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2-4

 ボスは開口一番、そう言って苦笑した。さぁ、とアクルも思わず苦笑を返す。


「いやさ、これ、見てみてよ」


 ボスが机の上に置いてある紙を、ぺらりと表に返した。かっちりとした字が書いてある。ユーナギの字だ。アクルは紙を手に取ると、そこの文面を読んだ。意外な報告に、えっとアクルは思わず声を上げる。

「招待状を上げた人って、ウラウだったんですか、リッツのボスですよね? あの大男」

「そう。お前、よく名前を覚えてるな」


 すげぇよ、とボスが笑う。そうですかね、とアクルは照れたように頬を書くと、報告書をもう一度目で追った。




『ボスへ J-322の詳細

 招待状の元の持ち主は、先日エストレージャに奇襲しに来た集団のリーダーです。

 ボスと門の近くで戦った、図体のでかい男です。

 すぐにお分かりいただけると思いますので詳細は省きますが、知りたい場合はご一報ください。イラストと共に再送信致します。

 なお、来客と元の持ち主の血縁関係の可能性は低いと考えております。

 ユーナギ』




「あいつ、何やってるんだろうな」

 ボスの指したあいつ、はウラウのことだろう。図体だけはやたらにでかかったが、この前屋敷に奇襲を仕掛け、しっぽを巻いて逃げだしたところをボスに阻まれ、懲らしめられた輩だ。


「血縁関係は無いようだけど、またウラウはなんかやらかしてるのか――改心してないのかね」

「どうでしょうね。一応ギルに調べてもらいます?」

「んーそうだなぁ、ローシュが怪しげな動きを少しでも見せたら、かな。ローシュは、誰にもらったかを語りたがらなかったし……」

「強奪だったりして」

「ローシュが? そんな力があるのかね……」

 困ったようにボスは眉間にしわを寄せると、小さく「わかんねぇんだよなぁ」と呟いた。

「嘘はついてないんだよね」


 という言葉に、アクルは安堵する。空腹を装った侵入者というわけではなく、本当に腹がへってすがりついてきた奴だったのだ。


「ウラウがどんな説明をしたか、が気になるな。飯を食わせろなんて、なんだか変だ……まぁ、ウラウが俺たちにあまり気を使わせたくなかった、と考えるのが妥当か?」

「そうですねぇ」

 ボスはユーナギのメモをさらにもう一度読み返しながら、ボスと同じタイミングでため息をついた。

「一応、俺は彼に対して、下っ端の下っ端だからこの屋敷についてはなんも知りませーんって態度を取りましたけど」

「おう、ありがとう。やっぱりそれが、来客には一番いいよ。知らぬ存ぜぬで」

 ボスはそう言うと、そうだと何かを思い出したように立ち上がり、伝書鳩の近くから一枚の紙を持ってきた。

「こういうの、一応みんなに送っておいた」

 アクルは紙を受け取った。ユーナギの字とは対照的な、柔らかな文字が走っている。



『みんなへ

 先ほど、来客が現れました。招待状を持った来客です。

空腹の様子でしたので、ご飯を与えました。

仕事もなく、三日ほど泊めてほしいとのこと。

嘘をついているようすは無かったので、承諾しました。

会いたくない人は、最長三日だけ我慢してください。申し訳ない。

何かあったら、いつでも連絡してください。

レイカ』



「いいんじゃないですか?」

 アクルは微笑むと、はい、とボスに紙を返した。大丈夫かな、とボスは心配そうに呟く。

「アニータとかギルとか、警戒心の高い奴はには悪いけど」

「仕方ないですよ、来客ですし」

「だよね、ありがと」

 ボスは少し安心したように頷くと、紙で顔を隠し、はぁとため息をついた。

「深く考えちゃ、だめなのかねぇ」

 ボスの困ったような声に、確かに、とアクルも頭をかいた。

「ニールの件から、少し警戒が強くなってるかもしれないですね」

「な、何が来ても怖くなっちゃうよな」


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