はエリスママがタイミングをみてしてくれる筈なんだけど………やっぱり難しいのかな。そりゃそうか、この世界での非常識のオンパレードだし、気長に待つか)
アリーチェは5才になった。
身体も少しづつ成長してだいぶ出来ることが増えていた。
活動範囲も広くなり、村の生活インフラに不便を感じるようになったのだ。
道の歩きにくさは言うまでもないが、水汲みの大変さを今までは知らなかったようだ。
ルカの水汲みに着いて神の泉まで行ったが、汲んだ水を持ってでこぼこの道を戻って来るのだ、アリーチェには無理だった。
神の泉から水を汲んで来ているとは思わなかったのだ。
水路などは昔からあると思うのだが、この世界には魔法が有り、街などでは水を出す魔道具で事足りるのである。
必要不可欠だが、高価な物だし水を出すには魔物から手に入る魔石が必要なのである。
なので魔石を温存する為に、ルカが居る時は出来るだけ水を汲みに行っているのだ。
(ルカパパは昔からこの道だから、気にならないみたいだけど、やっぱり重くて大変だと思うし、お年寄りには無理だわ)
ラダック村の道路と水道のインフラ整備をしなければと心に誓うアリーチェだった。
(道路工事はみんなをどうやって説得しようかしら。いや、村長だけで大丈夫か)
村長説得計画に頭を悩ませるアリーチェだった。
気になっていたピエロのレベルの事をルカに聞いてみたら、思い出しながら教えてくれた。
「ピエロの冒険者ランクか、確か聞いたな………Dランクになったばかりって言ってたから………20だ、きり良くレベル20になったって言ってたな」
初めて聞くのでレベル20がよく分からないアリーチェ。
「冒険者ランクDとかレベル20ってすごいの?」
ルカはどう説明するか考えてから答えた。
「冒険者ランクは上からS・A・B・C・D・E・Fとあって、Fがかけ出しで、Eが新人の冒険者としてやっと役に立つくらい。その上がDだから一人前の冒険者としてやっていけるようになったレベルだな。Dになるのも大変なんだ。EやFだと危険な依頼は殆どないが、それでも怪我はするし命を落とす、Dランクから一気に危険度が増すから死ぬ奴も多くなるんだ」
「そうなんだ。ピエロさん彼女さんの為にも無事でいて欲しいね」
「彼女さんの為か………2人はとても仲良さそうだったな。冒険者だから覚悟はしてるだろうけど、それでもピエロに何かあったら悲しむだろうな」
「冒険者って危険なんだね」
「ああ、レベルが上がると報酬も多くなるが、命を落とす可能性も増えていくからな。レベルの補正で身体が強くなるし、経験も積めば無事に帰って来る可能性も高くなる。危険に備えて逃げる判断も大切だな」
「そっかぁ、彼女さん心配でしょうがないでしょうね」
「まあこればっかりは2人の問題だからな。ピエロのレベルが少しでも上がればいいんだけどな」
「レベルって誰でもあがるの?」
「そっかまだ知らないか、レベルは全ての者にあって、魔物を倒すと経験値を得られて、ある程度貯まるとレベルがあがるんだ。アリーチェも上がるぞ」
「おお~でもまだアリーチェに魔物は倒せないかな。ルカパパは魔物倒したの?」
「はははっ、倒したよ、一応冒険者だしな。パパはレベル15なんだ」
「お~!ルカパパすごい!もう少しでレベル20だね」
「ん~そうなんだけどね。この村に来る前は、冒険者を頑張って上を目指してたんだ。パパはエリスの為にと思ってたけど、違ったんだ。危険な冒険者の仕事は、エリスを心配させてばかりで笑顔が減ってね、悲しませるだけだったんだよ。冒険者を辞めてこの村に来たんだけど、来て良かったよ。エリスに笑顔が戻ったからね」
アリーチェはルカに抱きついた。
「ルカパパ、ぎゅ~してあげる」
「ははっ、どうしたんだい急に」
アリーチェは今までよりもっとルカが好きになった。
* * * * *
夕食後のリビング。
テーブルに並んで座っているエリスとアリーチェ、その向かいにルカが座っていた。
エリスは1週間悩んだ末に、今日ルカにアリーチェの秘密を伝える決心をしたようだ。
緊張したエリス。
「えっと………ルカに話さなきゃいけない事があるの」
今までにないエリスの様子に焦るルカ。
「ちっちょっと待ってエリス?急に改まったりして、どうしちゃったんだい?………まさか僕………捨てられちゃう?」
「捨てる?そんな事しないわよ?これからもずっと一緒によろしくね」
「ふぅ~良かった~、それならどんな話しを聞いても大丈夫だよ」
「そう?もっと大事な話しなのよ、心して聞いてね」
「えっ?捨てられるよりも大事って………」
何故かすでにルカの心はダメージを受けていた。
その後、エリスの話しは始まった。
先ず、アリーチェに魔法の才能がある事や、もうすでに魔力があり少しなら魔法が使える事を伝えた。
魔法の才能がある事はとても喜んでくれていたが、魔力がある事やすでに魔法が使える事を話していると、段々とルカの笑顔が固まっていくのが分かった。
ルカの様子を見たエリスは、もっと秘密はあるけど話すのは次回にする事にした。
「今日はここまでにするわ。ルカ?まだまだ話す事はあるから、心が落ち着いて話しを聞く準備が出来たらまた言ってね」
ルカは更に固まった。
思い出した様にエリスがルカに伝える。
「そうそう、アリーチェの魔力を熟練の魔法使いなら気づくと思うの。私たちも気をつけるから、ルカも気をつけててね」
ルカは思考停止状態だった。
「は……はい」
アリーチェはこの場で村の道路と水路の事を話し、村長を説得したいと相談した。
「へぇ~確かに道が歩き易かったらいいかもね、山だからこれが普通かなとか、むしろ神の泉が近くて助かるわなんて思ってたわ。水路って川がそれぞれの家を通るって事?」
「そうなの、一歩で越えられる幅の小さい川を作って、それぞれの家の前を通すの。街中では水汲みとかはどうしてるの?」
「魔法が使える人は魔法で水を出して、魔法が使えない人は水を出す魔道具ね。それ以外はやっぱり近くの川から水汲みね。水を運ぶ距離だけど、神の泉とこの家はかなり近い方なのよ」
アリーチェは前の世界では、家の中に水道のある生活が恵まれていたのだと感じた。
でもそれはそれ、便利な生活に慣れてしまったから譲れなかった。
やり方を知っていて、インフラを整備すればいいだけなのだ。
エリスママが考えたと言う事にして、明日村長の家に話しに行くことになった。
ルカを忘れていたが、まだ座ったまま固まっていた。
* * * * *
次の日、村長宅を訪ねた。
エリスママと2人でゴチェン村長を説得した。
「歩きづらい気はするが、そこまでする必要があるかの?」
どっちつかずの煮え切らない感じだった。
あと一押しと感じたアリーチェは、小さい猫の人形の編み物を見せた。
アリーチェがエリスに内緒で編んでいたのだ。
ゴチェン村長もエリスも、見たことのない編み物で驚いていた。
ジーッと人形とアリーチェを、交互に見つめるエリス
「アリーチェが編んだ編み物よね……」
「へへっ……」
アリーチェは笑うしかなかった。
「これは初めてみる編み物じゃな。細かい模様まで良く出来ておるし編み方も想像つかんな………」
「もし道路と水路を作ってくれたら、村の特産品としてこの編み方を村の女性たちみんなにお教えします。村の生活は必ず良くなります!絶対に損はさせません!まだ道半ばです!どうかアリーチェに清き一票…………あれっ?」
戸惑っているエリス。
悩むゴチェン村長。
「アリーチェには何の得もないように思うが、村の為か………良し分かった!やろうじゃないか!」
「ありがとうございます!必ずやこの村を住みよくして見せます………んんっ?」
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