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お詫びにジャックのレベル上げ!☆1


 学校は1ヶ月の夏休みに入っていた。

 アリーチェにより毎日ジャンとジャックの演奏特訓が続いていた。


 アリーチェもだんだんと2人に申し訳なく感じてきて、お詫びにジャックのレベル上げを申し出た。


「えっ?僕のレベル上げ?少し前にレベルが上がったばかりだからレベルアップはまぁ先だと思うけど、アリーチェとPTを組めるのは嬉しいな」


「レベルアップはまだ先?いやいや、すぐレベルアップするからレベル上げって簡単よね?ただレベルに応じた経験やスキルが足りなくなるからむやみに上げないけど」


「「んんっ?」」


 話しのかみ合わなさに戸惑うジャンとジャック。


「あれっ?なにか違った?」


 アリーチェに常識が通用しない事を思いだしたジャンが説明する。


「あ~普通のレベル上げは大変だぞ。自分の年齢と同じくらいのレベルなら優秀な方だ。レベルが高くなるにつれて上がりにくくなるから大変だぞっ!俺のLV50なんかだと2年かけて1上がればいい方だな。命を落とす可能性も高くなるし、怪我で引退の可能性もある。レベルが高ければ安全な仕事なんていくらでもあるから、40才代でレベル上げをしなくなるのが普通だな」


「ふぅ~ん、そんなに大変なんだ。アリーチェは3回くらい魔物狩りをしてLV18になったから簡単だと思ってた」


「「3回で??」」


「うん、LV1の時からロックゴーレムとか、ベルトコンベアーを精霊たちが倒すから初めでLV10、2回目でLV16とか上がったわ。剣や魔法の練習にならないから困るのよね。あっ精霊たちはアリーチェの魔法になるから、アリーチェ1人で魔物を倒した事になるみたいなの」


「そいつはまた……まてまて?LV1から精霊召喚出来たのか?」


「そりゃそうよ、アリーチェに魔力がある事も魔法のやり方も精霊たちが教えてくれたんだから。召喚って言うか、友だちになってくれたのよ」


「…………精霊に魔法を教わるって、聞けば聞くほど理解出来ないな」


「精霊たちにとって、アリーチェはきっと特別なんだね………僕にとってもだけど」


 ボソッとへんな事を言うジャックだった。





  *  *  *  *  *




 次の日アリーチェたち3人はアパートに集合して、何処に魔物狩りに行くかを相談していた。



「Cランク以上の魔物がいる1番近い所ってどこなの?」


 アリーチェがいきなりとんでもない事を聞いてきた。


「レベル18と16のPTでCランク以上狙いとはとんでもないな。ジャックにとっては格上で歯が立たないと思うんだが」


「その方がはやいでしょ?早く帰ってきて笛と太鼓の練習をしてもらうんだから」


「「今日も練習やるんだ………」」


「当然よ、毎日の練習が大切なんだからね」


「「……はい」」


 しょんぼりする2人だった。



 ワイバーンの群れを倒した場所から、北の山を越えたあたりにCランク以上の魔物がいたはずだと、ジャンが教えてくれた。


「確実にいるのはそこくらいだな。森を奥に進めば居るかも知れないが、確実じゃあ無い」


「分かったわ、ちょっと行って来るからこの部屋で待ってて」


「「えっ?」」


 2人の事など放っておいて、エリスママが作ってくれた、鳥の様なグレーのつなぎの服に着替えて来たアリーチェ。


「ここで待つってどう言う事だ?一緒に行かなくていいのか?」


「後で戻ってきて一緒に行くから部屋で待ってて、練習時間が減るからもう行くわね」


 そう言ってアリーチェは、アパートを出て行った。


 呆然と見送った2人は、アパートの部屋で大人しく待つしかなかった。




 1時間程経つと、部屋の魔法陣が輝きだした。


「お父さん!」


「これは………テレポートの魔法陣!!何か来るぞっ!」


 椅子に座っていたが立ち上がり、警戒して武器を構える2人。


 部屋全体が白く輝き、その光りがおさまった魔法陣の中心には寒そうに凍えるアリーチェがいた。


「ちょっとジャンッ!雪が残ってて寒い場所だって言わなかったでしょっ!」


「いやっ、すぐに行くとは思わなかったし………すまなかった」


「もうっ!」


 アリーチェは怒りながらも奥の部屋で厚着をして戻ってきた。


「じゃあ行くわよ」


「ちょっちょっとだけ待ってくれ、その………一応聞いてもいいか?」


「何の事?」


「その床のやつ」


「魔法陣の事?テレポートするやつだけど」


「あぁそうだよな、俺は王都で1度使って知ってるんだが、何故ここにあるかって事だ。遺跡として残っているだけの筈だが」


「んっ遺跡?まだ学校でその辺の事は習ってないから知らないけど遺跡じゃないわよ、魔法陣は魔法で出来るのよ、この部屋の魔法陣もアリーチェが作ったし、ラダック村の家にもあるわ、後は魔物の森ね。今さっきジャンの言った所にも作って来たから、いつでも行ける様になったわ……いいかしら?」


「テレポートの魔法陣って魔法で作れるのか………」


「そうね、属性はタッくんの属性よ、神様の加護が必要だけどね」


「ぼっ僕の属性でテレポート……」


「やっぱり神様の加護が与えられてるのか……」


 ジャンもジャックも驚きすぎて放心状態だった。



 暫くして、2人が落ち着いた所で雪山にテレポート。


「んっ?真っ暗だな」


「魔法陣を隠す為に洞窟を掘ったから、岩をどけるからちょっと待ってね」


 真っ暗な中、アリーチェの歩く音がしてから声が聞こえた。


「『収納』!」


 入口になっていた大きな岩をどけるアリーチェ。

 全員が眩しさに目を閉じる。

 目が慣れてくると、目の前には青空と共に白銀の景色が広がっていた。


「まじかっ!本当に雪山に魔法陣を作ってテレポートしてる……」


 PTを組む為にジャックと握手をするアリーチェ。


「それじゃあタッくん、魔物を倒すわよ~~っ!」


 あり得ない事が続いて、ついて来れてないジャック。


「あっ…あぁよろしくね…」


「声が小さいっ!もう一度っ!魔物を狩るわよ~っ!」


「あっおぉお~~っ………」


 こうしてPTを組んでの魔物狩りが始まった。




  *  *  *  *  *




 青空の下、真っ白な雪の上を歩くアリーチェたち。

 アリーチェが指示する方へ進んでいると、少し広い場所で3体の魔物を発見した。



 切り立った山の斜面の一角に、30メートルくらいの広場が広がっていた。

 山側には洞窟の入口がり、反対側は崖になってた。

 洞窟の前にはイエティたちが3体寝転んでいた。

 ひなたぼっこをしていて、3体ともこちらには気がついてないようだ。


(イエティみたいな魔力が3つあるから来てみたけど、大きめのイエティね)


 ジャンが少し焦っていた。


「おいおい、ズーティ、ミィティ、イエティがいるじゃねえか、3体相手は大丈夫か?、1番でかいズーティは俺が相手してやろうか?」


「んっ、精霊たちがいるから大丈夫よ。イエティじゃないの?」


 アリーチェの様子に少し呆れるジャン。


「あぁそうだ、こいつらは家族で行動して、俺くらいの大きさのが子供でランクDのイエティ。3メートルくらいのが母親でランクCのミィティ。4メートルくらいのが父親でランクBのズーティだ。力は大きさに比例して強く、大人は魔法で雪を飛ばして来るぞ」


「Bランクなんてついてるわ。ありがとう。じゃあ練習の為にアリーチェとジャックは、1番小さいイエティと戦いましょう」


 アリーチェはウェイターでも呼ぶかのように指を鳴らした。


 パチンッ!


 するとアリーチェの周りに7人の精霊たちが現れた。ラダック村にはまだ3人精霊が残っているから10人ではないのだ。


 アリーチェは知識のありそうなルナに、どうするのがいいか聞いてみる。


「それでしたら、まずズーティはイフリート1人の方が喜んで戦うでしょう。ミィティはヴォルト爺とフラウの2人、アリーチェ様の守りはノームが盾役、回復がディーネがよろしいかと」


 イフリートはやる気満々だ。


「流石ルナ、分かってるじゃねえか、男は真っ向勝負だからな」


「あ~、やっぱりリートはそう言う扱いなのね、分かったわそれで行きましょう」


「私はアリーチェ様のお側に仕えながら、念の為イフリートを強化します」


「分かったわ、ジャックの武器は背負っている大剣ね?」


「うん、お父さんに憧れてね」


 ジャンは義手だった左腕にシールドを縛り付けて、太い右腕で大剣を振り回すスタイルだった。


 細身のジャックには、両手でも大剣は向いてないと思うアリーチェ、


「分かったわ、ノン(ノーム土属性)が盾役で敵を引きつけるから、隙を見て攻撃して。アリーチェもそれに合わせるから、ディーネ(ウィンディーネ水属性)はジャックの回復ね、リート(イフリート火属性)、フラン(フラウ氷属性)、ヴォル爺(ヴォルト雷属性)、シリル(シルフ風属性)は自由に戦っていいわよっ!じゃあみんな、戦闘開始よっ!」


 イフリートがフライング気味にズーティに向かって走り出した。


 こちらに気がつくと、今まで寝転がっていたズーティが起き上がって吠えた。


「ブオォォオ~~ッ!」


 ミィティもイェティもそれに答えた。


「バオォォオ~ッ!」

「ビオォ~ッ!」


 それぞれが戦闘に入った。



「行くわよっ!『ファイアーアロー』!」

 アリーチェの魔法の矢が、避けようとするイェティに何本か刺さった。


「ビボォッ!」


 怒ってアリーチェに向かってくるイエティを、ノームが大きな盾で受け止めた。


 ジャックはルナに教わった『スロー』の詠唱をしていた。


「大いなる者にたまわりし冥府めいふ影法師かげぼうしわが意思いしに準じて、今ここに具現ぐげんせよ、『スロー』!」


 ノームが動きを止めているイェティに『スロー』がかかって少し動きが遅くなる。

 ヘイトを稼ぐ為にノームがグーでイェティを殴る、アリーチェやジャックの練習の為に手加減しているので武器は使わない。


「アリーチェは左から行くから、ジャックは右からね、同時に行くわよっ!」


「はいっ!」


 アリーチェとジャックが剣を力強く握って走り出した。

 アリーチェの動きは速く、イエティに斬り剣は、ジャックより先にイエティの片腕を切り飛ばす。


「ビッビオォッ!!」


 そこに少し遅れてジャックが大剣を振り下ろす。


「とりゃ~っ!」


 『スロー』で遅くなっているイェティだが、ジャックの大剣をぎりぎりで躱した。

 空振りして大剣が地面についたままの隙だらけのジャックにイエティは残った腕で殴りかかった。


「くっ!しまっ!」


 目の前に迫るイェティの拳に焦るジャック。


 ノームはイエティを殴り飛ばす事は出来たがしなかった、アリーチェの剣の方が速かったからだ。


「ハッ!」

 シュパーーッ


 ジャックを殴る直前だったイエティの腕をアリーチェの剣が切り飛ばす。


「ビオオ~~~ッ」

 苦しそうに叫ぶイエティ。


「ジャック、トドメをっ!」


 ジャックは急いで大剣をもう一度振り下ろした。

 叫んでいたイェティの肩口から胸にかけてジャックの大剣が斬り裂いた。

 イエティはそのまま倒れて動かなかった。


 一息ついたアリーチェは、ほかの戦闘を見た。


 ミィティはヴォルトの雷にやられたのだろう、ぷすぷすと身体から煙りが出ていた。


 ズーティはまだイフリート殴り合っていた。



 アリーチェとジャックは、イエティとミィティの経験値で、自分たちの身体が何度も軽くなるのを感じていた。


「なっ何だ?」


 驚いているジャックを放っておいて、アリーチェは『サーチ』でレベルを確認する。


「イエティで1上がってミィティでレベルが3上がったかな。アリーチェはLV22になって、ジャックも4上がってLV20ね」


「えっ今ので20に?1度の戦闘で……」

 簡単にレベルが上がって唖然とするジャック。


 それを見ていたジャンも驚いている。


「確かにランクが1も2も上の相手だから上がって当然だとも思うが、絶対無理な相手を2人で倒した事になるのか…………ありえん。戦闘の経験やスキル習得的には、レベルだけ上がるのは確かに危険だな」


 あっさりとレベルアップしたが、ジャンはジャックの剣術の訓練の必要性を感じていた。



 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆


 読んで頂き有難う御座います。


【作者からのお願い】


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             m(_ _)m


 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆




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