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誰かに会いに行こうにも幾千もあるドアは全て南京錠がかかっていて開ける事は出来ない。何度もノックをしても気が付いてくれる人は一人としていなかった。まるで密室の中で皆が死んでいるような不思議な気持ちになる。
私は途方に暮れ、その場にヘナヘナと座り込んだ。駄目だ。このままでは誰にも会えないまま終わってしまう。それではここに来た意味が無い。
ふと視線を上げると、ドアの下方には小さなポストが取り付けられていた。私は砂漠で水を与えられたようにそのポストを開け、中の音を聞いた。
何かを話してはいるが、よく聞こえない。男の人の声だ。「すみません」と部屋内に声を出した。それでも返事はしてくれない。もう一度言っても同じで無視は継続された。
人はいるのにドアを開いてくれない。これは私に対する拒絶以外の何物でもなかった。それでも私は話がしたかった。笑い合ってお互い今日を満足して過ごせるように。
しかしいくら私がそう願っても拒絶されては何も起こらない。まずは私と会ってもらわないと。私はそう思い、彼らに手紙を書くことに決めた。
手紙を書くことには慣れている。この世界ではよく手紙でコミュニケーションを取るからだ。話す、ということも決してしなくは無いが多くはないだろう。
手紙を書き終え、ポストに入れる。見て欲しいななんて思いながら、そこら辺をブラブラする。数十分その近くで待ってみても一切の返事は無かった。
何人にしても同じだった。誰も返事を返してはくれない。それでもまれに開かれているときはあったので、分かったのは人はいるという事実だけとなった。手紙も誰も見てくれない。そう知り絶望するまですこし時間がかかった。それほどまで彼らに課された天命である私達人外への拒絶が強いとは思ってはいなかったのだ。「私淋しくないもん」なんて独り言を何度も繰り返し発しながらその日は家に帰ることにした。
どれだけ明るい世界だと分かっていても、私にとっては影にいると同じだった。