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業界的にはご褒美らしい

ドMは真の悪意以外は全てを快楽として受け入れる。

それが、誇りなんだ・・・ッ!


 王立教導院。


 冒険者達の卵が切磋琢磨するこの場所で、信じられないほど凶々しい空気が立ち込めている。発生源は俺の右隣。泣く子も黙る光帝こうていシーラ様なのであった!

 時折こっちに視線を向けてはニヤリと妖しく微笑むので、怖い怖い。間違いなく『どのように虐めるのが楽しいかしら?』的な何かである。


「さて、迷宮にはたくさんの魔物が跳梁跋扈ちょうりょうばっこしているわけですが、大体3つのグループに分けることができます。わかりますか? えっとー・・・ケイト君」


 空気読め、と教室中が無言のプレッシャーをかけるが気づいてもいない。

 残念ながら、その空気が読めるようなレイン教諭ではないのである。そういった空気の読めなさを含めて、教導院の誇る残念教諭のトップ3の地位を不動にしているのだ。


「・・・3つと言われても分かりませんが。動物、植物、無機物とかですか?」


 俺の回答に隣の席のシーラが驚いた評定をする。


「凄いわケイト」

「何がだよ。今のあたってたのか?」

「見当はずれの答えをこうも堂々と答えられるのが。羞恥心で死にたくならない?」


 胸に何かがぐさりと突き刺さる。的確に俺の急所をつつけたのが嬉しいのかシーラは羽を揺らして上機嫌だ。助けを求めて、席を移動しているユーリに視線を向けるが、ユーリは『は? こっち見んな。シッシッ』と、手を払う(あっちいけの)ジェスチャー。

 しかし言い訳をさせてもらうなら、そういうふうに分類してる本も実際にあるのだ。当てずっぽうではないのだ。と言い訳したらシーラに叩き潰されるのは目に見えているので言わない。


「小賢しいケイト君の回答でしたー! 外れだけどね。くっくっく・・・!」


 この部屋は俺に対する悪意に満ち溢れているのか・・・!


「ちなみに私が学生時代の時の回答は『固いの、柔らかいの、普通の』でした。完璧な回答だと思ったらヤーティの野郎が新任教師だったくせして小馬鹿にしたような笑いを浮かべやがって・・・! ぐぬぬぬ」


 あの人どうやって教諭になれたんだろう。


「まあ、正解は強化種、発魂種、幻想種のいずれかです。

 強化種というのは、一般的な動物が大きく凶暴化したものですね。オオクモとかそのあたりが分類されます。発魂種は魂がむき出しだったり、無機物に宿ったものですね。ナンマスターゴーレムとかスケルトンもここに含まれます。幻想種は一般的な動物にはない特徴を有した魔物の総称です。みんな大好きなドラゴンもここに含まれます」


『せんせースライムはー?』

『ドラゴンって外にもいるじゃん。強化種扱いじゃねーの?』


「うっせー! そんな質問に対する回答なんか用意してねーよバーカバーカ!」


 レイン教諭が子供みたいな反論をしている。


「もういいです。小賢しいのはケイトくんだけで十分です。先生を馬鹿にしたお前らに課題を言い渡す!」


『げー』

『レインちゃん横暴ー』


「横暴で結構です。教諭は学院の権力者なのです。お前らのような学生ぐみんを虐げるのが仕事なのです」


 とんでもねえこと言い出したぞこの教諭。


「いいことを言うわね。レイン教諭も・・・」

「シーラ。ああいう教育に悪いことを真に受けないでくれ。主に俺とかが被害を受けるから」

「あら、馬鹿ね。ケイトは。本当に馬鹿ね。ケイトは」

「何故繰り返していった!?」


 しかもじっくり噛み締めるように。


「ケイトは、どのような状況にあっても私がかまって(イジメて)あげるわ。大丈夫よ。安心してね?」

「お前の副音声は音がはっきりしていて嫌だなぁ・・・」

「イジメてあげるわ。安心して」

「主音声で言い直すな!!」


 安心できる要素がひとつもねえだろうが!


 と、鐘が鳴る音が響く。ようやく拷問時間が終わったようだ。

 

「ちっ、命拾いをしたな貴様ら。では次回の授業までに強化種、発魂種、幻想種のモンスターをそれぞれ一匹ずつ調べてレポートにまとめてくるように! 返事はイエスしか認めません。イエス・ユア・マジェスティ! ではさらば!」


 たたたたた、がら、ぴしゃん。ざわざわざわ。


 嵐か何かか、あの人は。


「じゃあねケイト。次は迷宮探索の授業で会いましょう」

「気が重くなるぜ・・・」


 シーラは俺をひとしきり虐めて満足したのか、笑顔で去っていった。人が苦しむ様を見て喜ぶへきはどうにかならんものか。何故か俺にしわ寄せが来るので止めてほしい。


 そしてこっそりと逃げ出そうとするユーリの襟元を掴んで逃がさない。


「や、やあ奇遇だね?」

「うむ。奇遇なことに俺の助けを全て無視した女の子を捕まえてしまった。どうすればいいと思う?」

「いや、私に何を期待しているのよ、ケイトは。か弱い女の子よ、私」


 それはないな。

 学院間の転校を行うような輩がか弱いわけがない。失礼だから口には出さないが。


「まあいいや。初見でシーラの相手はキツイだろう。昼飯食いに行くぞ」

「あ、私お弁当なんだけど」

「大丈夫。俺も弁当だ」


 おや。とユーリはその猫のような瞳を丸くした。











ナンマスターゴーレム None Master GOLEM

主なしのゴーレム。ナンマスターとだけ呼ばれることもある。

岩の塊がウロウロしてるような感じ。

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