居眠り
へたり込んでいる〇美の肩を軽く揺すって声を掛ける。
「こんなとこで寝てると風邪ひくぞ」
「!??」
目覚めた〇美が首を回して大きく伸びをする。
「お前根詰めすぎだろ」
〇美が目指しているのは名門大学。
俺なぞお呼びでない名門だが、〇美は学年1,2を争う秀才。
それでも名門狙うには俺など及びもつかない努力が必要なんだろう。
図書室の床にへたり込んで本を片手に居眠りとか。
仕方が無い事なんだろうが、見ていて痛ましい。
「そこまでして行きたいもんなのかねぇ」Fラン志望の俺は呑気に聞く。
「〇〇君は呑気でいいよねえ」まあ確かにそうだ。
「御免、今あたし酷い事言った…」
起ちあがった〇美が半分泣きそうな顔で髪をかき上げながら謝る。
「疲れてるんだよ」何と答えていいかわからず当り障りのない返事を返す。
「〇〇君優しいんだね」
返す〇美の微笑みが、疲れた中にも思いやりを滲ませて美しいと感じるのはまだ俺が子供だからなんだろうな。
「兎に角こんなとこで寝てたら尻が風邪ひく」俺の軽口に手にした本をかざして微笑みを返す〇美。
「その一言は余計だよ」
笑いながら本棚を後にする〇美の背中に心の中でエールを送っておく。




