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もりとき怪談 第一集【一話完結/短編怪談】  作者: もりとき


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09 エイプリルフール


 エイプリルフールに嘘をつくのが好きだったんだ。

 だいたいはすぐに嘘だってバレる感じのどうしょうもない嘘。「彼女ができたと思ったら、そいつは実は女装趣味の男だった」とか、「占い師に占ってもらったら、俺に霊感があることが分かり、その占い師に弟子入りすることになった」みたいな。

 だから去年のエイプリルフールも嘘をつくことにしたんだ。


 今回は俺の死亡報告。

 SNSに「◯◯(俺の名前)の親族です。◯◯は3月27日、不慮の事故のため死去しました。葬儀は家族のみでおこないました。生前は◯◯と懇意にしてくださり、ありがとうございました。」って書き込んだんだ。

 ちょっと悪ノリして、メッセージアプリのグループにも送った。

 誰が一番に気がついて、ツッコミのコメントをくれるかな〜なんて思って返信を楽しみにしていたんだ。


 少しして、さっそく通知が来た。

 SNSを確認すると「この度はご愁傷さまです。今度、友人たちと一緒にお線香をあげさせてください」ってコメントがついてた。

 おいおい、むしろノリが良すぎだろうって俺は笑いそうになった。

 そうしたらさらに通知。今度はメッセージアプリの方で、「ニュース見ました。本当に悔しいです。お悔やみ申し上げます」って内容だった。

 いやいや、俺の友達、マジでノリが良い。誰がここまで演技しろって言ったよと思ってさすがに吹き出したよ。

 その瞬間、ふわっと線香の匂いがした。


 え? と思って自分の部屋のドアを開けたら、線香の匂いがより強くなる。

 匂いをたどるようにして居間に行くと、おふくろが座布団の上に座って俺に背を向けてた。

 おふくろの前には簡易的な祭壇みたいなのがあって、灰色っていうか銀色みたいな袋に入った箱っぽいのが置かれてて、その横に線香立て。今、立てられたばかりの長い線香が細い煙を出してた。

 そんで、その線香立ての前には、俺の写真があった。

 もしかして、これもエイプリルフール? って思ったけど、手が込みすぎてるし、縁起でもなさすぎる。


「おい、おふくろ。冗談やめろよ」

 俺が声をかけたけど、おふくろは振り向きもしない。それどころか肩を震わせて泣いてるみたいだった。

 肩を叩いたり、ちょっと強めに掴んでみたりしたけど、おふくろはびくともしなかった。

 何だこの状況。

 俺は部屋に戻って、スマホを確認した。通知がめっちゃ来てた。

 その通知を無視して、自分の名前で検索してみたら、3月27日のニュースが出てきた。


 俺が事故に巻き込まれて死んだことになっていた。居眠り運転のトラックに突っ込まれたらしい。


 いやいやいや、俺は今、ここで生きてるし! どういうことだよ!

 そう思って、俺はSNSやアプリの死亡報告をぜんぶ削除して、「さっきのは嘘! エイプリルフールだよ。でも不謹慎すぎたから削除した!」って書いて送信した。

 少しして、通知があった。俺の心臓はめっちゃドキドキしてた。

 通知のあったSNSを開いてみたら、「何書いたのか知らねぇけど、また下らない嘘だったんだろ」ってコメントだった。

 ほっとして深呼吸をすると、さっきまでしていた線香の匂いが消えていた。

 急いで居間に行くと、そこはいつも通りの居間だった。おふくろが呑気に「あんた、今日の晩ごはん何がいい?」なんて聞いてくる。

 さっきあった祭壇は、影も形もなかった。SNSやメッセージアプリに送られてきていた俺の死に関する言葉も、検索して出てきたニュースも消えていた。


 去年こんなことがあったから、今年はエイプリルフールに嘘をつくのはやめておこうと思う。

 ちなみにこの話は嘘じゃないからな。俺が本当に経験したことだ。あのときはマジで生きた心地がしなかったよ……。



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