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春が青い  作者: 志村巧
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七夕

「運命って信じる?」


珍しく帰りが一緒になったクラスメイトの〇紀と並び歩いていると、唐突な質問。





挿絵(By みてみん)


「たなばたの とわたるふねの梶の葉に いくあきかきつ露のたまづさ」

唐突な質問に続いて唐突な和歌?を口ずさむ〇紀。


思わず立ち止まり、まじまじと〇紀の顔を見る。

「???」


苦笑して俺の顔を見返す〇紀。

「今日七夕だよ?」

言われてハタと思い出す。


そもそも七夕だからと言って、我が家では何もしないし、我が町でも特に行事も無い。


「男の子は特に思い入れも無いのかな?」

ぼそりと呟く〇紀の横顔に、感じた事も無かった女子らしさを見てどぎまぎする。

「今のはね、昔の人が会えない思い人に恋文を送った歌なんだよ」


僅かに頬を染めてそんな事を言う〇紀に驚きつつ、返事を返す。


「洒落た事知ってるんだな」

ゆっくり歩みを進めながら話を続ける〇紀。

「受験には役に立たない雑学だけどね」自嘲して見せる。


「牽牛と織女だっけ?」

「うん、彦星と織姫とも言うね」


「一年に一晩しか会えないとか」

「あたしだったら耐えられないな」


特に親しくも無く、碌に話もしたことも無いクラスメイトだったが、七夕という時節の効果か、吊り橋効果でもないだろうがロマンチックな話を聞かせる〇紀の横顔に、見たことも無い少女の影を見せられて、急速に今日が七夕なんだという実感が湧いて来た。


ふと思って質問する。

「〇紀には会いたい彦星居るのか?」


一瞬立ち止まり掛けた〇紀が大きく一歩踏み出して笑顔で答える。


「ナ、イ、ショ」


こいつ居やがるな。

さては七夕に思い人の事考えてて、誰かに話したくなってたまたま隣歩いてた俺を餌食にしやがったな。


俺も早く織姫見つけないとな。


「今夜、晴れるといいな」

「うん」

久しぶりに星空でも見上げて見るか。





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