とりあえず反省会
第一回目の探索としてはもう少し大失敗しても良かったと思う。
後で書きなおさねば・・・。
教導院生寮の一室。具体的には俺の部屋に四人が集まっている。
「はい、では反省会を始めたいと思います」
「異議あり!!」
カグラが勢いよく発言した。
「なんだよカグラ。反省会に文句でもあるのか?」
「違う。何故、私の両手は縛られているのかを問いただしたい!」
「ははは。あの時と同じ状態を作ってみたかっただけで深い意味はない」
「おい」
カグラが半眼で睨んでくるが気にしない。
探索の時は真剣に結んだが、今回は適当な結び方してるので、口を使えば直ぐに解ける状態である。よって会議終了までこのままの予定だ。
「さて、今回の反省点はなんでしょうか?」
俺の問いかけにユーリがおずおずと手を挙げた。
「私が魔法の威力を間違えたから・・?」
「はい、正解」
まあ言うまでもないことであった。
より正確に言うならば、攻勢魔術の範囲を間違えたというところだろう。乱戦気味の前線にあんなものを叩き込めば、そりゃあ大惨事になるに決まっている。
「・・・シュテンリュッカじゃパーティーで迷宮に潜らないのか?」
「最終学年の最後にちょこっとだけ潜るらしいけど・・・私はその前にこっちに転校してきたから」
「なるほど」
パーティーを組んで迷宮探索に挑む理由は、純粋に多人数のほうが安全だからである。お互いの足りない部分を補い合うことで足し算ではなく掛け算で効率が上がるのである。ただし、パーティーを組むことで、ソロの時には問題なかった行為が、大問題に発展する場合がある。
(例えばトイレや食事なんだが、それは今回はおいておく)
「魔法使いが最前線に立つ場合を除いて、基本的には小技を連打することになるな」
「魔術師って範囲攻撃で敵を削るものだと思ってた」
ショックを受けているユーリだが、別にそれは間違いではない。
「後衛がいたりとか、援軍が来た場合はそれも重要な役割だな。だけど、前衛が張り付いている敵に対しては悪手というだけ。ここまでは平気?」
「平気」
「私の両手が平気じゃない」
恨めしそうに縛られた両手を俺に差し向けてくる。とりあえずその両手をぎゅっと握ってやった。
「理想を言えばカグラが敵に突っ込むよりも早く、先制の遠距離攻撃を当てたい所なんだけど、出来る?」
「あ、うん。それ自体は大丈夫。速さ特化の持ち呪文もあるから」
「じゃあ次はそれでよろしく」
カグラは逃れようと腕だけで暴れるが、俺は離さない。
「・・・ケイト、これはなんの拷問だ」
「やだな、親愛の情だってば」
「それは押し倒してもいいという合図か」
俺は無言で、ぱっと手を離す。
「それはそれでどうなんだ!」
「空気を読んだはずが・・・馬鹿な・・・」
女心はよく分からん。
そんな俺の心情を知ってか知らずかユーリが半眼でこちらを見つめていた。
「なんだよ、ユーリ」
「いや、ケイトとカグラって何故付き合ってないのかなーと」
「やー精神年齢の年齢差じゃなかろうか」
いや、真面目な話。そんな気はするのだ。
「じゃあ反省会はこれで終わり。次の冒険に活かしましょう」
「待った!」
カグラが待ったをかける。
「何だよ」
「もう一つの重要な問題があるのだが」
「・・・ぐ、気づいていたか・・・!」
「え、え、なにが?」
ユーリが戸惑う中、カグラの鋭い視線が俺を貫く・・・。
「オージン先輩とお前、攻撃力がなさすぎじゃないか・・・?」
やっぱり、ばれてたあああああああ。
カグラの視線から逃れられない俺は、目線を切るが。カグラが無理やり両手で俺の顔を掴んで無理やり前を向かせた。至近距離で見つめ合う俺達。
カグラが素早く顔を近づけてきやがってで、咄嗟に回避した。
あぶねぇ! 普通にキスしてきやがった・・・!
「そう、それだ」
「何がだよ」
「オージン先輩は防御主体っぽいからともかく、お前の身のこなしとあの攻撃力のへっぽこさが釣り合ってない」
「ぬ・・・」
そう言われても困るというか。逃げるのが上手なのは昔の森生活のせいなのであまり触れて欲しくはないのだが。
「スカウトに攻撃力求めるなよというか。基本雑用係なんですよ、俺は」
「・・・そういうことにしておいてやる。友達だからな」
納得は言ってないないようだが、そう言ってもらえると助かる。
そんな俺達をユーリはじっくりと眺めて首を傾げる。
「というか実質的に恋人でしょ、ケイト達」
「えー・・・」
せっかく妹のように可愛がってるのに・・・。
と、よくわからない理由で俺は肩を落としたのであった。
ちなみに。
オージン先輩は真後ろから直撃した炎熱呪文に全治一週間の怪我なのだった。
次こそダンジョンに潜る!