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第壱章~依頼~

 3590年 28月25日 空曜日


鍛治の街:バルカン。その街の外れにある小さなギルド、それは、滅多に依頼が来ない事で有名だった。


 というのも、ほとんどの依頼は周りのギルドが持っていってしまいこのギルドには、あまり依頼が来ないのだ。


「あ〜あ、暇だよぅ〜」


 ギルドに入って右のバーカウンターに顎をのせ、腰くらいまでありそうな金髪をいじってそう、呻く《うめく》少女、ライナ・アルテイルはギルドに入って左にある、窓際のベンチで横になって寝ている、寝癖が目立つ黒髪の少年、ジン・セレアーゼに話し掛けた。


 しかし、寝癖まみれの頭を掻きながらジンはだるそうに


「しょうがないだろ?依頼が来ないんだから」


「そうなんだよねぇ〜」


 ライナは体を起こすと、ジンのいる方の窓に目をやった。


「雲行きが怪しいなぁ……雨降らなきゃ良いけど」

 ライナは呟いた。


「……雨が降れば、依頼が来るかもよ?」


 ジンの一言にライナは驚いたような顔になった。


「えっ?何で?」


「『雨宿りさせてください』ってさ」


「それって……依頼じゃないよ?」


 可哀想な人を見るような目でジンに言った。


 ジンもあまりにも真面目な返答に驚き、慌てて弁解した


「知ってるよ、真に受けんなよ……………よっと」


 ジンはベンチから起き上がると扉の方へ向かった。扉の前でジンは、はあ、とため息をつくと


「おい、そこにいるのなら中に入れ」


 しばらくすると、ギィっと扉が開いた。扉の外から炎のような赤髪、灼眼を持つ、一人の少年が中に入ってきた。少年は怪訝な顔をして


「………何で分かったの?」


 ジンに質問をした。しかし、ジンは


「なんとなく、だ」


 素っ気なく答えた。


 少年は


「………ふぅ〜ん」


 と、素っ気ないジンの答えに適当に相づちを打った。


 そしてライナは


「君、ここに座ってなよ」


 と、椅子を指差して少年に言った。


 少年は椅子に座り、ジンに向かって


「ここはギルドなのか?」

 と、質問をした。


「ああ、ほとんど依頼は来ないがな」


 少年の質問にジンは答えた。


「おい少年」


 いきなり呼び掛けられた少年は


「何?」


 と、警戒しつつ言った。


「お前の名前、なんだ?」


「……はあ?」


 あまりにも普通だった問いに少年は間抜けな声が出た。


「何でそんなこと聞くの?」


「俺は、名前も知らない少年の依頼は受け付けない」


「っっっ!」


 少年は驚きに満ちた顔になった。


「……依頼なんか無いよ」


「嘘つくな。顔に出てる」


 少年は訝んだ顔になった。


「紅蓮……緋佚野紅蓮ひのがやぐれんだよ。名前。……なんで依頼があるって分かったの?」


 不思議そうに言う紅蓮に

「なんとなく、だ」


 と、ジンは素っ気なく答えた。


「……………実は、倒して欲しい奴がいる」


「………仇か?」


「ち、違うよ、そんなんじゃない」


 紅蓮が即答する。そして、長い沈黙。しばらくして、紅蓮が言いづらそうに


「……俺、本当は……」


 しかし、ジンが紅蓮の先のことを読み、言った


「この世界の人じゃない、か?」


 ジンの言葉に紅蓮はまたしても驚いた


「えっ、な、なんで知ってるの?」


「この世には、この世界以外の世界がある。何故判るか、それは……」


 ジンはチラッとライナの方を見た。ライナは瞬時にその意味を理解し、頷いた。そして、ジンは続けた。


「俺達が、そうだからだ」


 紅蓮は今度は驚かなかった。


「詳しくは言えない。でも、俺達はこの世界の人じゃない」


 ジンはそう言うとまた、ベンチに横たわった。


「…………何と無く、そうじゃないかなって思ってた」


 そう言って紅蓮は立ち上がると、ジンの側へ向かった。そして


「倒して欲しいのは、世界を繋ぐゲートに居座っている魔物、ドラゴンです。……お願いします。倒してください」


 しかし、ジンは


「嫌だね」


 寝たまま紅蓮を睨み付け、却下した。


「な、なんで!」


 紅蓮は予想外の返答に驚いた。


「だって、その場所。わからないし」


「な、なら俺が教えるから!」


 紅蓮の必死さにジンは負け(というより諦め)依頼を受けることにした。


「………はぁ……何処だ?」


紅蓮は明るい表情で


「ありがとう!えっと、場所は『漸滅の森』の奥。ドラゴンの場所まで案内するよ!」


「よし、頼むぜ紅蓮」


「あ、ああ」


二人は『漸滅の森』へと向かった


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