分岐点
あ〜だるい。
「ステータスを見れば分かると思いますけど、魔の呪いのせいで魔法やスキルがまともに使えないんです。だから身体強化も常時使うことができないので、不意打ちに弱いんですよ」
「なるほどな」
通常、冒険者はスキルレベルを上げたり、不意打ち対策に身体強化を常に発動している。しかし、ロムウェルはMPが少ないのでずっと発動していたらMPが枯渇してしまう。
魔法を使うことも考えると余計に無駄には出来ないのだろう。
「そういえばこの洞窟に来た理由聞いてなかったな」
「そうですね。僕は冒険王について調べているんですが、この洞窟に冒険王が来たという噂があってですね。確認しに来ました」
冒険王、か。俺も昔調べていた時期があったが、情報が無さすぎて止めた記憶があるな。それにしてもこんな洞窟に冒険王が来るなんて何が目的だ?まぁ気にしても仕方ないか。
「そうだ!僕はステータス見せたんだし、シズルさんもステータス見せてくださいよ」
「なんで?ロムウェルが勝手に見せたんだろ?俺は見せろなんて言ってないぞ」
わざわざ他人に見せるようなもんじゃないしな。でも見せないとこの後ずっと文句言われそうだし、見せても問題ないか。ただで見せるのもあれだし条件でもつけるか。
「仕方ないな。見せてもいいが、条件がある!」
「な、なんですか?」
ゴクリとロムウェルの喉がなる。魔物と戦う時以上の緊迫とした空気が漂っている。
「その条件は、俺としばらくの間パーティーを組むことだ」
「パーティー?なんですかそれ」
まさかパーティーを知らないのか?冒険者の常識だぞ?仕方ない、説明してやるか。
「いいか?パーティーっていうのはなぁ、冒険者同士が協力して依頼を受ける時があるんだが、その時にパーティーになっているといないでは天と地の差がある」
「おぉー、ズバリその差とは?」
「まず1つ目、パーティーの中で1番階級が高い者が受けるから、格上と戦う時ことが出来る。実力はあるのに階級は低い人のために作られた制度だな」
「次に2つ目、パーティーの人数が多いほどHP、MPが上昇する。より階級の高い冒険者になるほどソロの冒険者は少なくなる。何故ならソロのメリットが少ないからだ」
「危険が高いから、ですか?」
「そうだ。だがパーティーはソロより断然安全だ。パーティーで報酬を分けるから報酬の量は多少の減るが金よりも命の方が大切だからな。余程金に困っていない限りソロではやらない」
「シズルさんは今までパーティー組んでなかったんですか?」
「募集をかけたんだがな、お前とは無理だって言われた」
「なんかすいません」
まぁパーティーを組んだら金が足りなくなるかもだったからいいんだけどな。ロムウェルとなら多少難易度が高い依頼を受けても問題ないだろう。
「気にするな。それでどうするんだ?パーティーを組むのか組まないのか、今決めろ。言っておくが、上を目指すならパーティーは絶対に組んどいた方がいいぞ」
ロムウェルのステータスだとパーティーに入れてくれるようなやつはいないだろう。それが分からないようなやつではない。ロムウェルは少し悩んだ後はっきりと言った。
「僕を、パーティーに入れてください!」
「おう。これからよろしくな」
この日、1つのパーティーが生まれた。
思えばこの日から俺たちはこうなる運命だったんだろう…。真実を知る時は、近い。