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5才のお出迎え!


 雪も溶け、木々も芽吹き、青々とした初夏のラダック村。


 ルカパパ達が出稼ぎから帰って来た。

 ルカパパ達は一度家に戻り、改めて夜にマチェンさんの食堂に集まり宴会をする。

 村長の息子マチェンさんの食堂は村で1番広く、毎年男たちが出稼ぎから帰って来た夜には、村人みんなが集まって無事に帰って来られた事と村が平和だった事を感謝しての宴会が行われるのた。


 宴会の前に家でルカを迎えたエリスとアリーチェは、3人一緒にぎゅ~していた。


「ルカお帰りなさい」

「ルカパパお帰りっ!」

「ただいま、アリーチェにエリス」


 ルカは2人におみやげを買ってきていた。

 エリスには白と黄色の花の髪飾り、アリーチェにはピンク色のポシェット、どちらも可愛らしかった。


「このピンク可愛い~、ルカパパって意外とセンスあるのね、ありがと~」


「素敵なデザインだわ、ありがとね」


 2人に喜んでもらえてホッとするルカだった。


 夜の宴会には、村中の人が集まっていた。

 エリスとテパンさんは宴会の給仕を手伝っていて、アリーチェとカンッオは端のテーブルでジュースとおやつを食べていた。

 ルカは出稼ぎに行っていた男たちと集まって飲んでいた。


 村まで護衛をしてくれた冒険者PTも参加していた。

 男達3人は見たことがあるが、魔法使いだけはアリーチェの知らない人だった。

 アリーチェは、神の泉へ来るお金がない魔法使いの話しを思い出した。

 今まで魔法使いは女性しか見なかったから女性だけかと思っていたが、若い男性だったので驚いてじっと見てしまった。

 給仕をしていたテパンとエリスが、休憩しに追加のおやつを持ってアリーチェの所に来てくれた。

 エリスママはアリーチェがじっと見ているのが、魔法使いと気づいてあまり見ないようにと注意した。


 だが、魔法使いの男性はジッとアリーチェとエリスの事を見つめていた。


 魔法使いの男は立ち上がって、果物の皿を持ってエリスとアリーチェに近づいてきた。


 そして話しかけてきた。


「ご一緒してもいいですか?」


 テーブルにはエリスとアリーチェ、テパンさんとカンッオの4人だ。

 エリスとアリーチェは焦り過ぎて、挙動不審になっていた。


「えっ?ここに魔法使いはいませんよ?」

「ラダック村だもんね」


 訳の分からない2人を見かねてテパンさんが助けてくれた。


「みんなを無事に送り届けてくれてありがとうね、ピエロ・オネストさん。どうぞ座って」


 驚くピエロ


「あれっ?どうして僕の名前を?」


 テパンさんは笑いながら言う。


「私は宿屋の女将のテパンです。宿屋の受け付けで見かけましたよ。手続きをPTのリーダーがやっていて、名前はその時にね。ピエロさんは後ろで荷物を部屋に運んでたから、気が付かなかったでしょうね」


 ピエロは苦笑いしつつ、テーブルに果物の皿を置いて、椅子に座った。


「それは失礼しました。改めまして、護衛で来ましたピエロと申します。みなさん果物をどうぞ」


 アリーチェとカンッオは果物を喜んだ。


「「ありがとう」」


 アリーチェはまだ挙動が不自然だった。

 魔法使いのピエロがなんで同じテーブルに来たのか分からなかったのだ。

 アリーチェの魔力がばれたのではないかとドキドキしていた。


「エリスと申します」

「アリーチェです」

「僕カンッオ」


 ピエロの表情が少し明るくなった。


「やっぱり君たちがエリスさんとアリーチェちゃんかぁ可愛いね、エリスさんもお綺麗ですね」


 いろいろとアリーチェたちの事を知っているようだった。

 狙われてると思ったエリスとアリーチェは警戒し表情が強張っていった。


 ピエロがそれに気づく。


「あっ初対面なのに妖しい奴ですよねすいません。ご主人のルカさんに、お二人の容姿・髪の色・好みなどの話しを聞いてたんです。街でお二人のおみやげ選びの手伝いを頼まれましてね、私と私の彼女が手伝いました。選んだのは私の彼女ですけどね」


 事情が分かりホッとして笑顔になるエリスとアリーチェ。


「そうでしたか、綺麗な髪飾りをありがとうございます」

「ポシェット可愛かった~!ありがと~!」


 安心するピエロ


「気に入ってもらえて良かった。僕もよくわからなかったから、彼女に任せたけど心配だったんだよ」


 アリーチェはピエロをじろじろと見ていた。

 中々の男前で着てる服もいい感じだった。

 きっと彼女さんが選んであげたのだろう。


「彼女さんはセンスがいいですね。大切にしてあげて下さいね」


 苦笑いのピエロ


「ははっ、はい、大切にします。ところで、遠くからかなり見られてた気がするけど、知らない間に僕何かやっちゃったかな?」


「「あっ!」」


 アリーチェとエリスの声が揃った。

 2人して魔力がばれるんじゃないかと心配して、じろじろ見ていた自覚があったのだ。


「えっ?やっちゃってたの?」


 慌てるアリーチェ


「いっいえ………私、魔法使いをほとんど見た事が無くて、その………珍しかったので………」


「なんだそっかぁ、それなら良かった。じゃあ魔法を見せてあげるよ」


「えっあっ、はいお願いします」


 アリーチェは魔法を見たい訳では無いが、流れ的にはお願いするしかなかった。


 ピエロは子供好きだったので、嬉しかった。


「じゃあ小さい魔法を、テーブルの上で見せるね、ゆっくりやるからよく見ててね」


 ピエロは少し集中して詠唱を始めた。


「大いなる者にたまわりしきよきひとしずく、わが意思いしじゅんじて、今ここに具現ぐげんせよ、『ウォーター』!」


 アリーチェとカンッオの空のコップが水でいっぱいになった。


「おお~っ」


 カンッオは驚いていた。

 その様子をみて慌ててアリーチェも驚いた。


「あっ!おお~っ…」


 ピエロは笑顔で次の魔法を唱え始めた。

 アリーチェは問題無かったようでホッとした。


「大いなる者にたまわりし空の息吹いぶきわが意思いしじゅんじて、今ここに具現ぐげんせよ、『ウインド』!」


 このテーブルにいる人達だけを、優しい風が廻っていた。

 少し暑かったので、心地よかった。


「凄え、涼しい~~!」

「すっ涼しいわ~……」


 アリーチェはカンツォのリアクションを真似した。


 今度ピエロは、握ったままの右手を上向きにアリーチェの前に出した。

 そして人差し指だけをひらいた。

 みんなを見つめてから、ピエロは詠唱を始めた。


「大いなる者にたまわりし神秘なる炎、わが意思いしじゅんじて、今ここに具現ぐげんせよ、『ファイア』!」


 人差し指の先に小さな火が灯った。


「「おぉ~」」


 火が綺麗だったので、みんなから歓声があがった。


 歓声を気にせずにピエロは、更に中指を伸ばして続けた。


「『ファイア』!」


 中指の先にも火が灯った。

 その後もピエロは魔法を続け、薬指、小指、親指と5本の指全てに火を灯した。


 アリーチェとエリスとテパンさんは魔法よりも、火の美しさに見惚れていた。


「「綺麗~~!」」


 みんな気が付かなかったが、ピエロがひらいた手の平には、小さな袋があった。


 ピエロはアリーチェをジッと見つめて言った。


「5才の誕生日おめでとうアリーチェ!プレゼントをどうぞ」


「「「!!!!」」」


 みんな忘れていたが、今日はアリーチェの誕生日だったのだ。

 同じテーブルのみんなは見とれていた。

 5つの炎とプレゼンとピエロの優しい笑顔に。


 不意を突かれすぎてアリーチェは勿論、みんなピエロに惚れてしまいそうだった。


 アリーチェは赤くなりながらお礼を言いった。


「あっありがとう、ピエロさん……」


 プレゼントを受け取り開けてみると、紐で編んだミサンガの様なアクセサリーだった。

 ピエロの彼女が編んだ物で、手首に着けるお守りなんだとか。

 教会で清められてるからお守りとしてもいいみたいだ。

 赤と黄色で編んであって可愛らしかった。

 エリスママに手首に着けて貰い、またお礼を言った。


「ありがとうピエロさん、可愛くてとても嬉しいです。彼女さんにもすごく気に入りましたと、伝えて下さい」


「うん、伝えておくよ、彼女も喜ぶと思うよ」


 ピエロは優しく微笑んでいた。


 何故かカンッオは、ピエロを睨んでいた。



 宴会も終わりアリーチェたちは家に帰って来た。

 ルカは疲れてたし、かなり呑んでいたので直ぐに寝た。


 リビングのテーブルに置いたランプをはさんで、エリスとアリーチェが座っていた。


「感じた限りそんなに魔力のある人じゃなかったわ」


「見せてくれた魔法はすぐに出来る魔法では無いけど初歩よね。この依頼を受ける魔法使いは、やっと一人前になった人が多いみたいだから大丈夫よね」


 アゴに手を当てて考えるアリーチェ。


「ある程度隠蔽はしてるし、きょうは全然怪しまれなかったから、ピエロさんのレベルならまだ安心って事ね」


「そうね、どのレベルから気を付けなきゃいけないかが心配ね」


「それが解れば魔力量で判断して、近づかないようにできるわ。魔力隠蔽で隠せるようになるまで気を付けないと……」


「まだまだ慎重にいきましょう。ピエロのハンターランクとレベルをルカにでも聞いてみましょうね……ところでピエロ格好良かったわね」


「うん、彼女さんのお陰かセンスもいいしね」


 夜のリビングでのアリーチェとエリスの密談はもう少し続くのだった。



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