暖房
「電車もさ」
「スチーム暖房だよな」
電車通学の□□子に問う。
「そうだよ。お尻の下ポッカポカ」
「眠くなったりとかしないもん?」
教室の後ろ側スチーム暖房の近くの俺、聞いてみたくなる。
「ん~、前日よく眠れなかったり、部活で疲れて帰る時とか有るね」
「やっぱりそうか~」
「でもね」一拍置いて□□子が続ける。
「寝過ごして乗り越すのも怖いから熟睡は出来ないよ。ウトウトするだけ」
それは確かにそうだろう。
「30分位だっけ?乗ってるの」
「そう。だからどの道ゆっくりは出来ないんだけどさ」
□□子の言葉に思わず電車のシートでうたた寝する□□子の姿を想像する。
「何考えてるの?」
俺の顔を覗き込んで聞く□□子に思わずどもる。
「べ、別に変な事かんがえてねーよ」
実際変なことなど考えているわけでもないのにこの焦りはなんだ?。
頬杖をついて俺の方を見ている□□子に心の中で声を掛ける。
「もう結構です、充分温まりました」
話していて気付いた。女の子と喋るのはスチーム暖房並みに温まるもんなんだと。心地よくてこのまま居眠りしたい気分だが、ここで寝たりしたら教室中の笑いものだ。負けじと頬杖ついて□□子を見返す。
「まったく春は青いよなー」
「何言ってるの君は」
噴き出す□□子につられて俺も笑いだす。暖房効き過ぎだ。身体が熱くなる。