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Cランク昇格試験の準備!


 ジャックは昇格試験の説明を聞く為に冒険者ギルドに来ていた。


 ジャックにグイグイくる銀髪のキアラの姉、仕事の出来る受付嬢金髪のルチアに説明を受けていた。


「Dランク以下のメンバー8名以上を指揮して、Cランクの魔物1体以上を討伐するか、Dランクの魔物の群れを討伐する事です。試験官としてギルドから1名同行致します」


「8名以上?もしかして協力してくれるメンバーがいないといけないの?」


「はいそうなります。皆さん冒険者仲間の知り合い同士で受けてらっしゃいます。同じDランクに知り合いはいらっしゃいますか?」


「ん~、この街はほとんど来ないからいないです」


「それでしたら、多少お金がかかりますが、昇格試験の協力者者を募集されるのも、1つの手かと思います」


「協力者の募集ですか?」


「はい、試験の為に討伐する魔物を明確にすれば、協力してくれる人は意外と集まりますよ」


「そうですか。分かりました、募集する事にします」


 その後、ルチアや咲良と話し合って、細かい募集要項が決まった。


 ~~~~~~~~~~~


 【Cランク昇格試験の為のPT募集】


試験内容

 モーウルフ6体以上の討伐。

報酬

 1人につき1万ターナ

日時

 揃ったメンバーで要相談。

 魔石は依頼主の物とする。

 その他の素材は協力者での均等割とする。


 ~~~~~~~~~~~



「モーウルフは群れで行動する魔物です。たまに群れのリーダーがゼブラモーウルフの時がありますが、同行する試験官は強いですのでその時は試験官の指示に従ってください。森の深部まで入らなければ大丈夫だとは思いますがお気をつけ下さい。ではこれで掲示板に貼っておきますね、応募があればお伝えしますので、1日一度はギルドに顔を出してください」


「分かりました。毎日夕方頃には顔を出すようにします。ではお願いします」


 ジャックと咲良は用事を終えて冒険者ギルドを後にした。

 咲良が冒険者ギルドを出ると、どこからともなく白い小鳥のふわちゃんが飛んできて、咲良の肩にとまってくつろぎ始めた。

 ふわちゃんは普段は咲良の頭や肩、胸元の襟の中などで幸せそうに過ごしているのだが、冒険者ギルドなど室内に入る時は外で待っていてもらうのだ。

 レベルの高い人にはフェニックスの子供であるふわちゃんが怪しまれそうだからだ。


 咲良はふわちゃんを撫でながらジャックに言った。


「後回しになっていた商人ギルドに行ってみてもいい?」


「うん、僕の用事も終わったし行こう」




  *  *  *  *  *




 貴族街に入る門の前。


 この前揉めた衛兵に咲良が商人のギルドカードを恐る恐る見せてみる。

 訝しげな表情の衛兵だったが、本物である事を確認し渋々通していた。

 ………衛兵は何故か悔しそうだった。

 

 咲良はダニエラさんに感謝しながら、スキップで貴族街に入って行った。




 商人ギルド正面。


 ふわちゃんにはまた飛んで逃げてもらった咲良とジャックは、警備の獣人が開けてくれた商人ギルドの入口を入っていった。


 冒険者ギルドとは全く違って落ち着いた雰囲気の商人ギルド。

 数人の客が居るのだが、静かに話しをしていて騒がしさはなかった。


 ギルドに入って来た咲良に気づいた受付のサブリナは、すぐに咲良の所にいった。


「いらっしゃいませ小花このはな咲良さくら様。別室にご案内致します。どうぞこちらへ」


「あっ、ありがとうサブリナさん」



 咲良は部屋に案内され、ジュースとお菓子のモコをいただきながら、サブリナの話しを聞いた。


「それでは分かった事をご報告致します」


 モコを食べながら聞く咲良。


「ふぁい、はむっもぐもぐ」


 報告の内容はこうだった。


 学校は街の中心部にあり、塀を隔てて貴族街側に魔法科、平民街側に普通科と分かれている。


 公演が出来そうな広い場所の候補。

 学校の校庭。

 北広場。

 南広場。

 貴族街の噴水広場。

 鉱山地区管理棟前広場。


 北広場と南広場は使用料を払えばたいてい許可は下りるが、その他は領主や貴族の了承が必要になってくる。


「むぅ~学校でやりたかったけど貴族がOKしないとダメなのかぁ…………ボスコでは咲良が生徒だったし校長先生が許可してくれたから出来たのか」


「北広場や南広場は平民エリアなので大丈夫なのですが、学校や噴水広場は領主様や貴族たちの賛同が得られないと許可が下りないですね。鉱山地区管理棟前広場は管理長の許可が必要なんですが、採掘に関係なかったり邪魔になるからなどの理由で、公演などが許可された事は無いですね」


「学校でさえ出来れば他は諦めてもいいんだけど」


「この中では学校が1番難しいです。普通科ならまだしも魔法科は親である貴族たちの許可が必要になってきますから」


「親が貴族かぁ、まあそうだよねえ」


「学校でやりたいとの事ですが、咲良様はボスコでも公演されてますしモンテラーゴでも有名になれば領主様や貴族は反対しないと思います」


「有名にねえ、そうなれば学校でやる必要も無いような…………まあ出来る所から地道にやっていくしかないか。じゃあ各広場での申請をお願い出来るかしら」


「はい分かりました。申請してみます」


「お願いねサブリナさん」


 お菓子を食べ終わった咲良は商人ギルドを後にした。




  *  *  *  *  *




 鉱山地区を馬で進む咲良たち。


 商人ギルドを出た咲良たちは、モンテラーゴに来るときに出会ったドワーフのミーナさんに会う為に鉱山地区に来ていた。

 ミーナたち4人は全員がLV20になったばかりのDランクだ。

 唯一の知り合いPTなのだから昇格試験を手伝ってもらおうと咲良が言いだしたのだ。


 鉱山地区で通りすがりの人に聞くと、ミーナの店の場所をすぐに教えてくれた。


 鍛冶屋は全て鉱山地区と市街地区を分けている水路沿いにあり、ミーナは1番の新参者なので、最も立地の良くない北の端っこなのだそうだ。


 馬に2人乗りで水路沿いを北へ進んだ。

 鉱山地区は埃っぽく、ふわちゃんは咲良の胸元の襟の中に避難していた。

 ふわふわなので咲良も暖かくてほんわかしていた。


 水路と北の防壁が交差する鍛冶屋通りの1番北端に、煙突から煙を上げている小さな鍛冶屋があった。


「ここかしら」

「たぶんここだね」


 馬を降りて、咲良とジャックは鍛冶屋に入っていった。


「「こんにちは~」」


 室内は温度が2~3度高く蒸し暑かった。

 小さなテーブルが置いてあるだけの受付があり、そこには見たことのある男が、タンクトップと半ズボンの涼しい格好で座っていた。


「いらっしゃ……あっ!先日は助けて頂いて有難う御座いました」


 男は咲良たちに気がついて、すぐに立ち上がって挨拶をしてきた。


「あなたは確か弓で戦ってたえっと………イチじゃなくて………ニーでもなく………」


「サンコンです。本日は武器の修理か何かですか?」


「そうそうサンコンさんね。ちょっとミーナさんに相談があって来たの」


「分かりました、姐御に話してきます」


 すぐにサンコンは後ろの作業場に走って行った。

 少ししてから、タンクトップに短パンの格好で汗を拭きながらミーナが現れた。


「よう、よく来てくれたな。相談があるんだって?何でも言ってくれ、出来る限りの事はさせてもらうよ」


 ジャックのCランク昇格試験の詳細と協力者が必要な事を説明した。


 ミーナは嬉しそうに言った。


「そりゃあ是非とも手伝わせてくれ。相手がモーウルフなら是非やりたいね、この前のリベンジだ。あたいらメンバーはこの前の4人で協力させてもらうよ。今度こそ気合いで叩きのめしてやる!」


「ありがとうミーナさん、チームワークで倒せる様に作戦を考えるから、4人の戦い方を言える範囲で教えてくれるかな?秘密にしたい事は言わなくていいから」


「あたいらに秘密なんてないさ。あと呼び方はミーナでいいよ、あたいもジャックって呼ぶからさ」


「分かった。よろしくミーナ」


「よろしくなジャック」


 ジャックとミーナは握手を交わした。

 ミーナたちメンバーの事を色々と聞いてから、ジャックと咲良は鍛冶屋を後にした。




  *  *  *  *  *




 夕方


 冒険者ギルドに行って、4人のメンバーが決まった事を受付のルチアに伝える。


「それは良かったです、丁度こちらも協力したいと言う方が別室で話しをしてます」


 ジャックが笑顔になる。


「えっ今居るの?だったらすぐに会います」


 協力者が待っていると言う部屋に案内されると、今まで笑顔だったジャックと咲良の表情は固まってしまった。


 部屋のソファーには、前に貴族街の入口で絡んできた貴族の執事がふんぞり返っていた。


「よう、アウグスト家の執事エンリコだ。まだ小僧なのにCランク昇格試験を受けるとはな」


 咲良とジャックは思った。


((何故ここにいる??))


「ベアトリーチェお嬢様のご意向で、お前に助力する用意がある事を伝えにきた」


 ジャックは面倒くさっと思いながらも聞き返した。


「えっと、助力する用意とはどういった事でしょうか?」


「お前の昇格試験に必要なメンバーを全て揃えた上で、お嬢様が共に戦って下さるのだ。お嬢様をお守り出来るメンバーを揃えるからそのお陰で小僧が死ぬ事も無くなるだろう。感謝して一生お嬢様に仕えろ!」


 メンバーはミーナが協力してくれて計5名、総勢8名以上の条件を満たす為には後3名は必要なのだが、この貴族の協力は全く必要ないと思っているジャック。


「お気持ちは有り難いのですが、貴族の方の手を煩わせる程の事でもありませんので、お気持ちだけ受け取っておきます。ありがとうございました」


 ジャックは丁重に断った。


 エンリコはソファーにふんぞり返りながら、足を組んでジャックと咲良を見くだした。


「お嬢様が共に戦って下さると仰っているんだから有り難く思え!」


「えっと、そのお嬢様を危険な目に遭わせる訳には参りませんので、自分たちで何とか致しますので、ありがとうございました」


 もう一度ハッキリと断るジャック。


 ふんぞり返っていたエンリコは怒って立ち上がった。


「ベアトリーチェ・アウグスト様の申し出を断るとはなんて奴だ!」


「いえ、ですから貴族の方を危険な目に遭わせる訳には参りま……」


「貴様にお嬢様の申し出を断るなど不敬罪だっ!!私がこの場で斬り捨ててもいいんだぞっ!」


 エンリコは今にも腰の剣を抜きそうな剣幕だった。


「いえそんなつもりでは無くて」


「ごちゃごちゃとうるさい小僧だ!どうしてお嬢様はこんなヤツを気に入っておいでなのだ………これは決定事項だ!!出発は2日後の2の鐘だ!遅れるなよ小僧!フンッ」


 一方的に日時を言ったらエンリコは出て行ってしまった。




 困り果てるジャック。


「どっ……どうしようさくら」


 咲良も呆れていた。


「貴族だし下手な事は出来ないし…………協力してもらうしかなさそうね」



 貴族の災難に頭を悩ませる咲良たちだった。



 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆


 読んで頂き有難う御座います。

             m(_ _)m


 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆




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