同調圧力
「今日は一緒じゃないんだ?」
下校途中の交差点。信号が青に変わるのを待つ俺に後ろから声を掛ける□子。
「?」
「〇男君だよ、良く一緒に居るじゃん」
「ああ、まあな」
曖昧な返事を返す俺に並んで歩き、声を落として語り掛ける□子。
「まあ分かるけどさ」「〇〇君、風紀委員だもんね」
□子が言っているのは話題に出ている〇男が、いわゆるいじめられっ子で。風紀委員の俺が傍に居る事で、いじめの防波堤になっているような雰囲気があるからだ。
とは言っても、明確ないじめ行為と言えるものが有る訳でも無く。
どちらかと言えば冷やかしの対象、といった扱い。
風紀委員としても、精々「その辺にしとけよ」程度の案件で注意もし辛い。
風紀委員になるまでクラスにいじめが存在するなど気づきもしなかったが。
気を付けて見ていれば、限りなく灰色な、何とも言い難い状況と言う奴がそこここで見受けられる。
「□子は同調圧力とか気にしないのか?」
特に返事も期待しないで聞いてみる。
「うーん、あんまり興味無いかな?」
言葉通り如何にも興味無さそうな口振りに苦笑する。
「独立心旺盛なんだな」
「何それ」
苦笑して返事する□子はそういえばいつも飄々としている。
いじめる側にもいじめられる側にも居ないタイプだ。
改めて□子の姿を見れば、飄々とした性格に似て真っすぐに背筋も伸びて清々しい印象。
「これといったいじめでも無いけどさ」
ゆっくり歩きながら話を続ける。
「今時言う同調圧力って奴の所為かと思うんだよな」
「うん」
「〇男君からかってる人達も別に悪気は無さそうだしね」
「一人がなんかやらかすと、周りが同調することで安心しようとするみたい」
「うん」
飄々と返事する□こをついまじまじと見つめてしまう。
こいつこんな子だっけ?。
「あんまり見られると照れるんだけど」
言われて気付けば、□子の頬が少し赤い。
「ご、御免…」
気付いて俺も意識したのか顔が熱くなる。
「〇〇君も顔赤いよ?」
俺の顔を覗き込んだ□子が微笑んで言う。
「同調圧力だよ」
訳の分からない返事で誤魔化す。




