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第二話

 村に着くと、村長が出迎えてくれた。


「おう先生、どじゃった?」

「えーまぁ大丈夫です。なんとかなりましたよ」


 経験値こそ消え去ったけれども、少なくとも村に被害が出たわけでもなく、森の方もしばらくすれば元に戻るんじゃないだろうか。霊峰ほどではないとはいえ魔境なわけだし。


 そう、魔境。この世界には元の世界とは違い魔力や魔法というファンタジーな要素があり、更にはレベルなんてものまである。魔境というのは魔物が湧く、まあダンジョンだとかそういったものだと考えて構わないだろう。


 開拓村というのも、魔境の手前に拠点があれば魔境に潜るのも楽になると言う訳で世界各地に多く存在するだろう。ただし元の世界のダンジョンにありがちな魔物が出てこないと言う訳ではなく、テリトリーでこそあるものの稀にというには多い頻度で外に出てくる。


 大きな都市だとか、それこそ王都のような場所なら高いレベルの騎士だとか探索家が多くいるので魔物が来ても大丈夫だろうが、開拓村にいるような村人だとか村付きの中堅探索家では森の魔物はまだしも、霊峰から降りてきた魔物には蹂躙されるだけだろう。


 なぜそんな危険地帯に村を作るのかといえば、まあそれを狩りに行く事が出来る連中からしてみれば拠点があったほうがいいし、国としても国力の増加のためには魔境付近の肥沃な土地に畑を耕して、しかも魔物狩りも出来るのは最高だからだ。


「いやぁ、ありゃ御山から迷い出たヤツだっただな。先生がいなきゃどうなったことやら……」

「本当かの! こりゃぁまた先生には恩が出来たのぅ」

「いやいやお気になさらず。俺みたいなのを村に置いといてくれてるだけで、こっちとしては十分にありがたいんですから」


 ある日ふらっとやってきた穀潰しを、何も聞かず何も言わずに村に住まわせて飯までくれるのだから、最低限の労働というものである。


「そっただ事言っても先生、村の子供から大人まで読み書きも計算も教えてくれっし、都市のむつかしー算術だのなんだのも知ってでねぇか」

「そうじゃの、子供たちもこんな村じゃ勿体無い位に賢くのうて、全部先生のおかげじゃろうに」

「いやぁ、その位はまぁ、ね?」


 この世界でしばらく前まで過ごしていた場所や前世的に考えても、その位なら朝飯前というものである。むしろ畑も耕さず勉強を教える時間以外はのんびりと寝たり調薬したりと自由に過ごさせてもらっているこちらとしては、一般常識からは外れているとわかっていても恩を感じる位な訳で。


「「「あー、せんせーおかえりー」」」


 なんて話をしていると、村の子供がわらわらよってくる。


「せんせーもりでなにしてきたのー」

「まものとかいたんでしょー」

「おべんきょーおしえてー」

「あーこら、引っ付くな」


 寄って来るや否やしがみついたりぶら下がってくる子供たち。体力のある方ではないこちらとしては中々大変な思いをしつつ、わいわいと騒ぐ子供を引き連れながら村長に目線を送ると、にこやかに微笑まれるだけだった。

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