討伐依頼 報告!☆1
全ての魔物を倒した咲良たちは、魔石の回収を後回しにして採掘場を出た。
遠くの山々に沈む夕陽が綺麗だった。
「じゃあオルセット、魔石はよろしくね」
「はい、任せて下さいさくら姐さん」
もう暗い坑道内に入りたくない咲良の為に、オルセットは鉱山労働者たちと221体分の魔石を回収した。
咲良は魔石を集めて来てくれた鉱山労働者たちの夕食に、昨日倒したモーウルフの串焼きとお酒を振る舞う事にした。
「みんな魔石を取ってきてくれてありがとうね!串焼きいっぱい作ったからどんどん食べてね」
「「「おおお~~!いっただっきま~~す!」」」
「いや~あんな数の魔石があるとは思わなかったぜ」
「かなりの魔物が居たんだな」
「それを魔物を半日たらずで倒しちまうとなんて、ジャックは凄えな」
「ジャック、俺たちが仕事出来るようにしてくれてありがとうな」
「「「ジャックありがとう」」」
「まあ飲んでくれ」
「あっいやっ僕はお酒は……」
「俺の酒も飲んでくれ」
「僕そんなに強くないので……」
「何言ってる、ジャックは強えぞ!」
「そうだジャックは強えぞ」
「まあ飲んで飲んで」
「ジャックに注ぎたい奴が後につかえてるからグッと飲んでグッと」
「えっあっ……」
夕食はジャックを囲んでの大賑わいだった。
* * * * *
次の日の早朝、
咲良、ジャック、オルセットの3人は鉱山労働者たちに見送られていた。
「さくらちゃ~ん!ジャック~!気をつけてな~!」
「ありがとうな~!」
「またな~!」
「さくらちゃん大きくなったら結婚しような~!」
「なぬっ!さくらちゃ~んわしと結婚しような~!」
「ジジイふざけんなっ!俺のさくらちゃんだぞっ!」
「わしのじゃ!若造は働けっ!」
「ジジイには婆さんがいるだろっ!」
「みんな採掘のお仕事がんばってね~~!」
咲良はみんなに手を振りながらバトルマリン採掘場を後にした。
オルセットは昨日のうちに杖の魔道具をつかって討伐報告をトマゾ管理長にしているので、下の街では追加の鉱山作業者たちが出発する頃だ。
咲良たちを見送った鉱山労働者たちはさっそく採掘に取りかかり始め、採掘場は活気を帯びていった。
* * * * *
一日半かけて下山した咲良とジャックとオルセットは、2階のトマゾ管理長室に居た。
「いや~討伐ご苦労さん。オルセットから報告は聞いているが未だに信じられない、もう一度話しを聞かせてくれるか、それと魔石も見せてくれ」
ジャックが説明を始めた。
「それでは、バトルマリン採掘場にいた魔物は殆どが骨折りゾンビでした。1部屋20体が9部屋、大広間には40体プラスCランクの魔物が1体いました。そのCランクの魔物がDランクの骨折りゾンビたちを指揮していたと思われます」
「信じがたい話しだな………」
「証拠の魔石を出すわね」
咲良はリュックから魔石を机の上に出していった。
「確かに骨折りゾンビの魔石だな………」
トマゾ管理長はどんどん山積みになっていく魔石を見てあんぐりと口を開けていた。
「これで全てよ。如何かしら」
「凄い数だ…………こんなに坑道内に居たのか」
「依頼内容と全然違いますがどう思いますか?」
少しの間難しい顔をしていたトマゾ管理長は、重そうに口を開いた。
「…………毎年数体なのが当たり前でな、今年もかと思って確認せずに依頼を出しちまった。すまなかったこの通りだ!」
トマゾ管理長は頭を下げた。
素直に謝るとは思っていなかった咲良とジャックは顔を見合わせた。
「ジャックに任せるわ。納得いくようにね」
咲良に頷くと、悩んだ末にジャックは言った。
「頭を上げてください。今回の依頼については故意では無くミスだったとしてもギルドに報告させて頂きます。冒険者は依頼内容に合わせた準備をしてきます。今回の様な事がありば命を落としてしまうんです。僕としては信用できない依頼主からは受けないですが、今後のことは冒険者ギルドの判断に従います」
「今後はこんな事が無いように気をつけるし、俺もギルドの判断を尊重する。危険な目に合わせてすまなかった」
言いたいことを言ったからなのかジャックの表情が和らいだ。
「僕たちも話しを聞いた上で討伐出来ると判断して行いましたし、途中で辞める事も出来る状況でしたのでなんとかなりました。まぁこれほど居るとは思いませんでしたが………」
「いや~それにしてもCランクも居る中でこの数の魔物を1人で倒すとは凄えな」
「坑道内で一度に戦うのはそれ程多くはありませんでしたから」
「いやいや、そんな簡単な事じゃないのは俺にも分かるぞ。採掘出来るようにしてくれてありがとうな。依頼完了のサインをさせてもらっていいかな?報酬はジャックの働きに見合った以上を出すつもりだから少し待ってくれ」
トマゾ管理長は依頼書にサインと共に色々と書き込んでいた。
魔石をしまい依頼書を受け取った咲良とジャックは鉱山地区管理棟を後にした。
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