プロローグ
初めて書いたので、下手糞です。
誰にも読んでもらえていないようでしたら消します。続きも書きませんので、あしからず。
つまり評価を宜しくお願いします
4月8日。
「…気象庁は、先週四日に太平洋沖で発生した台風が、今日昼頃にも関東に上陸することを発表しました」
女性アナウンサーが何か喋っていた。朝のニュースは淡々と進行してゆく。
「…台風は今後、強い暴風域を伴って関東地方を北上していくと思われています。既に上陸している伊豆諸島では、引き続き大雨や高波に警戒してください」
俺、高沢翠人は眠い目を擦ると、こんがり焼けた食パンを口の中に放り込んでゆく。リビングから窓の方を向けば空は隆々とした厚い雲に覆われ、薄暗い雰囲気が住宅地全体に落ち窪んでいるようだ。
「ったく、高校生活初日がこんな天気なんて…」
「お兄ちゃんはツイてないねぇー」
横の席で口を挟んできたのは、妹の緋奈だ。既に身支度を済ませたのか中学校の制服を着て、頭のツインテールをゆらゆらさせながら、珍しく牛乳を飲んでいた。
そういえば昨日の夜、俺が洗面所に歯を磨きに行ったら、こっそり胸が無いことを嘆いていたな、コイツ。ま、応援してやるか。
「分かってる。今自分で言おうとしてたとこだから」
煩悩を表に出さぬよう当たり障りのない返事をしておく。兄も大変だ。変態だ。
「それもどうかと思うよ?独り言ばっかり言ってると脳の老化が余計に進行するんだって」
「はいはい。というかお前だって今日から中学生なんだし、こんな天気じゃお互いさまだろうが」
「いやー私的には正直あんま関係ないし。今日もタクチケ使って登校するよ」
「あぁ、お前の将来が心配だよ」思わずため息が漏れた。
そう、高沢緋奈というこの妹は自分の美しい容姿を利用して小学生時代はクラスの男子をたぶらかし様々な要求を通してきいるのだ。
漫画、ゲーム、お菓子…。最初は子供っぽいものばかりだったのだが、卒業するころには金品までせがんでいたようで、今ではタクチケなんて言い出す始末なのだった。
「お前さぁ、クラスの女子に嫌われるぞそれ」
「大丈夫だよ。今まではバレないようにやってきてるし、教師に見つかっても、男だったらどうにかなるし、あと相手が女だったらソイツの変な噂でっち上げて拡散して回ればいいし」
「…こ、怖ええ」
マジで敵に回したくねえ。というかもはや気持ち悪い。
「だいたい中学校なんて小学校と同じようなグループの集まりなんだから。ちょろいちょろい」
「俺、お前のことマジで嫌いになりそうだわ」
すると緋奈は急に潤んだような瞳でこちらを見つめると、うっすらと頬を赤らめ、薄い唇から声を漏らした。
「う、嘘。わたしはお兄ちゃん大好きなんだよ?そんなこと言われたら、わたし…」
…。こ、怖ええ。
テレビは相変わらず台風についての報道を続けていた。タクチケの無い俺は傘を忘れぬよう心に留めるのだった。
俺は始業式の終わった校舎から出た。塀沿いに並んだ桜の木は桃色の花弁を風に揺らす。中には校門の前で桜を背景に写真を撮る女子生徒も見受けられた。この光景も大雨が過ぎ去れば一緒に消えてしまうのだろう。
湿った空気を肌に感じ、ふと顔を上げる。
空では、使い古された雑巾が、また水で濡らされて力いっぱい捻られるように黒い雨雲がとぐろを巻いてこちらをじっと見つめているような気がした。
四月の大雨。
ニュースで言っていた通り季節外れの台風は不穏な力を所持しているようだ。
高沢翠人が通う高校は東京の中心部に位置する公立校だ。自宅からは距離があるため、通学には電車を利用する。
今朝は慣れない満員電車でぎゅうぎゅう詰めにされながら登校したが、昼過ぎのこの時間帯は乗客がほとんど乗っておらず、空席もちらほらと見受けられた。
俺は乗ってきた場所から一番近い席に座るとイヤホンを耳にさし、音楽を聴き始めた。ゆっくりと目をつぶる。
高校に知り合いが一人もいない。
だからって何も怖くない。
何故なら俺に、友人などできないのだから。
山手線はホームからゆっくりと離れ、重い車輪は悲鳴を上げながら、ゆっくりと回転し始める。これが
高沢翠人の認識した、現実世界の最期だった。
・
銀色の車体はボコボコにされ、乗客たちは外に放り出されている。
「なんだよこれ」
外は暗かった。瞼を閉じているのと何ら変わりはなく、景色は何も映らない。
「なんだよこれ」
高沢は初めて、深淵というものを目の前に捉えた。
「なんだよこれ」
つまるところ、深淵もまた、彼の事を捉えていた。
「なんだよこれ」
この『事故』は始まりだった。
「なんだこれはああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
4月8日、今日をもって彼は“異世界ニホン”の住人となった。
次回から話が進んで行ったり、登場人物たちが増えていく予定です
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございました
是非、次回もよろしくお願いします