旅立ち!
依頼を探す冒険者で賑わう朝の冒険者ギルド。
アリーチェがひょっこり入って来た。
普通、子供が1人で入ってくれば絡まれるのがオチだが、1番人気受付嬢のネムが可愛がっているのをみんな知っているので、アリーチェに絡む冒険者は1人も居なかった。
カウンターの行列を放っておいてネムがアリーチェの側に来てくれた。
「今日はどうしたの?」
行列の人たちに申し訳ないと思いつつも、ルナと話しをするアリーチェ。
「ありがとうルナお姉ちゃん。今日は学校を卒業したからGランクのひよっこからFランクの新米へのランクアップの為に来たの」
「まあ!卒業したのねアリーチェちゃん!おめでとう」
ネムはアリーチェを抱きしめた。
周りの冒険者たちから嫉妬の視線を浴びながらも、無事アリーチェはFランク冒険者の手続きをしてもらった。
* * * * *
その後、同じ中央広場にある商人ギルドを訪ねた。
ダニエラに挨拶がてら色々と相談があっのだ。
マウロたちは孤児院に移り住んだので今アパートに住民はアリーチェたちしか住んでいなかった。
アパートのリビングに魔法陣も設置してあるし、毎年ルカには必要な場所なのだ。
価格によってはアパートごと購入出来ないかとアリーチェは思ったのだ。
「今借りてるアパートなんだけど、建物全部買い取るとしたらいくらくらいかかるの?」
「物件の買い取りですか……そうですね、治安の良い場所では無く人気もありませんのであまりおすすめは出来ませんが………買い取りですと金貨5枚の500万ターナもあれば大丈夫てしょう。アリーチェ様でしたら、ボスコの貴族街も可能かと思いますが………」
「あのアパートが気に入ってるの、金貨5枚なら何とかなるかしら?」
(あまり感じなかったけどあの辺りは治安が悪かったのか。まあ500万ターナなら安い買い物よね)
「ええ、小花咲良様名義の口座の預金で足りますので大丈夫です」
「じゃあお願いするわ」
「分かりました。今日中に私の方で手続きを済ませておきます。…………アリーチェ様でしたら貴族街も可能だと思うのですがあそこに何かお有りなのですかね……フフッ」
ボスコへの転移ポイントにするつもりだった事が、ダニエラにバレてそうでドキドキするアリーチェ。
家の管理や後の事はルカパパに丸投げ予定のアリーチェだった。
* * * * *
アリーチェはラダック村特産品店に挨拶に向かったが、忙しそうだったので、手を振って店の前を通り過ぎるだけにした。
みんな元気に手を振ってくれていた。
ボスコを出る挨拶だとは伝わらなかったかもと思ったが気にしないアリーチェだった。
* * * * *
孤児院に挨拶に行ったら、セラフィナさんが焼けていた串焼きを全部くれた………
アリーチェはいっぱい並んでいるお客さんを見ない様にしたが意外と気まずかった。
アリーチェがリュックに入れるフリをしてアイテムボックスに仕舞っていたら、横にいたジャンがジッと見つめていた。
「そんなに食べたいの?はいっどうぞ」
アイテムボックスを怪しんでいたジャンを、串焼きが食べたいんだと勘違いしたアリーチェは仕方なく串焼きを1本差し出した………
「食いたい訳じゃないわっ!見た事ない収納袋だし結構入ってるから、もしかして秘密なんだろうなぁと思って…………あっ串焼きは有難く頂くぜ」
アリーチェはニコッと笑った。
「じゃあ口止め料よ……よろしくねっ」
安い口止め料に無言で串焼きをジッと見つめ、おもむろにかぶりつくジャンだった。
アリーチェがセラフィナに串焼き代を払おうとしたが全然受け取ってくれなかったので、代わりにアイテムボックスに入っていたワイバーンの肉を強引に渡した。
アリーチェは1つ気になっていた事があったので、レベッカに聞いてみる事にした。
前に『サーチ』魔法で見た時にレベッカの名前は、レベッカ・ベリザリオだった。
ボスコ領主がリベラート・ベリザリオ、領主の娘がマルティーナ・ベリザリオだ。
関係ないとは思えなかった。
「レベッカは小さい時に孤児院に引き取られたのよね?」
「覚えてないけど、みんなの話しじゃあ1才の頃みたいよ」
「お父さんやお母さんの事とか、住んでた家の感じとか覚えてない?」
「う~ん……1才じゃあ覚えてないかな。でもセラフィナ先生たちお母さんがいて、マウロ兄や他に家族と思える人たちが居るから私しあわせだよ」
「そう……変な事聞いてゴメンね」
(魔法の才能が分からない1才で孤児院に来たって事は、何か訳ありね………マルティーナのお姉さんて事になりそうだけど違うかもしれないし、レベッカが幸せなのが1番ね)
忙しそうに働くセラフィナさんやマウロたちに見送られて、孤児院を後にした。
* * * * *
みんなへの挨拶も済ませたアリーチェたちは、商人の護衛依頼を受けていたので、東門の依頼主の所に来た。
隣街のモンテラーゴまで、商人の馬車2台の護衛だ。
依頼主とは昨日会っているので、軽く挨拶をしてすぐに出発した。
ボスコの旅立ちが、もっと感慨深いものになるかと思っていたが、アリーチェは意外とあっさりしていた。
(みんなに挨拶もしたし、まぁテレポートでいつでも来られるしね)
モンテラーゴに店を持つ商人の馬車2台の横を、馬に乗って並走するジャンとジャック。
アリーチェは荷台に乗っていた。
「いや~、まさか護衛依頼を受けてくれたPTがジャンさんだとは信じられませんでしたよ。2PTお願いしたんてすがギルドからジャンさんが受けてくれたから1PTで大丈夫だからと連絡があったんです。いや~ありがとうございます」
「モンテラーゴに用事があって丁度良かったからな、気にするな」
馬車を挟んで反対側には、馬に乗ったジャックが並走していた。
アリーチェたちは、ジャンとジャックの馬に乗っての移動も考えたが、馬に2人乗りは疲れるし、アリーチェの冒険者ランクを上げる為の実績として護衛依頼を受けてみる事にしたのだ。
ジャックとアリーチェのレベルはすでにCランク相当だが、冒険者ランクはジャックがDランクでアリーチェはFランクだ。
依頼を達成してランクアップする必要があるので、先ずは地道に依頼をする必要があった。
ジャックは強さレベルが一気にあがってからも、地道に依頼を頑張っていたので、Dランクだ。
アリーチェは今日やっとひよっこから、正式にFランクに上がったばかり、白地に赤の斜線の冒険者カードから赤の斜線が消えた、白の冒険者カードが首に下がっていた。
ちなみにジャックはDランクで青いカード、ジャンはAランクでゴールドだ。
初心者のアリーチェなどは見せたくて冒険者カードを首にかけているが、ジャンとジャックは冒険者カードを仕舞ってある………アリーチェはまだまだ見せたい年頃だった。
この護衛依頼はジャックが受けた。
Dランクなら隣街までの護衛なら受けられる。
アリーチェのFランクは護衛依頼を受けられないが、PTメンバーとして参加すれば、Fランクの依頼を達成した事になるのだ。
商人はご機嫌な様子でみんなに話し続けていた。
「いやいや、それにしても小花咲良さんが乗って下さるなんて、馬車の価値が上がりますなぁ~~馬車を洗わないでおこうかな~~、ひゃひゃひゃっ」
馬車の中に座っているアリーチェはドン引きだった。
膝の上には、少し大きくなった白いふわちゃんがスヤスヤと眠っていた。
頑張れアリーチェ!
頑張れ小花咲良っ!
第2章森に囲まれた街ボスコ編、終了です。
第3章は、巫女として各地を巡る予定です。
そして次回から、『神様が巫女に願い事!巫女の異世界生活!』の題名を変更しようと思います。
新しい題名は、
『神様にお願いされて渋々転生したら、知られていない全部の魔法が使えました!巫女として異世界の為に頑張ります!』
にします。
初心者として書き始め、説明的な題名が多い事の意味にやっと気づいたからです……(遅っ!)
勿論、短い題名でも人気の作品はいっぱいあります……
初心者なのでスイマセン
m(_ _)m
今後ともよろしくお願いします。