第2ボタン
「第2ボタン貰うのか?」
前席の〇〇子に伺う。
春になれば先輩達ともお別れだ、特に好きな先輩なども居ない俺は気楽な話しだが。嫌そもそも男子の俺には関係ない話なんだが。
女子には憧れの先輩の第2ボタンの争奪という重大にして、高校生活最大最優先の試練とでもいうものがあるらしい。
男子で在校生の俺は人の色恋沙汰を指を咥えて見ているだけだが。
淋しくないかと言われれば淋しいし、恨めしくもある。が、立場は違えど俺も同じ高校生。せめて高校生活最大のイベント位は応援してやりたい。
「あたしなんかが第2ボタン貰える訳ないでしょ」
口を尖らせてうそぶく〇〇子。
「でも好きな奴は居るんだろ?」
「そりゃあ…居る」何故か口籠る〇〇子の背中を押してやる。
「だったらやるだけやってみろよ」
「だって…」
「なんだよ、らしくねーぜ」
「どんなに頑張っても貰えないってこともあるんだよ」
俯いて呟く。
〇〇子の言わんとすることが分からずイラつく。
「そーゆーの気に食わねーな」
ついキツイ言い方になってしまうのも〇〇子を思っての事だ。
「あたしの事可哀そうだと思ってくれるの?」
窺うように上目づかいで俺を見る〇〇子に威張って答える。
「あったりまえだろ、これでもお前のクラスメートだぜ」
「じゃあ、じゃあさ。可哀そうなあたしに来年でいいから第2ボタン頂戴よ」
「そんなことでいいのか?今年誰にも貰えないぜ?」
「充分だよ」言うだけ言って向こうを向く〇〇子。
気付けばクラス全員の視線が俺を向いている。
「???」戸惑う俺の耳に。
「びっくりした、〇〇子やるねー?」
「あんな行動力有るとは」
「あたし真似できない」
彼女らの言葉の意味が解らずキョトンとする俺に誰かの声が聞こえる。
「〇〇君?予約されちゃった気分は?」
いやちょっと待ってくれまだ春には早いだろーー




