ロックンロール
「先輩退学なるんだって?!」
〇子の叫びにどよめく教室。
「子供出来ちゃったんだって」誰かが答えて、静かに生徒たちの間に衝撃の波紋が拡がる。
「後一年で卒業なのに…待てなかったのかな…」
男子の一人がぼそりと呟く。
男と女が居れば子供が出来る事などみんな知っている。
男子も女子も授業で教わるまでも無く、今時は皆知っている。
でも知っているという事と理解しているという事は全く別だ。
美人で下級生にも人気の有った先輩だけに、付き合っている彼氏が居るだろうことは皆噂してはいたが「子供が出来た」という事実が証明することがどういうことなのか、その意味が生徒たちの意識に浸透していくにつれて皆黙り込んだ。
「子供作ったんだ…」
男子の誰かが呟いた。
「やめなさいよ!そういう事言うの!」
呟いた男子に悪気が有った訳じゃないだろうが、女子の返事は叫びになっている。
みんな事態の深刻さに気が立っている。
憧れの先輩が男子と。
その事実は恐らくクラスの男子全員が想いを同じくしていたんだと思う。
別に先輩に気が有った訳でもない俺ですら打ちのめされた気分だ。
隣の教室からどよめきが壁を伝わって届く。隣のクラスでも同じような事態が起きてるんだろう。
「でも退学?」
女子の問いに答える声。
「堕ろさないって…」
「!!!」
「それで…退学か…」
教室が沈黙に包まれる。
「相手、同級生らしいけど…」
「18で子供持ってやって行けんのかな」
「ロックな生き方しやがって」
吐き出すように言った男子の言葉は恐らく男子の総意だ。
それがいいかどうかはともかくとしても。




