冬の終わりに…
ダック村の季節は春。
まだ肌寒く村には2メートルもの積もった雪がまだ残っていた。
朝早くに家の廻りの雪掻きをイフリートがやってくれたていたので、塞がっていた窓からは朝日がリビングに差し込んでいた。
「雪掻きありがとうねリート」
イフリート流に親指を立ててお礼を言ったら。
「筋トレついでだから、気にするな」
筋トレ中なのに片手で親指を立て挨拶をて返してくれた。
雪掻きは人に見られない様に朝早くにしていたし、もし見られても大丈夫な様に、人の服装になってやってくれていた。
………色々気にしてくれたんだね。
………見れば村人じゃないからバレるけど。
………ありがとうリート、いい精霊ね。
* * * * *
今日は村の安全の為に残った男手のお調子者でスキンヘッドのブンミーさんが、朝から村の雪掻きをして廻っていた。
昼過ぎにうちに来てくれたが、雪掻きがしてあるのを見て驚いていた。
「あんれぇ~、こりゃまた家の廻りまで雪掻きがしてあるべさ、大変だっただべ。エリスさんがやっただべか?」
今日、雪掻きに来てくれる事を忘れていたエリスは、一切ブンミーの疑問には答えなかった。
「こんにちはブンミーさん、朝から雪掻きお疲れでしょう。中で少し休んで行かれてはいかがですか?」
「うんにゃ大丈夫だっぺ。それよりこの雪掻きはエリスさんがやっただべか?」
「ブンミーさん体力あるんですね~、頼もしいわ~!お茶でもどうですか?」
「そうだべかぁ~、次の家があるからもう行くだべさ。困った事があったら何でも言ってな、力仕事は任せるだべ」
ブンミーは手を振って次の家の雪掻きに向かった。
「ブンミーさん!ありがとうございました~!」
エリスはホッとした笑顔で見送った。
今の様子を窓から覗いていたアリーチェ。
(そうか雪掻きは村の人がいつもやってくれてたんだ。エリスママ、笑顔で強引に誤魔化してたな………見習おう)
* * * * *
アリーチェの午前中は、精霊達と勉強と言う名のお喋り。
午後は座禅を組んで魔力操作の練習をする毎日だった。
エリスママの編み物も、前の世界でアリーチェは得意だったから手伝ってみたが……だめだった。
4才の手ではまだ小さいうえに、細かい指先の動きが思い通りにはいかないのだ。
エリスママのやり方は、太い木の棒を使った見た事ないやり方だった。
細かく編むのは難しそうだし、完成品は全て簡単な服だった。村では凝った模様の服を見たことが無いから、これが普通なのかもしれなかった。
少し凝った編み方をして、びっくりさせよう思ったが、出来なかったのが残念だった。
(今度の冬までには、小物を編んでエリスママをびっくりさせよう。まずはかぎ針を何とか作るかな)
* * * * *
季節は初夏。
リビングの窓の外は夜。
テーブルではエリスとアリーチェが夕食を食べながら話し込んでいた。
1週間後にはルカパパが帰って来るから、アリーチェの秘密をどう話すかの相談をしていたのだ。
「精霊たちの事、ルカパパにはなんて説明しようか?」
ルカの性格を考えて悩むエリス。
「そうねぇ………先ずはアリーチェに魔法の才能があるって事からかしら。ああ見えてルカは繊細だから、少しずつ時間をかけて話していった方がいいのよね。少し話してルカが落ち着いたら次を話すの。ルカが落ち着くのにどれくらいかかるか分からないけど」
「うん分かった!」
「ええ、それとどこまで話すかよね。ママもアリーチェに魔法の才能があると分かった時は嬉しかったけど、それ以後は現実離れし過ぎて、自分がどうだったかよく覚えて無いわね」
申し訳ない表情のアリーチェ。
「エリスママに隠し事はしたくなかったの、ごめんなさい」
「いいのよ、ママは教えてくれて嬉しかったわ、ありがとうねアリーチェ」
「ルカには少しずつママが様子をみて話していくから、最初ルカの居るところで精霊はなしね。大丈夫になったらアリーチェに教えるわ、それでいいかしら?」
「うん、ありがとうエリスママ」
エリスはアリーチェを抱きしめた。
窓から見える夜空には、綺麗な星たちが瞬いていた。
暖かく見守って下さい。
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