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第肆章〜信頼と愚者〜






 灼熱の砂漠の中をジン達は歩いていた。


「………………うぅ……暑い、暑い、暑い熱い厚い篤いアツイあつい〜」


 襟元を掴み、扇ぎながら紅蓮は唸っていた。


「うるさいわね…………砂漠なんだから、当たり前でしょ………」


 額に汗を浮かべ、言葉を途切れ途切れ紡ぎながら朱雀は紅蓮を睨みつけた。


「………ってかライナが簡単に行こうって言うからこうなったんじゃん」


 ジンはぐっしょり濡れた袖を捲りながらライナに向かって言った。





それはつい、三時間前の事。





 リヴァイシスへ行くことが決まり、準備をしていた時。


「で?どうやって行くんだ?」


 ジンはライナの方を見た。


「え?歩きだよ?」


 ジンの質問に驚き、ライナは少し上擦った声を上げた。


 紅蓮と朱雀はライナの答えに驚いていた。


「嘘でしょ?…………砂漠を突っ切ることになるよ?」


「大丈夫大丈夫。リヴァイシスには行った事があるけど、その時はそこまで広くなかったよ?」


 ライナの言葉に紅蓮はほっとした。


「なんだ。じゃあ早く行こうぜ」


「そうだね、じゃあ行きましょうか」


 そう言い、ライナは外に出た。朱雀もライナの後を追い、外に出て紅蓮も出ようとしたとき、ジンが椅子に座ったまま何かを考えているように口に手をあてていたのを見た。


「どうした?ジン。置いて行かれるぞ?」


 声をかけられたジンは紅蓮の方を見た。そして、真剣な顔つきで紅蓮に聞いた。


「あいつ、前にリヴァイシスに行ったって言ったよな?」


「…………え?ああ、そう言ってたな」


 ジンが何が言いたいのかあまり理解できず。少し混乱したがなんとか返答した。


「いつ行った?」


「え?」


 今度こそ紅蓮は理解しきれなかった。


「俺が知るわけないだろ!?」


 と、怒鳴った紅蓮をジンは宥めながら言った。


「まぁ、落ち着けって。で、話を戻すが、いつ行ったと思う?」


「………………一週間前くらい?」


 ジンは首を横に振った。


「六年前だ」


「………で?それが何か?」


「三年前、あいつが通ったルート付近に囚人が幻影魔法をかけ、旅人が迷い込んできたところを襲う。という事件が起きた。

 その事件自体は解決したんだが魔法がまだ完全には消えていない」


「……………で?」


 紅蓮の様子を見、ジンは大きくため息を吐いた。


「だから、あいつらが行こうとしているルートは言わば迷いの砂漠だ。」


「……………え………え……えぇ〜っ」


 肩を落とす紅蓮にジンは励ますように言葉をかけた。


「まあ、大丈夫だ、解けているかもしれないし。……………………………多分」




 ジンと紅蓮はこの先の出来事がなんとなく予想できた。






そして今に至る。




「しょうがないじゃない………」


 ライナは少しふてくされた様に言った


「やっぱり解けていなかった………」


 ジンの小さな呟きにライナは反応した。


「なんか言った?」


「いや、なんでもない」


 このまま正直に言えばキレるだろう。それだけは避けたい。キレた時のライナはものすごく面倒になる。


「しょうがないじゃないよ、そんくらい知っとけよ。言い出したのはライナだろ?」


 そんなジンの考えとは正反対に紅蓮ははっきりと言った。


「何?結局は私のせいになるわけ?しょうがないじゃない、前に通った時はこんなんじゃなかったもの」


 ライナは怒りを露にした。


「考えが足りない」


 ジンは淡々と言い放った。


「うっ、だ、だってたった六年でこんなになるって予想できる?」


「出来る。お前が悪い」


「悪くないもん」


「悪い」


「悪くない」


「悪い」


「悪くない」


「悪い」


「悪くない」


「悪い」


「悪くない」


「っっだぁぁもう!煩い!」


 二人のやり取りを聞き、たまらず紅蓮は叫んだ。


「ただでさえ暑くてイライラしてんのに更にイラつかせることをすんな!」


「いや、元の原因作ったのはお前だろ!?」


「ああっ、煩い!」


 そういうと紅蓮はスタスタと先に行ってしまった。


「あ、待ってよ紅蓮!」


 先に行く紅蓮を止めようと朱雀は紅蓮を追いかけた。そして、歩みを止めるため朱雀が紅蓮の肩に手を置いた瞬間。


 轟、と地面が唸りを上げ、ジン達のいる場所の地面が崩れ、四人は真下へと落ちていった。



**********



 痛みで目が覚めたジンは、その痛む場所を押さえながら体を起こした。


「いてて……………ライナ、大丈夫か?」


 ジンの声で目が覚めたライナは腰を押さえ呻きながら起き上った。


「大丈夫か?」


「うん。少し腰辺りが痛むけど………」


「そうか……無理すんなよ?」


「大丈夫大丈夫。………にしても、ここ何処だろう?」


 ライナは立ち上がり、辺りを見回す。ジンは上を見上げた。


「砂漠の下、だな。恐らく」


「あ〜、やっぱ落ちたのか………」


「それ以外無いだろ」


「それはそうだけど…………」


 ゆっくりと立ち上がり、ジンも辺りを見回す。


 よくよく見ると小さな空洞があった。屈めば通れるくらいの空洞。


 ジンは屈み、空洞の奥を見た。すると奥には多少の光が見えた。そしてそのまま空洞を進んでいった。


「え、あ、待ってよ」


 慌ててライナも(くぐ)る。


 ジンは通るのに少し苦労したが、小柄なライナは簡単に潜り抜けた。



 空洞の先はほんのりと明るかった。



「わぁ………」


 いつの間にか横にいたライナは驚きの声を上げた。


 小さい空洞の先にはとても広い空洞があり、その場所には光を放つ石――――――光石(こうせき)が大量にあった。


「………ここで少し休むか」


 ジンは近くにあった小さめの光石を集め円を描くように撒き、その中心に座り込んだ。後からライナも中に入ってきた。


 ジンは横になると寝息を立てた。ライナはそれを見て、呆れた表情になったがため息を吐くと同じように横になり静かに寝息を立てた。



**********




 同時刻。紅蓮と朱雀も砂漠の下にいた。



「あいたたた〜、朱雀、大丈夫か?」


 そういい立ち上がる。


「ええ、なんとか、ね」


 紅蓮は上を見上げた。


「………にしても、随分深く落ちたな」


「そうね、生きているのが不思議なくらい」


「それは大袈裟じゃね?」


「そうかしら?」


 そう言った朱雀は笑っていた。しかしそれは何か不自然な笑いだった。


 ふと、紅蓮が朱雀の方に視線を向けると足が青く(あざ)のようになっていた。


「お前、足………」


「平気平気。今、治してるから」


「そう、ならいいんだが……」


 何か言いたそうな紅蓮に向けて朱雀は軽くため息を吐いた。


「じゃあ少しだけ休ませてくれる?」


「ああ」


 そういうと紅蓮は朱雀の横に座った。


「どうしたの?」


 怪訝そうに言う朱雀。


「いや、一人残して先に行けるわけないだろ?」


「紅蓮なら行きそうだけどね」


「俺ならってどういうことだよ」


 朱雀の言葉に紅蓮は苦笑した。


「少しは自分で考える」


「へいへい」


 めんどくさそうに言う朱雀にこれ以上は何も聞けないと判断した紅蓮は軽く答えることにした。





**********





 紅蓮達が座って休んでいる頃。休憩を済ませたジン達は更に奥へと向かって行った。


「それにしても長いね〜」


「ああ、そうだな」


 しばらく歩いていると、青空が広がる場所に出た。


「飛んで……は出れないよね」


「迷子になるだけだ。止めておいた方がいい」


 淡々と言うジン。その右手にドラゴンソードが、左手にアイシクルソードが握られているのをライナは見た。


「ジン………………」


 心配そうにジンを見るライナに安心させるように言った。


「ただの警戒だよ。まだいるとは限らない」


「………うん」



 しかし、ライナの心配は的中した。

 



 ジンとライナの間に銀色に煌くナイフが突き刺さった。


「っっっ!」


「ちっ!」


 ジンはそのまま前に転がり、ライナは後ろに跳び、二人は近くの岩に身を隠した。


 刹那、二人が立っていた場所に無数のナイフが突き刺さった。


「誰!?」


 ライナは叫んだ。が返事は無く、代わりにナイフが岩に刺さった。


「っ!ライナ!」


 ジンが叫ぶ、それとほぼ同時にライナの頭上から一撃が来る。間一髪のところで何とか躱す。


 ライナがいた場所に曲刀を持った黒髪の少女がいた。その少女の前―――――元、ライナがいた場所は深く抉られていた。


 少女は曲刀を低く、刃先を下に向けるように構え、ライナに向かって跳ぶ。そして横に薙ぎ払う様に振る。音も無く、在るのは曲刀の残像のみ。


 もう一撃加えようとした少女に、後ろからジンが攻撃をする。


「蒼閃破!」


 少女のいる位置より少し離れた場所で剣を横に振る。刹那、ジンが振り抜いた剣の一閃から宙を奔る衝撃波が生まれ、少女目掛け飛んでいった。


「くっ!」


 少女は走り出そうとした体勢を器用に回転させ、蒼閃破を躱し、倒れかかる体を曲刀を地面に突き立てることで支え、そのまま地面に刺さっている曲刀を下から上へ払う様に振り抜く、その一閃から地を奔る衝撃波が生まれジンに襲い掛かる。


地砕衝(ちさいしょう)!」


 少女の澄んだ声が辺りに響く。


「なっ!」


 驚きで反応が少し遅れたが跳んでそれを躱す。しかしジンは後ろから何かを感じ、蒼閃破を上に放つ、その反動で地面に叩き付けられる。刹那、ジンのいた場所に銀色に煌く何かか横切る。ちょうど首の部分。あのままいたら刺さっていただろう。


「ふぅ」


 ゾッとした気持ちをため息とともに吐き出す。


(生半可な戦い方じゃダメか……………)


 ジンは構えを変えた。剣を肩に担ぐ、相手を(あなど)る構えではなく、足を前後に開き、剣を体より後ろにし、剣先を下に向ける。


 少女も構える。ジンと同じように曲刀を体より後ろにし、剣先を上に向けしっかりと両手で持つ。曲刀は闇のように黒く光っていた。


 睨み合いが続く。


光舞(こうぶ)煌牙烈風撃(こうがれっぷうげき)!」


 最初に仕掛けたのはジンだった。


 振り抜いた剣の一閃から真空の刃が生まれ、少女目掛け飛んでいく。


 少女は軽く上に跳び、それを躱す。しかしジンが放った真空の刃が分裂し(まば)らに少女を襲う。


 しかし、それらは飛んできたナイフでかき消された。


「見つけた!」


 そうライナが叫び、手にしている自分の身長の半分くらいの刀を構え、薙ぐように抜刀する。抜刀の一閃が三日月の様に光り輝いた。


 月光閃―――――ライナがジンに教わった数少ない技の一つ、魔力を剣だけではなく鞘にも込める事で高速の抜刀と範囲の拡大を可能にする技。


 崩れ去る岩の近くに誰かがいた。確認するより早く少女が走り、その人を助けた。


 巻き上がる煙が治まってくるとその容姿がはっきりした。


 少女だった。もう一人の少女とは対称的な長い銀髪を後ろの方で一つにまとめ、手にはあの銀色に輝くナイフが握られていた。


「やっぱ仲間か」


 そう呟きジンは再び剣を構える。


「…………全く、岩をたった一撃で壊すなんて貴女は本当に女の子ですか?」


 銀髪の少女が服に付いた埃や汚れを払いながらそう呟いた。


「うるさいわね、そういう技なんだから仕方がないじゃない」


「そうだとしても、もう少し覚える技を考えなさい。あまり自分に合っていない技を使うと体への負担は計り知れませんよ?」


「うっ、………か、関係ないでしょ?」


「ってか、なに敵と会話してんだよ」


 とジンは呆れた様に言い放った。


「あ、そうだった」


「おいおい………」


 ジンは構えを解き、深いため息を吐いた。


「もういい、行くぞ」


「え?」


 ジンの言葉に全員が驚きと困惑を覚えた。


「だから、先に行くぞ」


「ええ?あの子たちはどうするの?」


「あぁ?無視だ無視」


「なんでいきなり……………」


「お前らの会話でやる気無くした」


 そう言い、ジンは歩きだした。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」


 と、黒髪の少女がジンを呼び止める。


「なんだ?」


 ジンは振り返る。


「敵前逃亡するの!?」


「ん〜、そう受け取ってもらって構わない」


「ふざけないでよ!」


「ふざけてない。ってか何で俺らが襲われなきゃいけないの?」


「そ、それは…………」


「ある人物からの依頼です。ここから先には誰も通さないように、と」


 銀髪の少女が答える。


「ある人物って?」


「それは言えません」


「そう」


 あっさりと引き下がったジンを銀髪の少女は怪訝そうに見た。


「…………………随分とあっさりと引き下がるんですね」


「まぁな、ってか先に行っていい?」


 ジンの戦闘状態を完全に解いた態度に銀髪の少女はため息を吐いた。そして


「…………さっさと行ってください」


「なっ!イアン!?正気?」


「気がつかなかったことにすれば何とかなるでしょ」


 イアンと呼ばれた銀髪の少女は淡々と言い放った。


「さぁ、さっさと行って頂戴」


 そう言い、イアンの後ろの方を指さす。


「んじゃ、行ってくるわ」


「え、あ、待ってよジン!」


 状況が分からず混乱していたライナはとりあえずジンの後を追った。




**********





 ジン達が少女達と闘っていた頃。紅蓮達もまた、一人の男と対峙していた。


 少し赤が掛った髪、真紅の瞳はどこか紅蓮に似ていた。


 黒のマントを羽織い、見える範囲の服も黒で統一されたその姿は死神にも似ていた。


「何だ?お前」


 紅蓮は目の前にいる男に手にしている大剣を向ける。


「ん、俺かい?俺の名は………そうだな、『フール』とでも呼んでくれ」


「で、何で俺らの前にいるんだ?」


 フールはめんどくさそうに言う。


「こっから先に誰も通すなって言われてんの」


「じゃあ、地面を崩したのもあなた?」


 と朱雀が問う。


「ん〜、微妙に違うな。あいつがヘマったからここの場所が現れた。地面が崩れたのはその影響の一つ。かな」


「あいつって誰だ?」


 今度は紅蓮が問う。


「それは言えないな。なにせ俺は秘密主義者だからな」


「はっ、そうかい」


「とまぁ無駄話はここまでだ。さぁいい子だから坊や達は帰りな」


「ざけんな、仲間がこの先にいるんだ、帰れっかよ」


 紅蓮は手にある大剣をしっかりと握り直す。


「力ずく………か。まぁ俺としては楽だからいいんだが、手加減できないからな?」


 フールも大斧を構える、というより担ぐに近い体制をとる。


「なめんな!」


 大きく前に跳躍する紅蓮。その勢いに乗せ大剣を振る。


 しかしフールはそれを軽く後ろに跳び、躱す。


 虚しく空を斬った大剣の勢いを殺すことなく回転し、再びフール目掛け斬りかかる。


 しかし、それをフールは斧で弾き返す。


「うわっ」


 攻撃が吹き飛ばされる、辛うじて大剣を吹き飛ばされるのは防いだ。しかし大剣の重さで勢いは増し、紅蓮は壁に激突した。


「あ〜、いって〜」


 紅蓮は自分の上に乗っかっている岩や石を退かしながらフールの方を見た。しかしそこにはフールの姿はどこにもなかった。


「こっちだって」


 と上から声が聞こえるのとほぼ同時に衝撃波が紅蓮を襲った。


 吹き飛ばされたが何とか受け身をとる。


「おいおい、まさかその程度じゃあないだろうな?」


「…………当たり前だ」


 大剣を構え、深く息を吸う。瞬間、紅蓮の身から紅い炎が迸る。


「はぁっ!」


 大剣を振り抜く。その一閃から紅い刃が宙を奔る。


 紅翔迅(こうしょうじん)――――――炎を纏った剣を高速で振り抜く事によって遠心力が生まれ、外に引っ張られた炎が剣から放たれた鎌鼬(かまいたち)に纏わり付く。そして速度を上げ宙を奔る。


 しかしフールはそれを斧一振りでかき消した。


「おいおい、化け物かよ」


 フールは斧を振り上げる。


「よっこい、せ!」


 思いっきり地面に叩きつけた。そこで生まれた衝撃波が紅蓮目掛け奔って行った。


 紅蓮は剣を振るいかき消そうとした。が、衝撃波はまるで人の斬撃のように強く、重かった。


「な……んだ………これ…」


「もう一つ!」


 再び思いっきり地面に叩きつけ。そこで生まれた衝撃波が紅蓮目掛け奔って行く。


 勢い、威力、重さが増し、耐え切れなくなった紅蓮は後ろに吹き飛ばされた。


「痛っ〜、なんか今日吹き飛ばされてばっかだな」


「そんな日もあるさ。さぁ、もう帰りな」


 フールは斧を下ろした。そこに無数の紅き炎が飛んできた。


「かぁっっっ!」


 フールが息を吐くと炎は一瞬にして消えた。


 咆哮戦衝(ほうこうせんしょう)――――――体内で高めた魔力を闘気とともに放出する技。


「ああもう!めんどくさい技使うわね」


 術を放った朱雀はイラついていた。


「残念」


「うっざ」


 そういいつつ朱雀は詠唱を始める。


「隙だらけだぜ?」


 フールは斧を振り上げ朱雀目掛け飛びかかる。そして斧を勢いに乗せ振り下ろす。


「アースエッジ!」


 朱雀の立っている周囲の地面から無数の岩の槍が現れ、フール目掛け襲いかかる。朱雀の怒りの籠ったアースエッジは通常の強度を遙かに超え、フールの振り下ろした斧を容易にはじき返した。


「うわっとぅ」


 退いたフールを岩の槍が追いかけ、貫こうとする。


「おいおい、そりゃあ反則だぜ?」


 しかしフールは余裕の笑みを崩さない。襲いかかる槍を次々に壊してゆく。


「はあぁぁっ!」


 後ろから紅蓮が大剣を振り下ろす。


「復活早っ!」


 驚きながらもフールはそれを軽く横に躱す。


「いや〜、最近のガキは丈夫だね」


「このっ………」


 キレた紅蓮がフール目掛け突撃しようとした刹那、何かが紅蓮の横を通り過ぎた。甘い香りがしたと紅蓮が感じた瞬間、紅蓮はその場に倒れ込んだ。


「え……えぇっ!ちょ、ちょっと紅蓮!?」


 朱雀が駆け寄り、呼吸を確認する。幸い気を失っているだけだった。


「ふざけてないでさっさと戻りなさい」


 朱雀達の横で女性の声がした。朱雀がその方を見るとそこには若い女性が立っていた。


 フールと同じ様な服装だがマントだけは純白だった。


「へいへい………ったく………あ、おいそこのねぇちゃん」


 フールは肩越しに朱雀の方を見る。


「その坊主に言っとけ、『強くなって出直してこい』ってな」


「もういいでしょ?さっさと行くわよ」


 女性がポケットから何かを取り出す、それは試験管に似ていた。そしてそれを地面に叩きつけると二人は眩い光に包まれた。


 光が消えるとそこには誰もいなかった。


「…………はぁ…」


 朱雀はため息を吐くとその場に紅蓮に重なるように倒れ込んだ。

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