表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/25

二つ目のレストスポット・ONE

「二つ目のレスト・スポット到着、ですね……」

「あぁ……」


 自らの足で訪れる最初の町。

 大きな期待とともに降り立った俺たちの目の前には、期待の遥か斜め上を軽く飛び越えていくような光景があった。

 天井が、抜けるように青い。おてんと様、サンサン。まごう事無き、空。文句なしの快晴。洞窟の中だというのに、これはどういうことなのか。

 異世界の空は地の底にまで侵略して、自分の明るさを誇示するのだろうか。なんて鼻持ちならない奴だ。明るい性格とかアウトドア派のやつが静かなインドア派に絡んでいるみたいで、ついついガンつけたくなる。

 なので空にガンくれてやった。


「き、気持ちいいですねっ! 洞窟の中の町なんてどんなに薄暗くてジメジメしてるのかと心配でしたけどよかったですっ!」

「『洞窟の中の町なんて、きっとすっごくロマンチックなんですよ』なんて言ってたくせに」

「だぅーっ!!」


 威嚇された。かわいらしい声で精一杯な感じは、怖いというより微笑ましい。

 きっと無理して気分を上げようとしてたんだな。


「これはこれでいいんです! 地底でもお日様に当たれるなんて、健康的でいいじゃないですか」

「紫外線は有害物質なんだぞ?」

「がーーっ!!」


 威嚇された。正論述べただけなのに。

 まぁ実際には利点の方が多いのだろう。骨にいいなんて迷信めいた話も聞くし。だからお日様があることに文句はない。

 だが、


「地底に創られし神秘の町……」

「まぁこれも十分神秘ですけどね……」


 夢が、あったんだ……。

 

 気を取り直して検閲を受け(本当に俺たちが初だというのを見抜いていてビビった)町へ侵入。

 町は地上のそれと比べるとだいぶ控えめなサイズに見えた。南北に長細い形状をしていて、東西には広がりがない。

 しかし町並み自体は大した差がなく、地上では時計台があった位置に、その代わりとして巨大な柱があり、それが天井にまで届いていた。その光景で、空が偽物であることに気付く。


「今日はこれからどうします?」

「とりあえずギルドだな。そのあとは宿探して、時間あったら旨いものでも食べるか」

「そのぅ、明日は?」

「明日は装備品の調達だな。今日ギルドでおすすめとか聞いて、その店に行こう。さすがにこの野暮ったい服からおさらばしたい」


 俺はぼっさいレンジャー服の襟を掴んでバサバサした。

『冒険者の服』といういかにも下級戦士用なネーミングのこの服は、ぼさい+防御力が低い(八)というスペックの低さを誇る。

 いいかげん鈴森にファンタジーな格好をさせて、アゲアゲ~な感じで攻略を進めたい。(訳:早く鈴森にエッチなカッコさせてハァハァしたいです)


「そうですね……それから、一つご相談があるんですが……」


 細い指を絡め、もじもじしている。


「なんだ?」

「弓、使ってみたいと思ってます。……だめ、でしょうか?」

「弓? あぁ、弓道部だったんだもんな」

「えへへ……まぁ一回も弓引いたことないんですけど」


 頭をポリポリ掻いて、カミングアウト。

 それは素人も同然じゃないか。というか、弓道部なのに弓を引いたことすらないってどういう状況だ? 入部してすぐ死んでしまったということか?

 まぁ、深くは問い詰めない方がいいだろう。その領域に踏み込むのは、侵略も同然だ。


「いいんじゃないか?」

「ホントですか!?」


 鈴森はうれしそうに顔を上げる。


「あぁ、もちろん。というか自分の分の金でやりくりするんだろ? わざわざ俺に許可とる必要はない」

「でも一応、まだご指導いただいてるわけですし……」


 はぁ、本当になんでこんなことをしているんだろうか。

 三日前のあの後、結局鈴森の熱意に負け、彼女をちょくちょく気に掛けながらここまで来てしまった。

 けれどすでに自分の戦い方を確立しているし、戦力にはなっている。何より、ダンジョン内でも安眠できるというのが大きい。

 協力プレイが俺に足らないところだとするなら、このままこいつをいいように利用するも悪くないかもしれない。分け前は七:三でいいと言ってくれるし、なにより、裏切りの心配がない仲間というのは大きい。万が一の時には、こちらから裏切ることは簡単だし。


「神津さん?」


 っと、思考にのめりこみすぎだ。よくないよくない。


「あぁ、すまん。弓、いいと思うぞ。遠くからちょっかい出して、イライラして突進してきたバカどもを罠で一掃する……実に小動物らしい姑息なやり方だ」

「……褒めてるんですかそれとも貶してるんですか貶してますよね貶してるんでしょっ!!」


 すさまじい勢いでまくしたててくる。


「もちろん褒めてるんだ。決めつけるな」

「うんむぅ~」


 納得いかないご様子だが、俺の言葉を信用してくれたらしい。


 ギルド到着。

 地上のそれとなんら変わらない建物で、面白味がない。まだピーク時には早いが、それでも人は多い。もっと下の階層へ進めば少なくなるのだろうか。

 少し待って、番が回ってきた。

 受付は馬の尻尾を装備したあいつ……つまり見た顔だった。


「お疲れです」

「様をつけてください。ってかなんでここに……?」

「目をつけたから」


 にっこし、と笑う。答えになってない。

 こっちは新たなチャンネー期待してたというに……相応の説明がなければ納得いかん。


「すみませんね、新たなお嬢さんとの出会い潰しちゃって」

「最低です神津さん」


 口に出てたらしい。


「あぁ、いやその……」


 さすがにどもる。


「まぁこっちにもいろいろとありましてね? とにかく目を付けた新人さんが下に行けば、ついて行っていいみたいな決まりがあるわけなんです」


 言い訳は聞き入れない方針らしい。

 ならば便乗してうやむやにするしかない。それに、こういう話には裏があるはず。すぐに信用してはならない。


「それ、あなたに何の得があるんですか? それにどうやって下に来れたのかも聞きたい」

「うわっ、ムッツリなうえに疑り深いんですね、神津さん。そういうのモテませんよ」

「余計な御世話だ」


 これ以上俺の評価を下げるようなこと言わないでくれ。鈴森の視線が痛い。


「まず私が下に行きたいという理由ですが、下の階に行けばいくほど、探索者の数が減るからです。楽したいんですよ、わたしは」

「あんたね……」


 ぶっちゃけすぎだ。


「サビ残はこりごりなんですよ。残業手当とかないですから、事実タダ働きですし」


 く、黒い……。ファンタジー世界にもブラック波動(企業を黒い感じにしてしまう波動)は浸透しているらしい。現在日本のブラック侵蝕率は何パー?

 転生するのが怖くなってくるので思考中断。


「それで、二つ目は?」

「時計台ですよ。あの中、実は昇降台になってまして、物資や人の行き来に利用されてるんです」


 なんと。あの時計台、ただの『でくの坊(棒)』ではなかったというのか。

 というかそれを使って一気に下まで行けないのだろうか。


「それって俺たちも利用できるのか?」


 敬語はもういいや。


「上の階へ行く分には問題なく使えます。

 ただ、運べる量がそう多くないので、待ち時間が長いうえお金もかかります。ですから、あまり利用する人はいません。また、現在の最高到達階層以下には、特別な許可がない限り行くことはできません。無理して下の階へ行って死ぬ愚か者が多いですから」

「……だよな」


 ズルはできないらしい。

 

 買い取りを済ませてもらい、店の情報を聞き出したのち、地図などを買ってから宿探しへ。

 とはいえ、俺はあまり寝床には興味がない。ちゃちいとこで十分だが、一応小動物にも聞いておくか。


「希望とかあるか?」

「いえ、とくには。でもお金は大事なので、できる限りやっすいところでお願いします」


 なんともまぁストイックに育ってしまったことで。

 あの時からずっと、鈴森はストイックだ。なんというかちょっと余裕がない感じ。

 少し危なっかしい気もするが、向上心があるのはいいことだ。

 で結局、ボロ屋の二段ベッドに落ち着いた。


「神津さん、ダンジョン行きましょう!」


 『遊園地行きましょう』みたいなノリで誘われた。


「いや、もう今日はいいだろ。今から行っても大して戦えないぞ」

「いえ、明日一日に無駄にするんですから、ギリギリまでやりたいです」


 こいつ、廃人ゲーマーの素質があるぞ。

 半ば引きずられるようにして、宿を後にした。


 翌日。

 サンドイッチを売っている露店でピグミートサンドを購入し、食べ歩きながら町を散策する。

 ちなみにこのサンドに使用されている豚はハーブ・ピグ。しっかりとした甘みをもっていながらも、さわやかなハーブの香りによってしつこすぎないのが特徴だ。

 ピグの優良種。七階層に生息しているらしく、たくさん取れるため値段も安価。コスパ最強と名高いONE(このレスト・スポットの名前)屈指の名産品だ。

 ゴンマージュース(マンゴーよりやや甘さ控えめ)を片手にのんびり歩く。  あぁ、生きてるって素晴らしい。


 そんなこんなで武器屋到着。


「ごめんくださーいっ」

「めんださーいっ」舌っ足らずな声は鈴森のもの。

「らっしゃい!!」


 この手の店に入店するのも慣れたものだ。

 ドアを開けると同時に奥へ声をかける。するとカウンターの向こうから坊主のおっさんがぬぉっと現れた。

 ガチムチなおっさんが手にしているのはどっしりとした造りのハルバード。威圧感が半端じゃない。鈴森が小さく悲鳴を上げた。


「この子の弓が欲しいんですけど、弓初心者なもので。いいものを見繕ってもらえますか?」


 硬直した鈴森に代わって説明する。

 この店は受付ちゃんのおすすめ。それにこの手の店は評判が命だ。なので適当な扱いはしないはず。


「おうっ、任せとけ!! それでいくら持ってる?」


 ド直球だなぁ。けど裏表がなさそうだ。好感が持てる。


「あっ、えっと……五千Gくらいでお願いします」


 石化から回復した鈴森が、おずおずと答える。


「おぉっ? 結構持ってるじゃねえか。いいだろう、かわいい嬢ちゃんのためにとっておき用意してやるよ!!」


 武器屋では絶対にケチるな。俺の教えをきっちり守っているようで感心感心。 というか『かわいい』というのは一種のチートだな。中年オヤジの店では割引がデフォになってきている。

 少し待っていると、おっさんが奥の方から六本の弓をもってきた。どれも武器にオーラがあるというか、なんかよさげだ。


「嬢ちゃんサイズの弓だ。一つずつもってみな」

「はっはいっ」


 鈴森に弓を持たせ、いろいろなポーズを取らせ、あーでもないこーでもないと作業を始めた。

 俺も適当な武器を捜しておくか。

 店を見渡す。

 いつかの中古店に比べると店の規模は大きい。武器も整然と並んでいる。

 とりあえず短剣を一本選ぶか。

 短剣コーナーへ向かう。


 様々な短剣に指紋を刻みつつ、一番優秀なのを選んだ。


 ガブアルの牙……攻撃力25 敏捷+5 


 ガブアルとは、たぶんモンスターの名前だろう。

 形状はサバイバルナイフの形で、刀身がしっかりとしている。切ることも突き刺すこともできるから、使い勝手はいいだろう。


 選び終えたところで二人のところへ戻ると、そちらも終わったようだ。

 鈴森が手にしていたのは、緑色の弓。植物から作られたようなイメージの外観は、かなり優美なものだった。


「それで……あの、胸当ては……?」 


 鈴森がもじもじしながら尋ねる。

 俺とおっさんは、鈴森の胸を凝視した。


「ちょっと……どこ、見て……」


 履きつぶした靴の底のようにつるっつるな胸をかばうようにして、睨んでくる。


「要らないだろ」

「要ります!!」

「だって守らなくても、失う物なんて何もないじゃないか」

「ありますからっ!! もし削れちゃったらどう責任とってくれるんですか!? ブラないんですよ!?」


 激怒して言葉のチョイスが恥ずかしいことになっている。どうやら貧乳であることを気にしているらしい。


「嬢ちゃん、上手く引けるようになればそうそう当たらないんだぜ。それに防具があるから平気だろうよ」


 おっさんが苦笑しながら言う。

 この世界の防具は、何度も言うようにファンタジー使用になっている。

 なぜか薄いくせに超丈夫、そしてカバーしていないところの防御力まで上げくれるという、その道の専門家(?)が聞けば激怒必至な夢装備となっているのだ。

 女用装備だけでなく男用装備にまでこの法則が適用されているところがミソ。男女平等に、エロに優しい世界です。

 とまぁそれは置いておいて。

 とにかくそんなだから、よっぽど強力な弓でない限り弦が胸を強打する程度では痛くはないということなのだろう。なんせ強力な防具を装備してれば槍に突かれても平気なのだから。


「は、はい……」

「それよりも、弓の上達には相当の練習が必要だと聞くぞ? 俺も教えることはできないし……」

「にぃちゃんそれは平気だぜ! この弓を使えば、スキル『弓術』くらいすぐ手に入るってもんだ」

「ほんとですかっ!?」


 鈴森が驚いて声を上げた。

 なんて便利な特殊効果だ。ご都合主義、ここに極まれり。

 まぁ、握りが正しくないと極端に使いづらいとかそういう制限をかけてあるのかもしれないな。

 俺はすでにスキル『短剣術LV2』と『棒術LV3』を手に入れているが、これは下界ですでに使えたから手に入ったものだ。だから、実際にどの程度の修練で『弓術』が手に入るのかはわからない。

 結局は鈴森の努力次第なのだ。

 おっさんにお礼を言い、鈴森は『木に宿りし妖精の弓』と弓矢百本を四千九百Gで、俺は『ガブアルの牙』を三千Gで購入し、武器屋を後にした。


   

「あとは防具だな。いくら残ってる?」

「わたしは……あと二千Gです」


 ちょっと少ないな。鈴森もそれは理解しているようだ。


「まぁ、二千Gくらいなら利子無しで貸してやる。四千Gもあればそれなりの装備が買えるだろう」

「いいんですか?」

「それくらい、この先のダンジョンへ潜ればすぐ稼げるだろうしな」


 何より、俺が早く鈴森のコスプレ、もといイメクラ、じゃなくてエロ装備を見たい。

 踊り子の服、ビキニアーマー、危ない水着……。

 妄想しつつ、移動する。


 防具、というより探索者用の服屋さんに到着。

 中へ。


「いらっしゃいませ」


 武器屋とは違い、身だしなみの整った上品そうなおばあさんが待ち受けていた。

 昼間だからか、店の中はかなり空いている。

 整然と並べられた服がすべて同じサイズなのは、着る人に合わせて服の大きさが変わるからだ。

 都合良すぎて、ふぁんたじ~=なんでもあり、みたいな数式が成り立ちそうだが、言い出すといくらでも突っ込めそうなのでやめた。

 自分に都合のいい事実は素直に受け止めちゃう。それもまた、人間らしくあるためには必要なのだ。人間みんな、基本自己中。


「探索者様でございますね。本日はどのような御召し物をお求めで?」

「四千Gくらいで、俺はなるたけ身軽に動けるやつを、こいつには防御力重視のやつを一着ずつ見繕ってくれ。見た目はまぁ二の次でいい」

「かしこまりました。少々、お待ちを」


 一礼して、服を捜しに奥へ消えた。

 ここの店主は確かな目利きをもっているらしく、聞けばそこらに並べてあるやつよりもいいのを持ってきてくれるということらしい。サービスもいいとのこと。

 本当ならエロ重視で、といきたいところだったが、鈴森の手前そんなことは言えなかった。俺ってばまじチキン。

 しばらくして、おばあさんは数着の服を持ってきてくれた。

 俺は格好とかどうでもいいので、あとはスペックが一番高い服を選んで終えた。


 森猿の皮着 防御力20 敏捷+10


 迷彩ズボンに黒のタンクトップ。その上から軽くて薄い、ゴムのような素材でできた胴に、前腕部には全体をカバーする手甲。なんか西遊記の孫悟空な感じ。

 そんなのどーでもいいので鈴森の服装をチェックしに行く。


 鈴森は白のワンピ(丈短め)を着ていた。白い肌とマッチして激キュート。しかし右手に持つ薄い緑色の服と迷っているらしく、うんうん唸っている。

 背後から忍び寄る。

 

「そっちも着て見せてくれ」

「ひぃやぅっ!? いつからいたんですか!?」


 鈴森はとても常人には発音できそうにない擬音語を発した。


「ちょうど今」

「いいですけど……なんかえっちじゃないですか、この世界の服」

「お互い様だろ」

「……まぁ、そうなんですけど……なんか平等じゃない気が……」


 女と男で、肌を見られてより恥ずかしい思いをするのはどっち? 

 その答えを考えればお互い様などではないことくらいわかりそうなものだが、鈴森には気づけなかったらしい。

 最終的に納得した。信じすぎ。


「じゃあこっちも着るので、あっち行っててください」

「あぁ」


 少しして。


「おぉ……」

「あ、あまりじろじろ……見ないでくださぃ……」


 緑の方は、妖精が着ているようなワンピースだった。

 まじでミニ。太ももの高い位置でワンピのギザギザした裾がひらめいている。見え……ない、ぎりぎりで。

 薄い。しかも露出度高い。それでいて下品な感じは全くない。もじもじされるとますますキュート。

 胸元のうっすらとしたラインがまたたまらん。

 悟った。

 大は小を兼ねません!! (訳:巨乳も貧乳もどっちもイイ!!)


「それでいこう」

「うぇ? でもこれ、恥ずかしぃです……」

「何言ってる。すごくいい。弓の色とも合ってる。完璧だ」

「そ、そうでしょうか?」


 褒められてまんざらでもない様子。扱いやすいことこの上ない。

 結局鈴森はそれを選んだ。

 お代は占めて、七千八百G。それぞれ三千九百Gだった。目の保養にもなる愛玩小動物が誕生したことを思えば、安い買い物だ。


 鈴森は店の外へ出るなり駆け寄ってきた。


「神津さん! 装備も整ったところでダンジョン行きましょう!!」

「だめだ。悪いけどまだ買いたいものがある」 

「そう、ですか……」


 ちょっとがっかりしている。

 少し罪悪感。しかしまだ買いたいものがある。手持ちの金も結構残っているし。

 だが、弓を使ってみたいという気持ちもわかるし、なにより強くなろうとしてくれているのはありがたい。

 鈴森を狙っているやつは、おそらく挑戦者ではないだろう。挑戦者にはあの時期に人さらいをするメリットがないからだ。

 ならば無茶はしないはず。

 人気のないところへ行かなければ安全か。


「よし。それじゃあ昨日行った六階層の入り口付近までなら行ってもいいだろう。なるべく人目につくところで戦え。絶対に小部屋とかには行くなよ」

「いいんですかっ!?」

「あぁ。それと無理だけはするなよ。あと早めに帰ってこい」

「はいっ。じゃあ五時には宿に戻りますっ」


 これじゃ本当に保護者だ。何をやっているんだか。

 そんなことを思いながら、駆けていく少女を見送った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ