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出会った時の話(カグラ編)

続けなければ力にならぬ。

カグラという少女と出会ったのは全くの偶然であった。


当時、真面目に迷宮を攻略していた俺の前を一人の少女が通り過ぎた。


――可憐だった。

目を奪われたのは懐かしき黒い髪。鈍色になってしまった俺の髪とは違う、故郷の人間と同じ色だ。

袴を翻して颯爽と歩く姿、きりりとした目元、全てが完璧だった。


と、呆然としたのもつかの間。

その少女が真っ直ぐに十階層直結のエレベートポータルに乗り込もうとしやがった。


「ちょっと待てええええ!」


思わず俺はその少女の手首を捕まえてポータルから引っ張り出した。

少女は何をされたのか理解できずにぽかん、としていたが、すぐに眉を吊り上げる。

いかん、美少女は何をやっても絵になりやがる。羨ましい。


「いきなり何をする」

「いや、あんた一人だろ。そのポータルは十階層直結だぜ? 危ないだろうが・・」


ソロでも不可能とは言わない。

が、俺自身も目の前の少女も体格的に不安が残る。

十階層にいるのは体格の大きなオークなのだ。ただの腕の一振りで割りと致命的。

目の前の細い少女なんて軽く吹き飛ばされるだろう。


だが、俺の心配をよそに少女は鼻で笑った


「知っている。大体、一度でも十階層までたどり着かなければポータルは反応しないことぐらい、お前も知っているだろう」

「だからこそだよ。前回は何人パーティーだ? 3人か? だとしたら勘違いは止めておけ。パーティーってのは一人じゃないことに意味があるんだ。自分の戦闘能力が飛び抜けてようが、ダンジョンってのはそれだけじゃないんだぜ」


俺の三階層での実体験である。

ダイグソクというダンゴムシお化け見たいな奴に集団で追われてトラウマになったものだ。寝ようとしても周囲でがさごそがさごそ音を立て続けるので怖くて眠れず、半死半生で迷宮から逃げ出す羽目になった。

(とはいえ、ダイグソクは大人しい魔物なので俺を追いかけていたと言うよりは集団で移動していただけのようだ。攻撃しなければ襲ってこないのが、この迷宮の低階層域の特徴である、と俺を見ながら爆笑しているグゥベック教官に聞かされた。あの人はいつか報いを受けさせないといけないと思う)


「ああ、なんだ。つまり私を心配しているのか」

「そ、そうだよ」

「そうかそうか」


くっくっくと笑顔になる少女。


「だが、心配はいらない。元々パーティーなんか組んだことはないのだ」

「は?」


何言った、この子。

話を総合すると一人で十階層まで到達したように聞こえるんですが。


「信じられない、といった顔をしているな」

「当たり前だ。一人で魔物の群れに突っ込むことがどれだけ無謀なことか知らないからそんな嘘が言えるんだ。一人で挑戦したいってだけなら何も十階層からじゃなくていいだろう。今度、俺が一緒についていってやる。だから、素直に一階層から行こうぜ。な?」

「・・・ほほう、本気で信じていないな」


がし、と少女は俺の手首をつかむ。

ものすごく嫌な予感。

俺の中の警戒心スキルが警鐘を鳴らしているっ!!


「何をするつもりだ、おい」

「実践して見せよう。なぁに。私の後ろをついてくるだけの簡単なお仕事だ」

「うぉい!」


ずりずりと引きずられる俺の体。

何この子。振りほどくこともできないんですけど・・!


圧倒的な暴力性に初めて気づいた俺なのであった。


「ごめん、わかった。コレだけの力があれば十階層でも力負けしないよな! オーケー認めよう。だから俺を巻き込むな」

「お、そういえば私初めてパーティーを組むな。光栄に思うといいぞ」

「うわー、美少女と二人だけのパーティーとか心が踊るなー。おうちに返してー」


もちろん俺の意見は黙殺されて十階層直通のエレベートポータルに巻き込まれるのであった。


――さて、地獄の始まりである。










・エレベートポータル

マッピング上でEPと記入されることが多い。

迷宮の入り口と特定の階層を直結でつなぐ空間転送魔方陣。対象となる空間はアバウトに魔方陣の上の空間で、相手側の魔方陣の上にものがあると発動できない。

このため、魔物よけの魔方陣とセットで用いられることが多い。


冒険者の功績の1つになるので、新しくできた迷宮ではトップ争いは熾烈になる。


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