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改めて挑戦

このあたりの問題提起までの惰性の部分が一番つらいというか、起承転結の承ほど難しいものはない。


火彗弾(スターバレット)!」


 ユーリの声とともに杖の先端に生まれた5つの炎がゴブリンめがけて吸い込まれていく。距離が離れていたので、俺は悠々と回避。オージン先輩は一瞬だけ振り返って、自分をかすめる軌道だった炎弾を盾で受流(パリィ)した。


 オージン先輩の防御に関する技量はマジで神がかっている。


「ごめんなさい。まだ制御が甘いですよね」

「いや、真っ直ぐ飛んでくれる分には平気だよ。君からの愛は全部受け止めてあげるから」

「すいません・・・次から倍の量にしますね?」

「おい」


 まあ、仲良くなったようで良いことである。


 ちなみにカグラは後ろのほうで見学している。


「なあケイト。戦闘に参加できないと普通にストレスが溜まるんだが」

「すまん。直ぐに六階層に行くと思うから今は我慢してくれ」


 カグラを含めた連携訓練は後の予定なのです。


「しかしユーリもすぐに慣れたようだな。今は魔法の制御に危なげがない」

「そりゃあ仮にもシュテンリュッカ生だからな。魔法に関してはレベルがひとつ突き抜けてるのさ」


 例えば、先ほどの炎彗弾なんかも普通は基本の3つの火の玉を同時に出すというだけで、火力量の調節は簡単なのだが、弾の数を増やしたりというのは割と上級テクニックなのだ。しかし、ユーリは事も無げにその場で数の調節とかをしている。


 ジーンエイジという役名(ロール)を持っていることを名誉職みたいに言っていたが、普通に実力で取ったんじゃないかな、と言う気もする。


「まあ、今日は腕も縛っていないし。いざというときはカグラに頼むので」

「・・・うぅぅ、斬りたい! ゴブリンの群れとか切り刻みたい・・・!」


 危ないやつだなー、と俺は苦笑した。



-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=




 五階層を無難に攻略完了し、六階層に抜けたところの広間でキャンプを張ることにした。とはいえ、夕方には退去する予定なので本格的なものではなく、焚き火を起こして、椅子を置くだけの簡単な仕様。


 俺はそこで、しいたけと燻製肉のスープを作る。乾燥野菜の幾つかを水に浸しながら回復魔法をかけると、何故か鮮度が復活する不思議。植物の神秘である。


「うまっ。無駄にうまっ!」

「何故に保存食でこのスープが作れるの・・・?」

「相変わらず料理は美味いな。料理は」


 さり気なくけなすのを止めてほしい。


「いや、教導院に来て本気で勉強したことの一つだからな。これ」

「そんなことよりも、まともな短剣戦闘術でも学ぶべきだと思うぞ。私は」

「おかわりはいらんようだな」

「ケイト。何を馬鹿なことを言っているんだ」


 ぐい、と空っぽの器を渡されて、思わず素直によそってしまう。


「あ、ケイト。私もおかわり」

「俺も」

「自分でよそえっ!」


 自分のを食べる暇もないわ!




 みんなで昼飯を食べ終えて、人心地ついた時に、おもむろにユーリが口を開いた。


「ねえ、なんで階を切り替えたところでキャンプを張るの? 区切りがいいからってだけじゃないんでしょ?」


 純粋な瞳で尋ねられたが、実は知らない。区切りがいいからだと思ってた。

 俺の困った様子にオージン先輩が助け舟を出してくれる。


「まあ、逃げやすい、ってのが一番の理由だな」


 そう言って、視界の角に入る、階段を指さす。


「階段にすぐに逃げられるから入り口でキャンプを作る。奇襲を受けても逃げ切れる可能性が高いのさ。魔物は自分の住む階層をあまり移動しない習性があるからな。階段に入るだけでかなり生存率があがるんだ」


 そんな理由があったのか、と俺とカグラとユーリで感心している。


「流石はオージン先輩。無駄に学生生活長くないですね」

「いや、ほら。こういう役に立つ知識の分だけ学生生活も無駄ではないんだぞ? ケイト」


 いや、四六時中図書館にこもるかおっぱいと叫びながら訓練場で盾振ってる姿を眺めてきた俺としては、無駄な時間が非常に長い気がするのですが。


「というか、オージン先輩も盾の使い方が妙に上手いな。私でも上手く通せるか分からない」

「止めて。カグラちゃん俺を斬るの前提で話しするの止めて」


 ウズウズとしているカグラと怯える先輩の姿が面白かったので、その関係は放置することにした。


「というか。やっぱりケイトが一番弱くて要らない子じゃないか?」

「待って。俺イジメ良くない」

「まあ料理係としてなら価値はあるが」


 スカウトという役職を全否定しやがって・・・!

 これでも索敵スキルはかなり高いんだぞ・・・!


 スキルと呼ばれる、半ば神がかった技能を冒険者は習得している。それは見かけからは想像もできないような剛力であったり、視認することも難しい移動速度だったり、それを直感だけで避けるスキルだったり。基本的にそれっぽい行動をし続ければ育つというアバウト極まりない代物である。


 このスキル構成で大体の職業が決まる。例えば探索や索敵などを覚えればスカウト、というようにである。(そして俺はスカウトなのだ!)


「ケイトの仕事は戦闘じゃないからな。そもそも戦闘にさせなかったり、戦闘時に戦況をコントロールするのが仕事なんだよ。他にも罠を察知したり解除したりとスカウトは冒険には外せない役職なのさ」


 オージン先輩がぽん、と俺の肩に手を置く。


「ついでに料理も上手いしな?」

「オージン先輩って時々先輩っぽいですよね」

「おい、ここまでフォローしてやって時々ってなんだ。時々って」


 オチ担当はこの人だと確信する俺なのであった。










やっと六階層・・・! 十階層まである程度駆け足にならないといけないかもしれぬ。

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