ロムウェルの決意
「そろそろ村に着くな」
「あれ、そういえば結局ステータス見せてもらってない気が」
「細かいことは気にするなって」
「いやいやいや、ちゃんと見せてくださいよ!」
めんどくさいな。もし見せなかったらやっぱりパーティー入りませんって言われるかもだしさっさと見せておくか。
「分かったって。見せてやるよ」
ステータス
シズル
職業 冒険者G級
レベル 4
HP 130/130
MP 67/67
スキル
身体強化Lv1
回避Lv1
短剣術Lv1
加護・呪い
田舎神の加護(冒険に対する恐怖が軽減、好戦的になる)
田舎神の加護は田舎で育ったやつは全員持っているものだ。都会神の加護とかもある。ロムウェルは田舎神の加護も都会神の加護も持っていないので、神を祀っていない所で育ったんだろう。
「あれ?レベル低くないですか?」
「うっさい。あんまり戦ってなかったんだよ。最近冒険者になったばかりでそれまでは戦う機会がなかったからな」
「意外ですね。なんか冒険慣れしてそうな雰囲気出してたのに」
「村が見えてきたぞ。ん?なんか燃えてないか?」
「そんな誤魔化し効きませんよって、え?本当に燃えてる!」
「お前俺が嘘ついてたと思ってたの?」
「いやいやまさか、そんなことはないですよ」
「なんかお前、俺のステータス見てから扱い適当になってない?」
「……村に急がなきゃ!!」
「おい待てって。身体強化使いやがった。後のことあんま考えてないなあいつ」
MP少ないの忘れてるのか?あの速度だと村に着くのに数分かかるぞ。その頃にはMPもそこそこ減ってるだろう、村が襲われてるとして、戦ってる途中で倒れたりしないよな?
あぁーめんどくさい。これ以上考えても仕方ない。急ぐか。
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一方その頃、ロムウェルは全力で走っていた。逃げて来たわけじゃないと言うと嘘になるが、助けたいと思ったのは本当だ。村に近づくと悲鳴が聞こえた。手遅れかも?もう間に合わない、お前が行ったって何が出来る?弱音に負けそうになりながらも何とか村に着く。
周りを見ると、そこは地獄だった。家は焼かれ、物が散乱している。男の死体が見え、吐き気がしたが吐いてる場合じゃない。先を急ぐべき。そう思い、村を探索した。村は中々広く、状況を把握するのに手間取ったが、何とか分かった。
敵の数は冒険者が15人、村の見回りをしているのを含めたら20人ぐらい。男は全員殺され、女は広場に集められている。子供は檻に閉じ込められている。奴隷商に売るつもりか。
奴隷商に売られれば、人生が終わると言っても過言ではない。大抵は金持ちが買い、ストレス発散用にサンドバッグにされるか弄ばれるかだ。不意に過去のことが蘇って来た。頭を振り、何とか抑えるが、不快感だけは消えてくれない。
どうするべきか。このままシズルさんが来るのを待つか。それじゃ手遅れになるかもしれない。まだ助けられるかもしれないからそれはしたくない。
かと言って正面から戦おうとしても人質を取られて終わりだ。敵一人一人は弱いが数が多い。相手するのに手間取っている間に囲まれて倒されるか人質を取られるかして終わりだ。
僕はあまり人を守るのには向いていない。なら何ができるか。今の冒険者達の位置は前に10人、村人を囲うように5人だ。考えても考えてもいい案は出てこない。
やっぱり僕じゃ何も出来ないのか。また守れないのか……。
「やめて、ママを連れていかないで!」
「来ちゃダメー!」
その声を聞いて冒険者の方を見ると、子供の腹から剣が伸びていた。
「ガキが。騒ぐんじゃねえよ」
「あぁ…タリス、タリスぅ、なんでこんなことに……」
「おい、こっちこい」
子供の母らしき人が冒険者に連れていかれ、家に入っていった。子供が殺されて、僕はそれを見ているだけ?
ふざけるな!!!
それじゃあの時と何も変わらない!今まで鍛えてきたんだろう、ここでやらないでいつやる、このまま被害を増やすだけか!
ようやく覚悟が決まった。シズルさん、僕が囮になって時間を稼ごう。正直、シズルさんは弱い。この冒険者1人より弱いかもしれない。でも、シズルさんなら何とかしてくれるんじゃないかってそう思うんだ。だからさ、待ってるよ。
行ってくるね。