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春が青い  作者: 志村巧
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手紙

「手紙?」

「うん、手紙」

「誰に?」

「転校してった〇枝にだよ」





挿絵(By みてみん)


正直男子の俺には友人に手紙を出そうなんて発想がそもそも起きない。


「慣れない学校で淋しい思いしてるかもしれないでしょ」

それはまあ言う通りかもとは思うが。

SNSもあるんだし、わざわざ手紙書く必要があるのかと考えてしまう。


こっちの気分を察したのか、頬杖をついてノートに何事か書き込んでいた〇子が顔を向ける。


「男の子の〇〇君は手紙なんてと思うかもしれないけど」

一拍置いて素早く一行書き加える。

「手紙ってね、女の子には伝わるものがあるのよ」


「伝わるもの?」

言わんとすることが解らず聞き返す。


俺の質問に苦笑を返して、説明する。

「〇〇君もいずれは女の子と付き合うんだろうし、覚えていた方がいいよ」

含み笑う。

「男の子ってさ、たとえ口約束でも、男と男の約束とか言っちゃって凄く大事にするじゃん?」

「ああ、確かに」

至極納得して頷く。

「御免ね、女の子にそれ通じないから」

共感されたのかと思ったらいきなり梯子外された。


「女の子ってね、形ある物欲しがるんだよ」

一瞬視線を落とし、噛みしめるように俺に言い聞かせる。


〇子の言葉が教室の縁を巡ってぐるりと俺の周囲を周って耳に届いた様な感覚。

思わず〇子の顔をまじまじと見てしまう。


「〇子も形ある物欲しいと思うのか」

何の気なしに漏らした言葉に〇子が笑顔を上げる。

「そうだよ?わかってくれた?」

「え?」

流し目をこっちに向ける〇子。

「そういう訳だから君も手紙書きなさい」

「て、手紙って誰にだよ!」狼狽える俺。


「取り敢えずあたしにでも」

「隣のお前に何手紙に書けってんだよ!」


「あたしが相手じゃ書く事なんぞ無い、と?」

意地悪い笑みを浮かべる〇子に睨みをかえしつつ、なんて書こうか考えている俺も大概ちょろい。

何が楽しいのか、〇子は満面の笑み。




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