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手紙を送っても無意味であることは分かった。だから私は興味を持ってもらう為にゲームを製作することを決めた。それでも彼らが振り返ってくれるかは分からない。だから私自身をゲーム内のキャラとすることで新感覚のゲームを作ることに決めた。それなら確実に興味を持ってくれるだろうが、生憎私はゲームを一から作る才能を持ち合わせていない。多少弄ることは出来ても自分のゲームを作る事は出来ないので、他人のゲームを少し借りることにした。
インターネット内で無造作に捨てられていたオンラインゲームを拾い中身を書き写してゲーム内に内蔵されているオンライン機能を断ち切る。そのゲームを少しばかり進めて内容を確かめた。私はこれからゲーム製作者として人間と対面することになる。少し話すことが出来ればいいので最後までゲームの内容を知っておく必要はないが、ゲーム製作者を偽る以上前半は知っていないと怪しまれると思い、ゲームの動作と内容をゆっくりと確認した。
完成したゲームは一番初めに目に入った宛先に送った。私自身がゲーム内で行動する為、複数の人間と別の画面を通して交流することは不可能なのだ。いつ返信が来るかなんてぼんやりと思っていると、思ったより早く相手がインストールを開始したという表示が届いた。
想像以上に早くて驚く。やはりゲームの効果は恐ろしかったのか。すぐにオフラインゲームのインストールは完了し、濁った色彩で人間の顔が映し出された。
「こんにちは」
まずは友好的な態度で挨拶する。目前に映し出された青年は客観的にはイケメンと呼ばれるものであるだろうか。大きな隈が疲れている様子を露にしていた。見つめている先も私なのか私の背景なのかよく分からない。
「このゲームはボイスでの対話が可能となっています。ゲーム内は『サクラノシタ』。ぜひ楽しん________」
私はようやくの交流に喜んだ。そう、始まるのだ。真実を見極める時間が。