大好きな君に花束をーー…
「嘘だ…」
信じたくなかった。
「嘘だっ嘘だっ…」
ついこの間まで隣で笑っていた君が…
どうして…
君との出会いはーー…
あの、学校の屋上ーー…
僕は、暗くて美しい夜景を学校の屋上から見ていた。
今日で最期だったから。
片手にはナイフ…僕は屋上の端に立ち…
ナイフを首に押しあてた。
「僕なんか居なくても良いんだ…」
手に力をこめる…
僕はね、死にたいと思ってたんだ…君が来るまでね…
「ちょっと!?何してるの君っ!」
屋上のドアがいきなり開いたかと思うと、声が響いた。
びっくりした僕はナイフを落とした。
幸いにも、ナイフは足元に落ちただけですんだ。
振り返るとそこには魔族の女の子が立っていた。
魔族って言っても分からないよね・・・魔族はまぁ・・・闇魔法が得意な一族で、髪の毛が黒く、目が赤い。
僕は魔族ではなく輝族光魔法が得意な一族だ・・・。
魔族と輝族は特別仲が良いわけでも悪いわけでもない、ごく普通の関係だ。
で、話を戻すよ?
そこには魔族の女の子が立っていた。
赤い瞳でこちらを見ていた・・・
夜景に解けてしまいそうなほど黒い髪の毛はひとつに束ねていた。
彼女は僕のほうに歩み寄り、強い口調で尋ねてきた
「何してたの!?」
「・・・ぅっ」
僕は分かっている、自殺するという行為がどれほど悪いことか・・・
「ねぇ?」
彼女は少し口調を和らげて再度たずねてきた。
涙が出てきそうなのを必死でこらえながら・・・震えながら僕は答えた・・・。
「僕なんか要らないと思ってっ・・・もう・・・辛いのは嫌だからっ・・・」
あの時、君はどう思っていたのかな・・・
あの、震えた僕をみて・・・どう思っていたのかな・・・
彼女は僕の言葉を聴いているうちに悲しそうな表情になり、うつむいてしまった。
僕が辛い目にあっているのは良く分かったらしかった。
彼女はしばらくしてから顔をあげていった。
「辛かったね・・・でもこれからは大丈夫!私が友達になってあげる!」
彼女はまるで花のように微笑んでいた。
「・・・え?」
「だからっ!私があなたの友達になるの!私はサラナ!よろしくね」
状況を把握することができず・・・僕はしばらく唖然としていたが・・・
言葉を理解したときに・・・僕の目から涙があふれてきた・・・。
彼女は僕の前にハンカチを差し出した。
「はい!これ貸してあげる!」
僕はハンカチを受け取り・・・彼女の顔を見た。
彼女はニィっと笑っていた。
「あなたの名前は?」
「僕・・・?僕はピース・・・ピースタイム・・・」
「ピースタイムかぁ・・・じゃあピースって呼べば良い?」
「う・・・うん。」
「ねえ、英語ではどうやって書くの?」
「peace time」
そう・・・僕が覚えているのは名前だけ・・・。
PEACE・・・・・・平和
TIME・・・・・・時
peace timeの意味は・・・
平和な時が続きますように・・・という意味をこめているらしい。
「peace timeかぁ・・・良いなぁ格好良いし。」
「そうでもないよ・・・。」
僕は少しうれしかった。
なんか分からないけどね。
「あっえっとサラナさん?」
「サラナでいいよ?」
「・・・サラナ、何でここにきたの?」
「ん~、ここの夜景を見にねぇ・・・進入!」
「・・・;」
「話しかえるね~、ピースの将来の夢ってなに?」
「僕は・・・特にないけど・・・?」
「ふ~ん・・・私ね!勇者になる!勇者になってね!人たちをいっぱい救うのっ!」
「へぇ~すごいや!」
「えへへ~」
このころはまだ僕は子供で・・・。
君がどれほど大切なのか分からなかった・・・。
サラナが僕を救っていてくれたのに・・・僕は何一つ・・・
彼女を救えなかった・・・
あの日からの毎日は、辛くても生きていこうって思えるようになりました。
君が居たから。
会いたいって思えました。
中学でも一緒でした。
帰り道も一緒に帰りました。
そして気がつきました。
これが恋なんだって。
でも僕は気が弱く、なかなかいえませんでした・・・。
そして今も・・・。
あの事件がうそだったらって今でも思うんだ。
あの日、道路を横断中のサラナを・・・
助けられていれば・・・。
今も隣で笑ってくれていたのかな・・・
あの日、僕はたまたまサラナを見かけたんだ。
サラナは青信号だったから横断してた。
でも、信号無視したトラックが・・・。
サラナに近づいてきていたんだ。
僕はサラナを守りたくって道路に飛び出し・・・
サラナを助けようと手を伸ばしたんだ。
でもーーーー・・・・・・・・・・・・
僕は最後に見たんだ・・・
自分も倒れていた。
サラナと一緒に・・・
気がついたら病院だった。
少し起き上がろうとしたけど激痛がはしり・・・断念した。
しばらくすると看護士さんが来て、驚き、走り去った。
それからまたしばらくしてから医者が来た。
彼は若く見えた。
医者にしては・・・だけど。
でも若い。
20代ぐらいだろうか・・・
「気がついたか?」
「・・・はい」
「そうか・・・よかった・・・片方だけでも救えて・・・」
「・・・!?」
片方?片方って?
「あの・・・お医者さん・・・サラナは?」
「・・・」
まさか・・・
そう・・・そのまさかだった。
その人はがんばった、が救えなかった・・・
僕の顔も、半分だけ違った。
これは・・・
魔族の皮膚だとすぐに分かった。
少し濃い・・・
医者は話してくれた・・・
サラナが死んでしまったあと、僕の手術で皮膚が必要だった。
まぁそれで、必要だという話を聞いて、サラナの親はサラナの皮膚を使ってほしいといったらしい。
彼女の親は知っていた。
僕とサラナが仲のいいこと、彼女のお父さん、お母さんは言ってた。
「この子になら任せられそうね。ちょっと泣き虫だけど、今にきっと立派になるわ・・・」と
だから僕のことは責めたりしなかった・・・。
あれから一週間・・・少し大人になりました。
彼女のお墓の前で僕は泣いたよ・・・
そして言ったよ・・・
本当は生きているうちに言いたかったんだけど、
「僕はー・・・」
風に吹かれて僕が持っていた花束の花から花びらが舞う
花の名前は・・・シオン
「君の事・・・サラナのことが・・・」
花言葉はー・・・
「ずっと前から・・・好きだったんだ・・・」
『君を忘れない・・・』
花束をそっと添えて続けて言った
「僕・・・サラナの代わりに勇者になるよ。向いてなくてもね・・・。」
あの日・・・僕は変わりました。
生きていちゃいけない人間なんて・・・
この世界には一人としていないって。
みんな命は尊くて、すばらしくて・・・
かけがえのない贈り物なんだって。
今の僕なら死ぬなんて考えない・・・
ーーーー・・・・・あの日から5年たちました。
13歳だった僕には分からなかったことが今なら分かります。
サラナのお墓の前に立って、
僕は微笑んだよ。
「サラナ、君を忘れない・・・いや、忘れられない。」
僕はもう泣かないよ、もう死ぬなんて考えないよ・・・
「サラナが目に見えなくても、僕は・・・」
僕は空を見上げた。
抜けるような青空、雲ひとつない・・・。
「僕は、君が好きで・・・君と生きていく・・・」
僕は決めたんだ、
これからは・・・
サラナだけを愛し続けようって。
忘れられなくて、忘れたくなくて。
ずっと君と一緒でいたいからーーーー・・・・・・・・・・
あの日の約束・・・覚えてますか?
僕はもう・・・
立派な勇者になれました。
今は、仲間と楽しく・・・前を向いて歩いています。
だから心配しないでね。
僕はちゃんと生きているから・・・。
本当はファレノプシスを花束にしたかった((
つる植物だから無理wwww
とある勇者の過去でした。
これを読んで
「あれ?」とか思った人が居たら言いますが、
僕、ウゴやってます^^;
思わなかったらスルーで^^;