部長
「何描いてるの?」
部長の方に顔を向けていたからか聞かれた。
「えーと部長のヌードを」ふざけて答える。
「ちょっとー!」
「冗談に決まってるじゃないですか」微笑む俺に咎めるような笑みを返す□子部長。
そもそも部員も少なく、なりても居ない部長職を押し付けられた気弱な□子部長。
□子部長には大変申し訳ないが俺ら部員は部長が大人しいのをいいことにやりたい放題。勝手に外にスケッチに出る者、そもそも部室にも顔も出さない幽霊部員、イーゼルに向かっているだけでその実友人と雑談しているだけの者、俺の事だが。
「一枚位は完成させてあたしに見せてよね」
言う□子部長は来春卒業。
不真面目極まりない部員の俺だが、卒業までには一枚ぐらい描き上げて部長にプレゼントしようかななんて出来るかどうかも分らない事を考える。
「じゃあ部長モデルになってくれます?」ひやかしのつもりで言ってみる。
「!」
一瞬たじろいだ□子部長が襟元に拳をあてて答える。
「ぬ、ヌードはダメだよ」
言う部長の頬が心なしか赤い。
まずい、冗談のつもりだったのに引くに引けない部長の雰囲気。
残りの何か月か真面目な美術部員をやらなければならないようだ。




