産休
「〇子がか?」
「あたしが誰の子供産むって言うんだっ!」
荒ぶる〇子の振り回す教科書の嵐を手で制止しつつなだめる。
「冗談だってば!」
「保体の〇川先生だよ」
ようやく〇子の手から教科書を取り上げ真相を聞き出す。
既に2児の子持ちの〇川先生。
保体の教師が3人目というのはどう言ったものか言葉に困るが。
目出度くは有っても非難に値する事ではないのは確か。
「身を持って保体の重要さを俺達に教えてくれてる訳だ」
口さが無い男子が叩く軽口を女子が窘める。
「でも産休とか羨ましいよな」
何の気なしに呟いて女子の非難を浴びる。
「何言ってんのよ出産の苦労分かってんの?」
「そうよその後の育児の大変さも」
「家事と子育て、旦那というおっきな子供の世話まで」
集中砲火を浴びる。
こんな時我がクラスの男子はてんでだらしない。
俺に助け舟を出すどころか、触らぬ神に祟りなしとばかり距離を置きやがる。
「まあまあ」
さっきまで先頭に立って荒ぶっていた〇子がみんなを宥める。
「まだ子供の〇〇君をそんなに責めちゃ可哀そうだよ」
庇って貰えるのは嬉しいが、子供って。
「それに、この中の誰かがいずれ○○君の為に産休取らないとも限らないんだしさ」
〇子の言葉に顔を見合わせた女子達。
何か言いたそうな表情を交わして、でも何も言わず自分の席に戻っていく。
いや、この対応、どう受け止めていいのかかなり反応に困るんですが…。




