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Ⅰ-3

 高木燐華・・・、それは俺の幼なじみである女の子だ。

 ・・・いや、そもそも女の子って単語は何歳まで対応しているのだろうか?


「もしもーし、聞こえてますかー?」


 むしろここでは女性と紹介した方がよいのだろうか。しかし、成人してないまだ学生の身である彼女を女性というのもおかしな話なのではないだろうか。


「おーい、どしたー?無視しないでよー」


 そういえば、小学生は児童と呼び中高生は生徒、大学生は学生、というように区分していると聞いたことがある。つまりここから導き出される結論として、女子生徒と呼んだほうが正しいのではないだろうか。


「・・・おい・・・」


「あ・・・すみません」


 ついにその女子生徒さんが黙ったままの俺にしびれを切らして何だか怖い顔で睨んできたのでそろそろ現実に戻るとしよう。

 ・・・いやだっていきなり現れるんだよ?ちょっとぐらい現実逃避してもいいんじゃないでしょうか。

 今まで人がいる気配なんてなかったしさーこれがおいしい展開なのかもしれないけどさーさっきの行動については俺が正しい判断だと思うんだけどなー・・・。 

 そんな風にまた現実逃避し始めた俺の様子に呆れたのか、彼女は溜息一つついてドアの前に突っ立っている俺を軽く押しのけて手に持っていた鍵を鍵穴に差し込みドアを開ける。


「屋上来たんじゃないの?そんなところで突っ立ってても時間の無駄だよ」


 そう言いながら彼女は屋上に通じる扉を開け放ち、流れ込んできた風に煽られる黒色の長髪を手で押さえながら一人先に行ってしまった。


「・・・うん、なんか色々とごめんよ。とりあえず本来の目的に向かうとしますか・・・」

 

 彼女には聞こえないであろう声量で呟きながら彼女の後を追うことにした。




「んー。やっぱり屋上は風が吹いてて気持ちいいわー。これは私に感謝するしかないんじゃないでしょうか?ねー雄太くーん?」


「あーそうだな、感謝感謝ですー燐華さんマジリスペクトですー」


「それ絶対感謝してないでしょ、棒読みやめい」


  ひとまず屋上に足を踏み入れたわけだが、その直後に燐華から『私に感謝しなさい!』みたいなご通達があったのでそれに応えたわけだが・・・。はて、何が不満だったのやら。

 ・・・でもやっぱり彼女の反応が怖いので少しだけ視線を向けたが、向こうは少しうつむき気味に何か言っている気がした。

 

「燐華、今何か言った?」


「ん?んー・・・。いや、別になんもないよ」


 ふむ・・・彼女はわりとハッキリと物事を言うタイプなので言い淀むとは珍しいな・・・。

 よほど聞かれたくないのか、それともどうでもいいことなのか・・・。

 

「それよりさ雄太、こうやって二人っきりで話すのいつぶりだろうね?」


 と考えてた俺に彼女は話題を変えるかのようにまっすぐこちらに視線を向けながら問いかけてきた。

 二人っきりかー・・・。


「そういえば久しぶりだな。誰かと一緒に話すことはあったけど二人っきりはなかなか無かったな」


 そうなのだ。一応幼なじみではあるのだが実は今まで同じ学校に通ってたのにも関わらず、一度も同じクラスになったことがないのだ。

 クラスの壁というのは思ったよりも深いものだと思う。

 壁一つ隔てているだけなのだが、別のクラスの生徒と話す機会は意外と無いものだ。

 人は無意識のうちに自らを守るために何かしらに所属するものだ。

 身近な例としては家庭。大きなものとしては国家と言ってもいいだろう。

 それが今回の場合、クラスという組織に所属する形になっていたのだ。

 その結果、自らが意識せずとも他のクラスに所属する者を敵・・・とまでいかなくても他人などと思うようになるのではないだろうか。

 そのような意識下では、たとえ枠組みと関係ない場所であってもその意識が自らを縛ってしまう。

 そんな状況だったため、彼女と話す機会はなかなか訪れなかった。


「まあ、こういう状況だけども今こうやって話せているのはありがたいことなのかもな・・・」


 思わず口からぽろっと言葉が出てきて、しまった!と思っても後の祭り。彼女にはちゃんと聞こえていたようで、ニヤニヤしながらこちらを見ている。

 くそー・・・今のは調子づかせるから聞かれたくなかったんだけどなー・・・。


「えーなーに?私と話せるのがそんなに嬉しいのー?もう、雄太は照屋さんなんだからー」


 ・・・うぜぇ・・・。


「まあ、私は雄太とまさか会うと思わなかったからさ、一番の感情としては驚きが先に来るかな?」


「そうだろうな。俺も最初は驚いたよ。学校に来ているのは俺だけだと思ったからさ。燐華はどうしてここに来たんだよ」


「私かー・・・。私はさよならを言いに来た・・・というところかな?」


 彼女は顔にかかっていた前髪をかきあげながら少し寂しそうな、それでいて何かを睨むかのような目をしながら答えてくれた。 

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