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春が青い  作者: 志村巧
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お祭り

やばいやばいやばい。

お父さんお母さん小生、よわい17にして昇天するかもしれません。

先立つ不孝をお許しください。




「何やってるのよ、ちゃんと歩いて!」

〇子の叱咤が耳を打つ。


目を瞑ったまま歩けとか無茶にも程がある。


「目を開けたら殺すからね!」

「ええっ!そこまでの事なのか」

「うるさい!〇〇君がジロジロ見るからでしょうが!」

「そんな~!俺が悪いって言うのかよ~」

「そうよ、全部〇〇君が悪いの!」

「わかったらキリキリ歩きなさい!」


そもそも夏祭りに友達と示し合わせて合流する約束をしただけなのに。


駅前まで来た所で鉢合わせしたのが〇子。

夏祭りでクラスメートと出くわすなんぞ珍しくもないが、何を血迷ってか浴衣に髪をアップにして、見た事の無い〇子の姿。


思わず「お前誰だ?」

声を掛けてめつすがめつ眺めたのがお気に召さなかったらしい。


「見ないで!」

「目を瞑って!」

ジロジロ見たのは俺が悪かったが、これから祭りを見に行こうというのに目を瞑れとか。

「目が見えない状況で歩くとか相当怖いんですが」

愚痴る俺の手に柔らかく暖かい感触。

目を閉じて過敏になった嗅覚に気のせいか甘い香り。


やばいやばいやばい。

お父さんお母さん小生、齢17にして昇天するかもしれません。

先立つ不孝をお許しください。


しばし暗闇を彷徨い、甘い香りに酔いかけた俺の耳に柔らかな声。

誰だこの柔らかな声の主。


「10数えたら目を開けていいから」

言葉を残して甘い香りが遠ざかっていく。

目を開ければ交差点の向こうの神輿に向かう白いうなじとオレンジの浴衣。



誰か教えて下さい。あの白いうなじと柔らかな声、暖かな指の持ち主の名前を。






挿絵(By みてみん)



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