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「マスター、特別クエストクリアおめでとうございます!まさか本当にクリアしてしまうとは思いませんでした。しかも武器しか強化せず」

「やっぱ防具強化してた方が良かったかもしれねえな。まじでワンパン即死しまくったわ」

「直前に手に入れた復活薬が役に立ちましたね。これで次の町に行けますよ。それとマスターのランクがEとなりました!」

カロリーメイトを片手で持ちもう一方はマウスに添えるといった神スタイルの俺は暗い部屋でゲームに熱中していた。バトルの迫力など非常に凝られておりとても楽しい。

「ランク?」

「ええ、レベルが先程のバトルで30となりましたので、ランクバトルに参加できるようになりました。現在はお試しプレイ、いわゆる先見プレイというものでマスターしかゲームはやってはいませんのでそこまで意味があるとは思わないで下さい」

「お、おう」

「ですが対戦以外にも日頃のクエストでも大型モンスター討伐の際にランクは上がって行きますので上位の武器も購入できますよ」

どうやら一定のレベルに達しないと手に入らない装備があるらしい。また奥深い。

「まあ次の街に行きましょう!冒険はここからですよ」

「楽しみにしてるよ」

俺はこうして次の街に足を踏み入れた。アニメーションと共にゆっくりと広い街が姿を現す。宿やギルドの位置を確認してから俺は元気よく声を張り上げた。

「よし、行くか!」

「はて、どちらへ行きなさるのですか?」

「金を貯めてただろ?それで武器や防具を整えるんだよ。こういうゲームはストーリーを進めれば進めるほど売ってる武器が強くなるのは定番だしな」

「お詳しいもので」

「ゲーム制作者に言われたきゃないよ」

元いた街で売られているものより少し能力値の高い防具を買い、お互い装備した。俺の方は銃を武器とするので盾などは持てないが、彼女には重盾と長剣を与えておいた。アビリティ枠を見ても彼女の攻撃防御共に大きく上昇しているのがわかる。

そこで、俺は精算時受け取ったコインを見ながら言う。

「そのコイン、何?」

「ああ、それはコスチュームチェンジコインというものでして私の服装を変える事が出来るものですね。ある程度以上一気に店で物を買うともらえます」

「服を変える?」

「ええ、例えばこんなのとかこんなのとかありますよ」

彼女は手元にメイド服やセーラー服を持ってくる。俺が「どうでもいいけどよ」と口にすると、彼女はメイド服を俺の前に持ってきて笑った。

「マスターはメイド服が一つの性癖なのですね。少し意外です」

「あ?そんな事一言もいってねえんだけど」

「マスターがメイド服を凝視しながら2,3ミリほど眉を上げて鼻下を伸ばしておられましたので」

「精密査定すんなコラ」

彼女は嬉しそうに笑いながらメイド服を自分で購入した。そしてその場で姿を変える。純白のメイド服と長く伸びた睫毛からおしとやかな雰囲気が漂う、紛れもない美少女。まあゲームの中の世界の住人に変わりはないのだがそれでも似合っているの一言に尽きた。

「どう、ですか?」

「まあ___客観的に見れば綺麗だろうな」

彼女は頬を大きく膨らまして子供らしい顔を画面に突き出し不満そうに声を漏らす。

「マスター主観ではいかがですか」

鋭いところを逃さず突いてきた彼女に、後頭を掻きながら正直に言うことにした。

「綺麗、だよ」

「なんで分けて言うんですか。照れ屋さんなのですね、もう」

「うっせえよ」

彼女は少し赤く染めた頬を擦りながら満面の笑みで俺に叫ぶように言い放った。

「宜しくお願いしますね、ご主人様」

どうやら俺は彼女のご主人になってしまったようだった。



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