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神楽の準備!


 ワイバーンの脅威から解放されたジャン主催の肉祭りから1週間が過ぎ、街は平穏を取り戻した。



 ジャンは冒険者ギルドのギルド長室へ呼ばれた。


 緊急依頼でボスコへ来てもらった事と、ワイバーンの群れの討伐報酬が決まったと呼ばれたのだ。


 報酬は白金貨20枚。

 白金貨1枚が1000万ターナなので2億ターナ、つまり2億円だ。

 ギルド長は安くてすまんと謝っていたが、危機的状況だったとはいえ、辺境の街で白金貨20枚出すのは大変な事なのだとジャンも分かっている。


「街が無事で良かったと思ってるから、気にしないでくれ」


(俺は何もしてないしな……)


「そう言ってもらえると助かる。えっとそれで………この金をアリーチェの冒険者ギルド口座に振り込んでいいのか?」


「ああ頼む、それと白いワイバーンの素材は取っておくから、それ以外を買い取ってもらった金額もお嬢ちゃんの口座に振り込んでくれ」


「あぁ分かった……何故アリーチェちゃんなんだ?ジャンが助けたんだから、感謝される立場だと思うんだが」


「俺か助けたのか…………そうだな、う~~~ん、気に入ったからかな」


「気に入った?いやまだ子供だぞ?………まっまさかジャン」


「とっとにかく頼んだぞっ!」


 ジャンは、気まずくなってきたのでギルド長室をそそくさと出て行った。



 1人残ったギルド長はつぶやいた。


「可愛い子供だとは思うが、助けた上に大金を貢ぐとは………そう言う事なのか、ロリコンのジャン!」



 変な2つ名が増えた瞬間だった。




  *  *  *  *  *




 アリーチェはこの1週間、心配してくれたみんなへのお礼を悩んでいた。

 街のみんなにとってワイバーン肉祭りの主催はジャンなのだ。

 アリーチェに出来る事を考えた結果、夏の終わりに神楽を披露する事に決めた。


 小花咲良このはなさくら解禁である。



 面倒な貴族や裏社会の人たちは心配ではあるが、ボスコの人たちとはだいぶ親しくなったとアリーチェは思う。

 領主には会った事は無いが、娘のマルティーナとは友だちだ。

 司祭様にも良く思われてるようだし、学校の先生や商人ギルド、冒険者ギルドとも良い関係だ。

 何よりも、Aランク冒険者のジャンと知り合えたのは大きい。

 ジャンが街の英雄となった後も、街中でアリーチェと一緒にいてくれるので、アリーチェとジャンが良い友人である事を街の人たちも知っていた。


(これだけの人たちと良い関係なんだから、変に手を出してくる貴族もいなさそうだし、もう小花咲良を公開して大丈夫でしょ)


 ラダック村で絡まれたイザベラ司祭や商人のシモーネ以降、貴族から変な絡まれ方をしていないので、アリーチェは気が緩んできていた。




  *  *  *  *  *




 ジャンは、緊急の指名依頼が無い限りはボスコに居てくれるそうだ。

 まぁ、王都に帰ると左腕の説明が面倒くさいのもありそうだった。

 ちなみに左腕が治ってからのジャンは、暇を見つけては左腕だけの腕立て伏せをやっていた。

 右腕のように鍛え上げるつもりのようだ。



 神楽笛を作ってくれた木工職人のエルノと娘のチェリーナが、神楽の太鼓も頑張って作ってくれた。

 神楽の演奏に笛と太鼓が揃ったのは嬉しかった。

 当分ボスコに滞在する予定のジャンとジャックに、太鼓と神楽笛の演奏者を頼んでみた。

 やった事は無いが、アリーチェが教えてくれるんならと2人とも引き受けてくれた。




  *  *  *  *  *




 アリーチェがアパートに防音魔法を張って、ジャンとジャックが神楽笛と太鼓の練習をしていた。



 ジャックが神楽笛を吹く。


 ひゅ~ひゅ~ひゅ~


 ジャンは太鼓を叩く。


 トンッ トンッ トンッ


「ジャンもタッくんも違うわっ!ピュ~ヒャララ~と、トンットンットトンッよっ!はいもう一回っ!」


 ひゅ~ひゅ~ひゅ~


「タッくんはまず音が違うわっ!ひゅ~じゃなくてピィ~ヒャララって感じでっ!」


「はっはいっ!」


 汗をかきながら頑張るジャック。


 トンッ トンッ トンッ


「ジャ~ン~!リズム感無いのっ?トンットンットトンッよっ!はい続けてっ!」


「おっおうっ!」


 アリーチェは神楽にはとっても厳しかった。




  *  *  *  *  *




 ローラさんの所へ巫女装束の丈を直してもらいに来たアリーチェ。


「アリーチェちゃん少し背が伸びたかしらね、女の子っぽくなってきてたわ。もともとルックスはいいから、絶対モテるわね」


「え~っまたまたぁ~、お世辞でも嬉しいわ」


「あらやだっ本当の事よ、同じくらいの息子がいたら、許婚いいなづけにしたいくらいだわ、変な男に引っかかっちゃダメよ。まぁジャックは悪くないと思うけど経済力がまだね………もう少し様子見かしら」


「えっ?なんで突然ジャック?そんなんじゃないよ?」


 顔を赤くなり、焦って誤魔化そうとするアリーチェ。


「ふふっ、まだまだこれからだもんね」


 ローラは優しく見守っていた。


 アリーチェに着てもらった巫女装束の丈を確認しているローラ。


「でもこの衣装、とってもステキね、この袖が不思議といいのよね」


「ありがとう。神楽を舞う時も綺麗に見せる為に、袖の動きはとっても気をつけるの」


「へぇ~そうなんだ、夏の終わりの神楽が楽しみね」


「うんっ!頑張るわ、ありがとうローラさん」




  *  *  *  *  *




 アリーチェは商人ギルドで、ダニエラと神楽の打合せをしていた。


「やはり貴族も平民も観られるようにとなると中央広場でしょうか。風の魔道具を使って広場の端まで音が聞こえるようにすれば大勢でも大丈夫かと思います」


「そんな魔道具があるんだ」


「はい、他にもアリーチェ様を光りで照らす魔道具もあります。今回は客席を設置して領主様や有力な貴族にも声をかけておこうと思います。色々な手配は私がしておきますので、舞台に専念して下さい」


「ありがとうございます、ダニエラさん」


(領主様や有力な貴族か、いつかは通らなきゃならない道だし、まぁ大丈夫でしょ)


 アリーチェは意外と楽観的だった。



 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆


 読んで頂き有難う御座います。


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             m(_ _)m


 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆




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