ぼっち会議
同類相求。
滑々と白墨の音が小さな教室に響き渡って、黒板に文字が描かれる。
【第一回ぼっち会議】
参加メンバーは俺、ユーリ、カグラである。
「異議あり!!」
「なんだカグラ。唐突に」
突然手を挙げたカグラの発言を俺は許可した。
「まず第一に、私はぼっちじゃない。次に、美人で強くて社交的だ。今からだって充分他のパーティーに潜り込める。最後に、私はぼっちでは断じてない」
大事なことを二回言ってカグラは俺を睨んだ。
「まず第一に、お前はぼっちだ。次に、美人で強いのは認めても社交的ではないから、既存のパーティーには上手く馴染めんだろう。最後に・・・すまん、少し言い過ぎた」
「・・・くすん」
若干涙目になっているカグラに追撃は止めておいた。
ユーリは俺の情け容赦なさに若干引いている模様。
「まあ、カグラに限らず。この時期に独りでいるような人間が余所のパーティーに潜り込んだところで上手くはやれない。既に新学期から三ヶ月。今更、連携や何やらを見直すなんてありえないだろう」
「連携しなければいいじゃないか」
4人の連携が5人の連携になれば強力だが、4人の連携に+1人が増えたところで、強くなるわけではない。ということぐらいカグラだって分かっているのに、この拗ね方である。
「それを俺に言っても意味はないな。ということで、目下のところここの三人以外で最低でも後一人パーティーメンバーを探す必要があります」
「先生! ちょっといいでしょうか」
「先生じゃないが、なんだユーリ」
「その、カグラさん? の紹介を受けてないのですが」
俺はユーリとカグラの双方を見る。双方とも少し戸惑いがある。
「ふむ、いかんな。これから共に過ごすパーティーメンバーなのに自己紹介をしていないとは」
「何ヤーティ教諭みたいなこと言ってるのよ。ケイトが紹介してくれると思ってツッコミ我慢してたんだから」
「同じく」
ユーリとカグラに矢継ぎ早に指摘されてタジタジである。
「すまない。すっぱりと忘れてた」
「おい」
ジト目でユーリに睨まれるが、気にしない。
「まずはこちら。ユーリ・ジーンエイジ。シュテンリュッカ典教院で何をやらかしたのか分からないが苗字持ちだ。得意技が火炎魔法とうっかり答えたせいで同学年から総スカンを食らうという哀れな狼である」
ユーリが剣呑な目線をこちらに送ってきた。がるるるる、咬み殺すぞ、的な。
「こちらはカグラ。見た目は清楚系美少女に見えるが、蛮族なので注意。具体的には部屋に脱ぎ散らかした衣類の類が・・・」
言い終える前にカグラの拳が俺の顎に決まった。
軽くぶっ倒れる俺である。
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「ケイト。そういうところ、どうかと思う」
目を覚まして一番に言われたセリフがコレで、以降延々と説教されている。バカな、完璧な紹介だったというのに。
「いくらこう、恋人でも言っていいことと悪いことがあると思うな、私」
「いやいやいやいや」
「お前は何かを勘違いしている」
ユーリの盛大な勘違いに思わず俺とカグラが同時に否定に入った。
「照れなくてもいいのに」
ユーリの勘違いはそのまま続く!
だが、そうは問屋が卸せない。
「正直に言えば、これだけの美少女だ。俺だって心が揺れたことは一度ならずあった」
「待て、それは初耳だぞケイト。何故そのタイミングで私を押し倒さないんだ。男ならヤることをヤってから考えろ」
「・・・このように残念な気分になって己の嗜好を見つめなおしているうちに、親友になってしまった感じである」
ユーリは色々と察したのか、うむむ、と唸りだした。
カグラのことは好きである。からっとした奴だし、冒険者としての力量も高いし、美少女である。だが、男というのは浪漫貞守徒なのである。練習上がりの何気なく見せる項にドキドキするのも男だが、堂々と目の前でセックスと言われた時に萎えるのも男なのである。
「カグラももう少しお淑やかになれば圏内なのだが」
「何を難しいことを・・・」
この有様である。
「ほとんど恋人ということで認識あってるかしら?」
「そう見えるか!」
何故か嬉しそうなカグラ。恋人と親友の間の薄い壁。だが、それは紙のように見えて竜の皮が貼ってあるとかそんなオチ。
「女には男心は分からんのだろうなぁ・・・」
「ケイトの男心なんか知って誰が特をするのよ、誰が」
失敬なユーリなのであった。
基本すべて書き直します。そのうち。