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春が青い  作者: 志村巧
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留学

「無事に帰ってくるんだぞ~」


「留学に行くだけだってばw」






挿絵(By みてみん)


「土曜日にはぱーちーすんのかー」

「その情報何処で仕入れたw」

呆れ笑いで返す〇〇子は書き物の手も止めず、笑顔でツッコミ返す。


一年間の交換留学に出掛ける〇〇子の出発日までもうじき。


代わりにやってくる金髪の留学生も気になるが、若い〇〇子が一年も日本を離れて、帰って来た時別人になっているのではないかと要らぬ心配も湧く。


ちなみに交換留学生が金髪美女なのは俺の脳内設定なので、現実がどうなるのかは知る由もない。


「悪い虫つかないだろうな~」

「君はあたしの父親かw」


軽口が幾らも出て来るのは正直妬みだし、羨ましさの裏返しでもある。


学校からの推薦が有ってのことだとはいえ、欧米の学校で1年間過ごすなど。

幾ら羨んでも足りない。




ホームステイ先のベッドで目覚めると。キッチン兼用の食堂、いわゆるダイニングキッチンでは既に起きていたステイ先の小学生の息子がトーストにピーナツバターをこれでもかと塗りたくり、高校生の娘が口を尖らせながらマッシュポテトを自分の皿に放り込む。

いささか肉付きの良すぎるステイ先のお母さんが特大のコップにこれでもかとミルクを注ぎ俺の前に満面の笑顔で置く。



「にやけた顔して何妄想してんのよ気持ち悪い」


いつの間にかこっちを向いていた〇〇子があからさまに軽蔑のまなこで俺を見ている。

甚だ心外だ。

明らかにあらぬ妄想に耽っていた俺が悪いんだが、軽蔑のまなこをモロに向けられるのはかなり凹むので多少は手加減して欲しい。


「〇〇子はやっぱ金髪長身とか…」

「そんな事ばっかし言ってるから推薦受けられないんだね」

言い終わらないうちに反論出来ないツッコミを入れるとかひどい奴だ。


「わかったよ、もう余計な口挟まないから向こうのクラスメートの写真でも持ち帰ってくれ」

大人しく折れて懇願する俺に〇〇子のまろやかな声が優しく答える。


「了解、あたしだってそんなに冷酷じゃないよ」

にっこり笑顔で続ける。

「美形限定で撮りまくってくるよ」

頬を緩めかけた俺に。

「掘りの深い欧米男子嫌いじゃないし」


学校の推薦事由に難が有ると見た。

職員室に抗議に行こうかと思ったが、門前払いを喰らいそうな気がするので〇〇子を睨んで口をつむぐ。







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