精霊ウィスプに魔法を教わる!☆4
積もった新雪に朝日があたり、キラキラと輝いて綺麗な朝だった。
今日も朝からイフリートが部屋で筋トレをしてくれていた。
「……リート、毎朝ありがとうね」
アリーチェはイフリートと話して、あだ名で呼ぶ事にしたのだ。
イフリートは意外と嬉しそうにOKしてくれた。
チラッとこちらを見たイフリートは右手の親指を立てた。
「気にするな!筋トレしに来てるだけだぜ!」
アリーチェは苦笑いだった。
朝食も終わり、いつものウィスプ先生が来た。
「それでは今日は一般常識で、教会についてです」
ウィスプは普通に話しているだけなのに、怖さを感じてしまうアリーチェ。
「………はい」
教会についての講義はこんな感じだった。
ほとんどの国に教会があり、教会トップである教皇の影響力は強く、魔族国以外はどの国も教皇の意見には逆らわないのだ。
教皇は最も魔力量が多く、最高の魔法使いなのだ。
回復魔法が得意な聖属性の魔法使いは、ほとんどが教会に所属している。
聖属性の才能がある者は、教会に所属して修行するのが1番効率的だし、貴族として裕福な生活も期待でき、誰しもが憧れるエリートな存在なのだ。
教会は、毎年夏に魔法の才能を見る儀式を無料で行っている。
その年の8才の子供はみんな参加し、魔法の才能が聖属性だった者の親には結構な金額が支払われ、子供は教会の所属となる。
聖属性は貴族になれる可能性が高く、人々にも尊敬されるので誰もが憧れる属性である。
その他の属性は、兵士や冒険者として修行を積み、実力次第で貴族になれる。
勉強の時にウィスプが、魔力隠蔽の話しをしてきた。
「アリーチェ様はすでにかなりの魔力があり、熟練した魔法使いは魔力に敏感ですので見つかると大変です。隠した方が良いかと思います」
よく分かってないアリーチェ。
「魔力は隠した方がいいの?」
「ふむ、そうですね………、一般的に魔力を隠す者はいません。魔力があると分かると、尊敬されますし、変な事はされませんから。反対に魔力がない者は邪険にされたり絡まれたりと、変な扱いを受けますので隠して良いことは何もありません」
「なら隠さない方が良いんじゃない?」
「今のは一般論でアリーチェ様の場合は違います。4才で魔力があるだけで大変な事なのに、その魔力量はすでに熟練の魔法使い程なのでマズいです。良い意味でも悪い意味でも狙われます。魔力に気づいた貴族たちは先ずアリーチェ様を養子にと考えるでしょう。お金での交渉でダメなら力尽くで何とかしようと考えるでしょう。貴族は何をしてくるか分かりません。そしてもし自分たちの敵になるようなら暗殺者を送ってくるでしょう。どう転んでも大変な騒ぎになります。アリーチェ様が召喚をされなくても顕現する事の出来る私たち精霊がお守り致しますが、それでも子供のうちは隠す必要があります」
「怖い世の中なのね………」
「大丈夫ですよ、アリーチェ様には私たち精霊がついてます。その辺の奴らでは相手になりませんから。アリーチェ様がもう少しお強く成られたら、国家が相手でも何とかなりますよ」
「…………普通の生活が出来なさそうだから、隠蔽頑張ります」
アリーチェは素直に隠蔽を習う事にした。
「隠蔽は魔力操作の1つです。自分の魔力を静かに保ち、魔力を漏らさない薄い膜で、自分の魔力ごと包み込む感じです」
「薄い膜で包み込むイメージね、やってみるわ」
いつもの様に座禅での瞑想スタイルで集中をしていくアリーチェ。
(……シャボン玉で包むように………)
段々と集中が高まっていくアリーチェ。
それを見つめるウィスプ。
リビングのテーブルでは、エリスが裁縫をしていた。
普通の家庭としてはあり得ない光景だが、アリーチェの家ではこれが日常だった。
「アリーチェ様!魔力が徐々に減っていく様に感じます………初めてなのに流石です………やはり天才少女ですね………いや、天才幼女か………」
アリーチェの集中が幼女という単語に反応して乱れる。
アリーチェの目の前にしゃがんでいるウィスプ。
「少し集中が乱れましたか?………あら?こんな所に針が………」
針という言葉にまた集中が乱れるアリーチェ。
「針ではなく糸くずですね………ふぅ~、集中しながら聞いてくださいね。これはアリーチェ様の為なのですよ?アリーチェ様が普通の生活をする為には、街や人の居る所に行く時は勿論、今後は1日中隠蔽をする必要がありますので、いつ如何なる時も油断なく出来る様になる為です………お願いしますねアリーチェ・さ・ま!」
分かってはいた事だが、やはりウィスプはSだった。
アリーチェは泣きそうな気持ちを抑えながら集中をがんばった、これ以上怖い思いをしない為に。
腕を組みながらアリーチェを見下ろすウィスプ。
「初めてで半分もの隠蔽が出来ていますね。日々精進していけばすぐに全てを隠蔽出来るでしょう」
今日の練習が終わった。
「本日で魔法の基礎と、聖属性の基本的な魔法は終了です。明日らは違う属性の精霊に交代しましょう」
思わずアリーチェは笑顔になった。
「はい!今までありがとうございました!」
アリーチェは腰を直角に曲げたビシッとしたお辞儀をした。
不満げな表情のウィスプ。
「何か困り事があれば、いつでもお呼び下さいね」
アリーチェは満面の笑みで答えた。
「はい!」
(困ってもウィスプは呼ばないと思うけどね!)
* * * * *
次の日からアリーチェは1週間寝込んだ。
さすがに4才の身体に連日の勉強と魔法の練習は、無理しすぎだった。
寝込んでいる時に呼んでもいないのにウィスプが現れて、身体を強くする為には魔法で治さない方がいいと教えてくれた。
(魔法で治さないんならなにしに来たの?まさか苦しんでいるところを見る為?………)
風邪は一度かかれば、二度目からはかかりにくくなるが、魔法で治すと無かった事になり、身体が強くならないらしい。
筋トレも一緒で、魔法で疲れを治すと、練習が無かった事になるらしい。
つまり筋トレしたイフリートに、ヒールをかけると筋トレはしなかった事になるそうだ………ウィスプはやってそうだった。
* * * * *
残り8属性の魔法の練習は、休みを挟んで健康に気を使いながら教えてもらった。
精霊みんなと基本的な魔法の練習が終わった頃には、季節は春になっていた。
話しを進めるのも、書き出すと難しいんですね。
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