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教諭が人間であることに気づくと儚い

自分の教室を見渡せ。ダメな奴が何人いる? いいやつが何人いる?

教師というのもその程度の人種構成だ!


 ヤーティ教諭の伝説は7つある。


 割と有名なのが『草むしりレポート地獄』とか『悟りを開くための半年の休暇』などである。もうタイトルだけで伝説級の教諭なのだ。


 冗談と脅しの区別が付けられない鉄塊のよな教諭。それがヤーティ。


「さて、諸君が呼び出された理由は分かるかね?」


 俺は左に立つユーリを見て、右に立つカグラを見る。

 うむ。なるほど。


「友達が少ないからですね!」

「そうだ」


 肯定した!?


 指導室にいた他の教諭も愕然とした表情でヤーティ教諭を見ている。


「友達が少ないお前らは固定パーティーを組むことができないのではないか?」

「・・・いや、いますよ。友達」


 うんうん、とカグラは同意の頷きを見せる。ユーリは無言で目をそらす。・・・いや、転校生はそんなもんですよ?


「これでも教導院の人間関係はそれなりに把握している。最終学年で固定パーティーを決めていない人間は少ない。お前らはその筆頭だな」


 そう言われても。


「いや、この時期に俺のような最低成績の人間を入れる奴はいないと思うのですが」


 俺がため息を吐くと、おそるおそるユーリが手を挙げた。


「あの、すいません。前々から気になっていたのですが・・・あの、何故に今の時期だとパーティー組めないのでしょうか?」


 あと、私なんでそんな酷いタイミングで転向するハメになっているのでしょうか、みたいな後悔の念が透けて見えるが、そっちは知ったことではない。


「ふむ、そういうことならケイト。説明をしてやってくれ」

「ヤーティ教諭。何故そこで俺に振りますか」


 俺は解説役には向かん。とぼやくヤーティ教諭。

 良かった! この人、自覚あったんだ!


 こほん、と俺は咳を払った。


「教導院を出ると冒険者ギルドからギルドカードが正式発行されるのは知ってる?」

「まあ、そりゃあ。シュテンリュッカだって出るわよ?」


 冒険者ギルドのギルドカードの発布は三通りの方法がある。まずはギルドに貢献すること。強い魔物を倒した、とかダンジョンの何階を踏破した、とかがコレに当たる。次に教導院を卒業すること。これも正式な発布の方法。最後は言うまでもなく金で買うこと(恐ろしいことに冒険者ギルドはこのルールが公式なのである)


「初期レベルいくつで発行される?」

「シュテンリュッカなら基本は10レベル。実技成績8割、科目成績2割でボーナスがついて最大で20レベルってところね」


 わりかしシュテンリュッカ典教院は真っ当な方式に聞こえる。

 と、同時に我が王立教導院の斥硬(セメント)具合が際立つ。


「王立教導院は、最終学年度にパーティーで踏破した階層がそのままレベルになる」

「どういうこと?」


 首をかしげるユーリにカグラが答える。


「そのままの意味だ。15階層まで踏破すれば15レベル。25階層まで踏破すれば25レベルだ」

「・・・え、なにそれ。ずるい」


 そう、少しばかりずるい。何がずるいって強い仲間がいれば勝手にレベルが上がるところがずるい。


「ん? ちょっと待ってよケイト。ということは私ってこのままだと0レベル扱いなの?」

「いや。進級出来るだけの階層もぐれば自動的に10レベルは超えてるはず。とはいえ、この時期の最終学年は目が血走っていまして。今更、連携もろくに取れない新参とパーティーなんか組まないわけです」

「ということはつまり、私とパーティーを組んでくれる人はいない、と」

「運命共同体の俺はいるぞ」

「最低成績者とふたりきりとか・・・あれ、もしかして私、まずい状況?」


 割とどうにもならない状況である。

 詰んでいると言えやふ。


「大丈夫だ。15階層程度なら直ぐに潜れる。半年もあればソロで踏破できるぞ」

「カグラ。一般人をお前の非常識に巻き込むな」


 ヤーティ教諭の的確なツッコミ。


「というよりもカグラ。何故お前は余裕そうなんだ」

「いや、よくは分からないが・・・29層まで潜った私には関係無いだろう、その話は」


 しまった、こいつが学習要項なんて読んでるわけないのに気づいていなかった。


「・・・ヤーティ教諭。現実を教えてやってください」


 ヤーティ教諭は心得た、とばかりに幾つかの書類を机上のファイルから取り出す。

 成績表である。怖すぎて見たくない。


「カグラ。お前、公式パーティーでの記録は5階層で止まっているぞ」

「は?」


 そう。

 カグラはソロでは深い階層まで潜っているが、4~6人で協力して迷宮を踏破する公式記録は持っていないのだ。

 もちろんソロの方が難易度が高い。だが、その記録を教導院では成績として採用しない。ソロの結果で『寝っ転がる』生徒が毎年2ケタの単位で発生したため、成績のために命をかけるような馬鹿なことをしないように、という配慮だ。(それでも潜る馬鹿(カグラ)とかに付ける薬はないので、教導院は取り締まらない。ソロで迷宮を踏破する強者を排出もしたいからである。大人の事情なのだ)


「カグラ・・・」

「・・・あ、あ・・・あ」


 ぷるぷると震えているカグラの方を叩いて微笑む。



「ようこそ、ぼっちチームへ!」


「ばかなああああああああああああああああああああっっ!!」

「ぼっちて言うなああああああああああああああああっっ!!」



 その後、指導室で騒いでせいで普通に怒られる、ぼっち三人組なのであった。



 







通貨単位:オーロ(Aurogh)

大体1ドルぐらいの価値。

5オーロ=昼飯

10オーロ=豪華な晩飯

300オーロ=服を買うときには持っておきたい

1000オーロ=公制鉄剣(一般的な『てつのけん』)の値段。

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