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海木蛇 厳座

 きょきょきょきょっ。

 きょきょきょっ。



 ひぃぃ――――


 こんな宵に鳥の声を聞くと、身が縮みます。


 夜鷹?

 そうでございます。

 忌々しい夜鷹でございます。

 死を呼ぶあの凶鳥め・・・・・・


 

 気を取り直して、ささぁ、まずは御一献。

 えっ?いらない?なぜでございます?

 この鰭酒がお気に召さないと?

 魚のヒレだろ?

 そりゃあ、魚と申せば魚でございますが、何か問題でも?


 えっ、怒っているのか?

 い、いいえ滅相もございません。

 こちらから頭を下げてお越しいただいた客人に対し怒るなど、有ろうはずもございません。

 これはですな“瑠璃家(るりいえ)の使い”と申しまして、海の神の使者とも呼ばれる、それはありがたい御眷族様の鰭を頂戴いたしまして、島で仕込んだ酒に漬け込んだ、ありがたいものでございます。


 島ってどこだ?あんたは江戸の人間だろうと仰いますか?

 葛城様(・・・)は細かいことをお気になさいますなぁ。

 それは……それ、手前どもの故郷でございます。

 其処より取り寄せました神前に捧げる御神酒でございます。お客人をもてなすにはなによりの――――えっ?

 生臭い?


 ちっ。


 舌打ち?

 滅相もありません。

 こちらより頭を下げて来ていただいたお客人に向かって舌打ちなど――――ちっ。

 これは何分にも、手前の口中の舌が短きが故に立ちし音。

 御気分を害されたのならば申し訳なきこ――――えっ?

 苛ついているのか?

 葛城様は本当に細かいお方ですな!

 苛ついてなどいないと申しており――えっ?

 お酒は呑めない?


 あぁ・・・・・・下戸でございますか――――ちっ!

 なれば致し方ありませんな。この瑠璃に輝く鰭酒は手前でいただきとうございます。


 ぎゅぴり。

 ぎゅぴり。


 じゅりゅ――――


 我らでさえ滅多なことで戴くことの適わぬご進物をくれてやろうというのに勿体ない。

 これだから――――えっ?

 なにか聞こえました?

 なにも聞いて無い?

 それは宜しゅうございました。お互いに知らぬが花と申すこともございますからな。


 えっ?生臭い?


 失礼な!

 手前ども、魚を干して売り捌く干物屋でございますれば、至極当然の事。

 それを先ほどより、持て成しの為に用意した宴席の品に手も付けずに言いたい放題!

 一口でも食べれば、たちまちに我らが“くとぅりゅぶ”の・・・・・・えっ?

 魚は苦手?


 ちっ!


 手前どもが身を切る思いで用意した御眷族の――――

 あんっ?

 そろそろ“客”が来るのだろ?

 依頼の話をしろ?


 こほん。

 そ、そうでございますな。葛城様が依頼をこなしてくれさえすれば後はどうにでも・・・・・・


そんなわけで、幕末陰聞シリーズ外伝(?)幕末異聞です。

同志・毒島伊豆守さんの復活を記念して書き始めたのですが、すっかり時間がかかってしまいました(^_^;)

 毒島さんには、ご自身の作品の大切な登場人物を、快くお貸しいただきました。この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。

 楽しんでいただければ、嬉しく思います。

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