追憶
僕と彼女とは幼馴染だった。幼稚園に入る前には知り合い、同じ幼稚園、小学校に通った。毎日公園に行き、二人でボール遊びやおままごとをやった。いつも一緒にいた。彼女の目は澄んでいて、全てを内側から覚知しているようだった。昔のことであるから、全然幼少期の頃の彼女との記憶はないが、一つだけ、鮮烈な印象と共に今の僕をも強く縛り付けている景色がある。
いつも通り彼女と放課後に公園のお砂場へ行くと、いつも通りの彼女が、小学生特有の攻めた肩出しの洋服で食事を作っていた。2人とも頭が良かった。結婚というのはまだできないとうことは知っていた。二人でアイスクリームとカニを食べながら、将来結婚しようね。と自然に言った。僕はその時は少しにやけながら、そうだね。と自然に返した。その後少しの沈黙があったことを覚えている。二人とも噛み締めていたのかもしれない。
この後も平凡が続いた。いつも一緒だった。学校内ではあまり同じクラスにならなかったこともあり、あまり話さなかった。今思えば、周りにはバレないようにしていたとも思える。ただ、小学6年生になっても、ほぼ毎日公園に集まった。片方が来ないということはほとんどなかった。幼稚と言われるかもしれないが、小6になってもボール遊びや釣りなどをした。ずっとおしゃべりに興じる日もあった。
小6の後期、彼女は中学受験をすると言い出した。僕はこの時初めて彼女を失ってしまうかもしれないという焦燥に駆られた。しかし僕の家は貧しく、私立の中高一貫校に入れてくれるわけがなかった。僕は近くの市立の中学校に行くことが確定していた。初雪が降った11月の中旬に、彼女は勉強に一応本腰を入れるからもう会えないとサラッと言って去っていった。あの時少し引き留めておけば良かったと今でも思っている。今ならあの時の感情こそが愛で、恋で、好意であったと言える。
彼女はもちろん合格した。僕は足元を見ながらトボトボと中学へ通っていた。
いつも彼女は僕のストレージを少なからず使っていた。そんなある日、僕は子供と公園で遊んでいると、気配を感じた。ギョッとして振り返ると、遠くに親子で遊んでいる人影が見えた。顔はしっかり見えなかったが、彼女であったと確信している。互いに幸せを見つけていたようだ。安堵と嫉妬が混じった足で、我が家に一歩足を踏み入れた。




