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留年王子

とりあえず全体像が出来てから改訂します。

魔法の言葉です。


「すまんかった。まさか本物の女の子を連れてくるとは思いもしていなかった」


 ユーリとカグラの冷たい視線をものともせずに、オージン先輩は頭を下げた。割と偉い人なのに軽い頭である。ヘリウムでも詰まっているのではないだろうか。


「いや、本当ね。聞いてくれよ可愛い娘ちゃん達よ」

「・・・古っ」


 ユーリが思わず突っ込んでしまっていた。


「こいつ、会う度に『おっぱい連れてきましたよ』とか言うんだぜ。で、喜び勇んで部屋の外に出ると大抵胸板の厚い男がいるんだよ。詐欺だろ!?」

「はぁ・・・左様ですか」


 カグラの顔には『それ以前にその文言で釣られるのが問題では?』と書いてある。さすがはオージン先輩。女の前ではひたすらに墓穴を掘るのが上手い。


「美少女も連れてきたじゃないですか」

「ああん? アレが最大の地雷じゃねえか。忘れねえぞ」


 ――二年前の話である。



*~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~*


「せんぱーい。絶世のおっぱいを連れてきました」


 オージン先輩が大慌てで扉を開ける。


「なにぃ!? どんな絶世のおっぱいだ!? 北にそびえるカバウネを超える勇壮さか!?」


 そしてオージン先輩は確かに世界の真理を見たのだ。


 若さによりもたらされる圧倒的な張り。

 そして弱者には決して覆せぬ圧倒的な量。

 何よりもその形状が美しかった。


「おお、これが愛だと言うのか・・・おっぱい」


 オージン先輩が悟りを開いた言葉を呟いた後、


「即座に死ね」


 光帝(こうてい)シーラの放った一条の光がオージン先輩に全治三ヶ月の怪我を負わせたのであった。



*~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~*


 俺に対してその事件の愚痴を吐くオージン先輩に対するユーリとカグラの視線が、軽蔑9割とシーラにそれを言ってのけたことに対する尊敬1割になっている。実に的確な認識である。


「でもまぁ、こんな美人を連れてきてくれたなら今までのことは水に流してやるぜ、ケイト」

「それはそれは。ご厚意痛み入りまする」


 戯言には棒読みで返す。


「とりあえず自己紹介と行こうか。俺の名前はオージン。まあ少しばかり世を儚む冒険者の卵ってところさ」

「ちなみに四留生」


 俺の補足事項に、ユーリとカグラの『それは酷い』という目線がオージン先輩に突き刺さる。


「・・・ま、まあ、俺のことはいいさ。そっちの栗色の髪の可愛い子はなんて名前なんだい?」

「ユーリ・ジーンエイジです。シュテンリュッカ典教院から転校してきました。魔術師(ソーサラー)やってます」

「おおジーンエイジ。ということはシュテンリュッカの神殿騎士様かい? 若いのに凄いね」

「名誉称号みたいなものです。成績優秀者に送られるだけで実戦経験とは無関係ですから」


 ユーリが苦笑した。

 そのあたりが転校の理由かな。深く突っ込む話でもないけど。


「そちらの黒髪の子は?」

「カグラだ。見ての通り刀を降るしか能のない女だ」

「ブシドーかい? いや、君みたいに美しいブシドーは初めて見た」

「ほら見ろケイト。私は美少女じゃないか」


 俺が肩をすくめてみせると、カグラはぐぬぬ、と唸りながらこちらを睨む。

 いや、お前が美少女なことを否定したことないんだけどね。俺。


「ところでケイト。まさかこの二人を俺に紹介するためだけに呼んだのかい? だとすればケイトのことを大親友と呼ばなければならないのだが」

「まさか。あり得ん。オージン先輩はモテないから面白いんであって、真面目に女を紹介したら俺が楽しめないじゃないか」

「そういう奴だよな、ケイトは」

「ああ、そういう奴だ。ケイトは」

「そういう人だよねぇ、ケイトは」


 なに、この圧倒的な敵陣(アウェー)感。


「今日は先輩にうちのパーティーに入ってもらおうと思って来たんだ」

「・・・美少女ばかりのパーティーに心が揺れないではないが、断る。俺はもっと自由を満喫したいのだ」


 四年も留学してのこの発言。堂に入ったクズっぷりには好感が持てる。


「とはいえ先輩。うちの学校、留学は最大四年って知ってます?」

「は? ナニソレ。初耳なんだが」

「怪我などの理由なく五年以上の留年は許可しないって入学規約に書いてあったでしょう」

「見たことねえよ、そんなもん・・・。ってマズいじゃねえか」

「マズいのです」


 具体的には7年も教導院に通っておきながら冒険者資格もとってないような穀潰しに容赦する気がない妹さんとか。


「ぐ、仕方ないか・・・年貢の納め時というやつだな・・・」

「先輩の場合は収め時というか収められ時というか・・・」


 俺のツッコミが分かりにくかったのかカグラが首を傾げていた。

 苦笑しながら解説を行うことにする。


「オージン先輩は苗字持ちでね。フルネームはオージン・アーバンクラインというんだよ」

「げ」


 ユーリはそれに気づいたのか顔を青くしているが、カグラは首を反対方向に傾げた。時々可愛い仕草するよな、コイツ。


「すまない。まだ苗字の意味がわからないことが多いんだが・・・アーバンクラインというのは、どのような役職なのだ?」

「神々の財宝の守り手さ。簡単にいえば王族だな」


 おお。と得心がいったのかカグラは手を打った。


「留年王子というわけだな!」

「いや、それはやめてくれ・・・」


 オージン先輩の力ない抵抗が果敢無(はかな)く響いた。

三人以上の会話がうまく書き分けられない。

語尾に頼るのは違う気がするので、キャラ付けが悪いと思われる。ユーリはボクっ娘にするとかかしら・・・。


【苗字】

この世界では名前に基本的には苗字を付けない。ある特定の職業持ちに対して苗字をつけるようになる。このため、子供は大抵苗字を持っていないし、大人でも持ってない人は持っていない。


・アーバンクライン

神々の財宝の守り手。王様の一族。


・ジーンエイジ

経典の守護者。外威から神殿を守る神殿騎士の称号。

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