身長
「っていう事言うのよ、どう思う?」
俺の前の席に腰を下ろして隣の席のクラスメートに話しかける□子。
「そう言われてもねえ」気の無い返事を返すクラスメート。
思わず見上げれば、バレー部所属の□子の顔は俺の顔の優に10センチは上。
「何よ?」
見返すつっけんどんな□子の問いに答える。
「いや何も」
「あたしの身長が高いのが気に入らないと?」
いやいや全然そんな事言ってませんが。
チラリと横を盗み見れば目くばせするクラスメート。
どうやら逆らうなと伝えたいらしい。
何か□子の機嫌を損ねる事でもあったんだろうか、その憂さを俺にぶつけられても困るんだが。
「じゃあ、身長が高いとは思ってないと?」どう答えても突っ込む気満々の質問にたじろぐ。
「いやそりゃ高くないとは思ってないさ」
「ほらやっぱり」
「違う違う、スタイルいいなって話で」苦し紛れに口走る。
「見てたの?」
「え?」思わぬ□子の反応に戸惑う。
「えっち」
「ええええ」何故そうなる。
「いやだってウェアとかそもそも動きやすいようにぴったりしてて」
「やっぱり見てたんだ」いやいやいや、なんでそうなる。どうやら言えば言うほどドツボに嵌るようだ。
隣のクラスメートが含み笑いしている。冗談じゃないぞ。
「まあそんなわけでさ」
もう□子はクラスメートに向き直って先程の話を続けている。
いや待て、今の一連の流れはなんだったんだ。
「まあそんな訳よ、しょうがないよねえ」
言うだけ言って気が済んだのか□子の表情はさっきまでと打って変わって笑顔だ。これでは俺だけがバカみたいではないか。
思わずムッとする俺に□子が起ちあがりざま小さく呟いて行った。
「ありがとね」
いやあのなにがどうなってそうなったのかまるで分らないんですが。
クスクス笑う隣を睨みつけて見せる。
忌々しいがやっぱり春は青臭い。