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アビスフェルノ 2

 5話くらい前のあらすじ

アマデオ君がシェリーにフラれた。

 目が覚めるとまず襲い掛かってきたのは強烈な嘔吐感だ。内臓という内臓が暴れ回り口から飛び出そうとしているような錯覚さえ覚える。激しく咳き込むと上体が跳ね動き、その振動が更に吐き気を加速させた。


 そうして何度か嘔吐えずいていると、次は頭痛が迫り来た。脳天が砕けたかというような痛みに身をよじらせて藻掻くが、それで改善する筈も無い。身体に力が入らず満足に動けもしない、それどころかまともな思考さえ持てない頭では、只々その地獄のような吐き気と痛みの嵐が過ぎ去るのを待つことしか出来なかった。


 身体を丸めて震えながらじっと耐え続け、どれほどの時間が経った頃か、ようやく嵐も静かになった。だが、まるでその代わりとでも言うように四肢の末端までもが酷く熱を持ち始める。

 全身に広がった高熱に浮かされると、オリガちゃんやファビオラちゃん、その他大勢の美女に囲まれる、酒池肉林の幻が夢心地である。



「アマデオさんの好きなベーコンですよ。チーズをかけていただきましょうねえ、さあ、お口を開けて」


 とろけたチーズが滴るベーコンを串に刺し、俺の口まで運んでくれるのはファビオラちゃんだ。ぴったりと肩を寄せて横に侍り、空いた左手は俺の腰に回している。対する俺も右肩を抱き、豊満なわがままボディの感触に酔いしれている。


「なりませんアマデオ様っ。こちらから先にお召し上がり下さい」


 次いで逆側から差し出されたベーコンにはなんと胡椒が振りかけられていた。頭に超が付く高級品である。だがそれよりも遥かに極上のスパイスは、それを食べさせてくれるのがオリガちゃんであるという事実だ。いただきます!


 美女の纏うなんとも甘く芳しい香りを胸いっぱいに吸い込みながら、豪勢なベーコン尽くしの料理、というかありとあらゆる種類のベーコンを心行くまで貪ったあとはお待ちかね。


「さあ、待たせたね仔猫ちゃん達」


「アマデオさん……」「アマデオ様……」


 うっとりとする彼女達に向き直り、今度はこっちをいただきます。ぐへへへ、ファビオラちゃんとオリガちゃんのお肉はどんな味がするのかなあ?たわわに実るファビオラちゃんの柔らかそうな肢体と、滑らかに引き締まったオリガちゃんのスレンダーボディ、こんな美味そうなものを前に、俺はもう、辛抱たまらん!



 満を持して二人の身体に手を伸ばすと、ざりざりとした冷たく硬い感触が掌いっぱいに広がって、おかしいな。女の子ってこんなに冷え性だったっけ。しばらくそうして撫でていたものは、果たして俺が寝そべる地面だった。


 幸せな幻想に彩られた夢はいつも、消え去る時に後味の悪い虚しさだけを残していく。せめてもう少し続きを、と願っても、すっかり熱の引いた身体は微睡む事を許してくれなかった。仕方がないのでざらついた地面に頬ずりするのをやめて、さて、ここはどこだろう。


 意識はまだはっきりとしないが、身体の方は随分と回復したようだ。空腹感は無視しつつ、幾分軽くなった上半身を起こし、まだぼんやりとした頭を手で支えながら、今の状況を整理する。


 周囲を見渡すと、真っ黒に塗りつぶされたような深い闇がどこまでも広がっていた。一瞬混乱したが、何の事はない、明かりが無いのだろう。つまるところ、俺はどうやら室内に居るらしい。


 暗闇の中では自分の手足すら満足に視認することが出来なかった。目を凝らして更に注意深く観察してみれば、仄かに差し込んだ光に照らし出された岩肌が覗く。ここは洞窟の内部なのだろうか、だとすれば外の明かりが届く事から出口は近そうだ。


 一先ず出口に向かってみるか、と立ち上がろうとすれば、身体中が痛みを訴える。どうやらかなりの間眠っていたらしい、俺はゆっくりと固まった筋肉を解していった。


 そうして身体を徐々に伸ばしていると、出口の反対側、洞窟の奥の方から何かが近付いてくる気配を感じる。音が反響する洞窟内に於いても足音は伺えず、代わりに二つの、青く鋭い眼光が闇に浮かび上がった。


「これはこれは。お目覚めでしたか、魔王殿」


 野郎かよ!お呼びじゃねえんだよ!いいや落ち着け、ここは冷静に行こう。聞こえた言語は人間族のものだが、公用語ではなく北部地方で使われているものだ。バルリング領を長らく拠点としていた俺にも馴染み深い。


 さて、響き渡った男の声は、丁寧な言葉とは裏腹に挑発的な色を滲ませていた。魔王殿、という部分を強調した言い方が、それに拍車をかけて聞こえる。姿の見えない正体不明の相手に、直感が警鐘を鳴らした。

 俺を魔王と呼んだということは、既にオリガちゃんと会い、話をしたのだろうか。だとすれば相手は相当に限られ、まず魔族であることは間違いない。


「ああ、何とかな。あんたがここに寝かせてくれたのか?だとしたら、迷惑かけたな」


 答えながらも、俺は念の為に身に着けている物を確認した。ハルバードと兜は落としたままのようだが、それ以外は万全である。ショートソードは、いつの間にか鞘に収められていた。


「そう警戒なさらないでいただきたいですな」


 言われてはっとなり、慌てて装備を弄る手を止める。音を立てないよう細心の注意を払っていたんだが、気付かれてしまったか。しかし、おかげで今の状況と、喋っている相手にも察しがついた。


 その僅かな音でも拾う耳の良さと、聞こえない足音。そして暗闇に光る双眸から察するに、相手は獣人族ウェアビーストだろう。だとすれば北部地方の言語を扱うのも納得できる。

 俺が気を失う前、オリガちゃんは確かに彼らを探していた。どうやら無事に見つける事が出来たらしい、ということは。


「悪かった。俺を助けてくれたのはあんたか、あんたの仲間か。とにかく助かった、ありがとう」


 どういう手法かは知れないが、きっとマンティコアの毒から俺を救ってくれたのは彼らなんだろう。礼を言いながら両手を上げ、敵意が無いことを知らせた。獣人族は夜目が利く、この暗がりでも俺の姿は見えている筈だ。


「ふむ、私達は何もしていませんが、すっかり良くなったようですな。

 では奥へどうぞ。付き人と、お嬢様がお待ちです」


 "付き人"とはもちろんオリガちゃんのことだろう。彼女が獣人族の所まで運んでくれたおかげで俺は一命を取り留めたのだ、いくら礼を言っても足りそうにない。あとで夢の続きも兼ねた熱い抱擁を捧げなければ。

 では"お嬢様"とは何者か。獣人族の女の子だろうか、美人であれば尚嬉しい。予想外に訪れたラブロマンスの予感に、高鳴る鼓動がとどまることを知らない。


 閑話休題それはさておき、奥へ、と言われても、延々と続く闇の中では前後左右の感覚すら危うい。奥に続く道なんて以ての外で、何処にあるのかさっぱりだ。灯りぐらい用意しとけよ、気が利かない奴め。これだから野郎は好きじゃねえんだ、と心の中で毒を吐くと、


「おっと、灯りなど用意した方がよろしいですかな?」


見透かされたような発言に、前言撤回、俺が悪かった。そもそも俺は松明を持参している。


「大丈夫だ、手持ちがある。火を点けてもいいか?」


 俺はベルトの背中側に挿した松明と火打石フリントを取り出して言った。

 「どうぞ」という返事を待ってから、松明に直接フリントを叩き付ける。甲高い音が洞窟の壁と天井に響いて跳ね返り、舞った火花は瞬く間に炎となって燃え上がった。松明の先に揺らめく灯りが周囲を照らすのが、暗闇に慣れた目には眩しい。


「ほう、こうも容易く火が灯せるとは。なんとも便利な物ですな」


 火に浮かび上がって、ようやく獣人の姿を確認することが出来た。同じように目を細めながら言う獣人は、白色に黒の横縞が細かく入った体毛に包まれていて、虎型らしいことが伺える。逞しい肉体には無数の傷跡があり、いかにも歴戦のつわものといった風貌だ。


「ドワーフ族が使う松明だ。昔そっちの方を旅していた時に貰ってね」


 自分の手柄でも無いというのに、俺は少し得意げである。だがそれも仕方ない。誰だって、どんな理由だろうが関心されれば悪い気はしないだろ?相手が女の子ならもっと良かったんだがな。


 ドワーフ族は見た目に反し手先が器用で、鍛冶工芸に秀でている。基本的に鉱山に掘った洞穴を住居とする事の多い彼らが、より簡単に灯りを点す為に作ったのがこの松明だ。

 先端には彼らの山で採れた魔鉱石が布で縛り付けられていて、火の性質を帯びたそれは削られた時に火花を放つ。その火花に鉱石中の魔素が反応して燃焼する、という仕組みらしい。かつてアルカナにはそう説明されたが、俺はいまいち理解していなかった。楽に火が点く、という事実だけ分かれば充分だ。


「それでは、案内いたしましょう。こちらへ」


 松明を掲げながら虎型獣人の後を追う。

 俺が歩くと革のブーツが地面を叩き、奏でる音が洞窟の中を縦横無尽に跳ねまわるのが小気味よかった。それに対して虎型は裸足であり、無音で進む。とは言っても、魔族には靴を履く文化が無い、という訳ではない。


 獣人族には大まかに二通り、変身する者としない者が居る。前者は普段、人間にほど近い容姿をしていて、有事の際により強く獣の性質を持った形態に変わるのだ。

 後者は獣の要素が濃く浮き出た状態こそが自然体であり、生まれた時からその姿らしい。器用さ等は前者に劣るが、その分戦闘能力に優れた、生まれついての戦士という奴だ。


 虎型は後者のようだった。靴を履かないというよりは履く必要が無いのだろう、全身を覆う毛皮と皮膚は頑丈で、そう簡単には傷つかない。凹凸の激しい洞窟の岩肌も、彼らからすればなんてことは無いのだ。

 

 しかし真に恐るべきはその身のこなしである。いかに靴を履いていないとは言え、地面に足をつければ音は鳴る。だがこの虎型は、大柄な体型にも関わらず、流れるような足捌きでその足音を極限まで消していた。それでいて歩く速度は相当に早く、そこにも熟練の業を感じる。

 

 相当な手練れだな。率直にそう思った。

 

 その洗練された歩法に感服し、それを真似てみようとして、俺の足音は更に軽やかで楽しげな音に変わった。カツーンカツーンと、心なしか間抜けな音が洞穴いっぱいに響くのが、なんとも悲しいやら情けないやら恥ずかしいやら、少し涙ぐみながら、真似たことを後悔した。これだから野郎は嫌いなんだ。


「こちらの奥です、しばしお待ちを」


 そうして八つ当たりをしている内に最奥についてしまったようだ。細い通路の先は開けた空間に繋がっていて、そこにオリガちゃんと獣人娘がいるらしい。曲がりくねった道を歩き始めてからそう時間は経っておらず、存外、出口からは近そうだ。


 虎型が先に入り、俺はその入口で待たされた。内部はそこそこの広さのようで、灯りが届かず、様子を伺うことが出来ない。


 代わりに彼らの話し声は聞くことができた。一際大きい室内にたっぷり反響してから、くぐもった音がこちらまで響いてくる。しかし聞いたところで理解できない言語は、ガウガウワウワウ、獣人族特有のものである。


 そんな獣の鳴き声にも似た会話ともつかないやり取りをしばらく聞かされたあと、再び虎型が通路までやって来た。


「待たせましたな、魔王殿。お入りください」


 先に入れと手で促され、ついにやって来た"お嬢様"との対面の時にちょっと緊張。おずおずと中に入ると、松明が照らした室内は思っていたよりも広く、壁際には、恐らく保存用だろう、塩漬けにされた肉がいくつも積み上げられていた。


 中央には二人の獣人が並んでいて、変身型だろう、黒髪で細身の男と、その隣には、黄褐色の体毛に赤茶色の丸耳、そして耳と同色の髪を肩まで生やした少女。猫科動物を彷彿とさせる顔の少女は、腕を組んでこちらを品定めするように見つめているがそんなことはどうでもいい。


「お前ら……オリガちゃんに何をした」


 発した声は自分でも驚く程冷たく、孕んだ怒気が空気を震わせた。

 

「なに、ちょっと邪魔だから寝かしつけてやっただけだよ」


 オリガちゃんは、植物の蔓だろうか、紐状のそれで縛られ地面に横たわっていた。全身傷だらけで、意識は無いが、死んでしまったというわけではないらしい。細々と呼吸をしているのが、辛うじて見て取れた。


「それよりも魔王さんよ、アンタ、自分の心配をしたらどうだい?」


 少女の不穏な言葉に反応し、直感的に後ろを振り向いた。部屋の出口には虎型が立ち塞がり、鋭い視線で射殺すようにこちらを睨みつけている。つまり、退路を塞がれたのだ。

 元よりオリガちゃんを助けるまでは逃げるつもりも無かったが、これではオリガちゃんを抱えて一直線に逃走する、という訳にもいかなくなった。意を決して少女に向き直り、怒りを抑えろ、短絡的になるな、まずは話し合いだ。


「どういうことか、説明して貰いたいもんだな。あんたらが俺を助けてくれた、って訳じゃなかったのか?」


「アタシ達がアンタを助ける理由が、ドコにあるってんだ」


 言ったのは少女だ。つまり、俺はまんまとここまでおびき寄せられてしまった、ということだろうか。

 俺を騙したのか!虎型を見れば悪びれた様子も見せず、大仰に肩を竦めながら


「俺は、何もしていない、と言った筈だが?魔王殿」


と一言。確かにその通りではあるが、だとすれば俺を毒から救ってくれたのは、果たして。


「確かにアタシらの一族には、毒に抗体を持つ者もいる。そいつらの血液を使って血清を作れば、そんじょそこらの魔物の毒なんか裸足で逃げ出すさ」


 アンタの付き人もその血清が欲しかったみたいだね、と続けながら、こともあろうに!こいつは!


「だが、なんでアンタの為に血清を渡す必要がある?ふざけてんじゃねえぞ!」


 オリガちゃんの頭を、その足で踏みにじりやがった!


「この女、先代からの付き人だかなんだか知らねえが、アンタみてえなひ弱な、しかも人間なんかを魔王に仕立てあげるだって?アタシらを舐めんのもいい加減にしなッ!」


「もういい、黙れ」


 煮え滾った血液が全身を巡り、視界は赤く染まって、狙うのは少女だ。今すぐその汚い足をオリガちゃんからどけろ!俺は既に冷静さを失い怒り心頭、少女に向かって怒涛のように駆け出すと、次の瞬間には壁に激突していた。


「がッ!」


 岩壁からずるりと落ちた俺の身体が地面に付くと同時に、黒毛の狼男──先程の男が変身したのだろう──の足が俺を踏みつけた。恐らく俺を突き飛ばしたのもこいつだ、しかしその動きを目で捉えることすら出来ず、クソ、速度が違いすぎる!


「お嬢に手は出させねェよ」


「う、ぐ!」


 強く背中を圧迫され息が押し出される。なんとか逃れようと全身を使って抵抗しても、狼男は脚一本で俺の動きを完全に封じていて、身体能力の差を思い知らされるばかりだ。


 無様に地面に這いつくばった俺に近寄って来るのは先の少女だ。少女は変わらず腕を組みながら俺を見下して、尖った牙を覗かせるように口を開いた。


「そう慌てんじゃないよ。何も命まで奪おうって訳じゃない。アンタも、この女もね」


 いくら藻掻いても体力を消耗するだけだと悟った俺は、一先ず暴れるのをやめて話に集中する。幾分緩んだ圧迫感が、呼吸を楽にした。


「放っとけば死ぬだろうと思ってたんだけどね。まさか、自力でマンティコアの毒を跳ね除けるとは。人間にしちゃあなかなかやる、その根性に免じてアンタ達を助けてやってもいい」


 自分達が生殺与奪の権利を握っていると疑わない、どこまでも上から目線なその物言いに腹が立つ。腹が立つが、それだけだ。実際、それは紛うことなき事実であり、だとすればここで怒りを露わにしている余裕は無い。優先するのは、俺とオリガちゃんが生き残る事だ。顔に押し付けられた冷たい地面の感触が、俺の頭を少しだけ冷静にさせた。


「条、件は」


 淀みなく喋るには酸素が足りない。言葉というよりは呻き声に近いそれを発すると、「離してやんな」という少女の声と共に背中が軽くなった。数度咳き込み、荒い呼吸を整えてから身体を起こす。右手と膝は、地面に付けたままだ。


「条件は、何だ。タダで開放するって訳じゃないんだろ?」


 そのつもりがあるなら、虎型が出口を塞いでいる筈が無かった。


「モチロンさ。でも別に何かをして欲しいってんじゃなくて、むしろその逆」


 少女は組んでいた腕を解いて、俺の顎をクイと持ち上げ、顔を寄せた。獅子を思わせる鋭い眼光が、俺の視線を貫くように見つめている。

 

「アンタが魔王になるのを辞める。それだけさ」


「どういう、ことだ?」


 我ながら白々しい発言だな。そう思った。その答えは既に、少女が一度口にしている。


「アタシ達は人間が、いいや人間だけじゃない。人間も亞人も、人族全てが憎い。

 争い合っていたからじゃない、もっと本能的な何かで、アタシ達は"そう出来てる"んだよ」


 今だってアンタを喰い殺してやりたいくらいだ。凶暴な牙を見せつけるように言い放つ様が、背筋に嫌なものを走らせた。


「その中でもとびきり軟弱な人間族ヒューマンが、魔王になるだって?冗談じゃない。アタシら一族が先代に従ってたのは、先代が強かったからだ。"より強き者に従う"、その一族の掟にこそ従ってたんだ!」


 言いながらもどんどん語気は荒くなり、終わる頃には俺の胸ぐらを掴んで引き寄せ、食らいつくようにして叫んでいた。

 オリガちゃんと一緒ならば魔族と争うことはないだろう。そして魔王になった暁には、俺は魔族の女の子全てにモテているに違いない!その考えがどれだけ甘かったかを思い知らされる。


「同族の飢えがどうとか言ってたがな、そんなもん、知ったこっちゃねえんだよ!弱けりゃ死んで、強けりゃ生きる!それだけだろうがッ!」


 それは最早怒りというよりも、信念だとか矜持だとか、生き方の問題だ。つまり俺にとっては"モテる為に生きる"ことと同じ。それを踏みにじられ、捻じ曲げられるようなことが、許される筈もなかった。


「だからな──」


 短く区切って、息を吸い込んだあと


「アンタ、魔王やめろ」


真っ直ぐ俺の眼を見据えて言ったその瞳には、確固たる獣人族の誇りと、研ぎ澄まされた敵意が炎を灯していた。

 長くなったので区切って投稿。続きは明後日くらいにでも。

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